パートナーから離婚したいと言われた日は、まるで足元の地面が突然なくなったような感覚だったのではないでしょうか。
頭の中が真っ白になりながらも、翌朝になれば同じ家で顔を合わせなければならない。朝ごはんはどうする、会話はどうする、寝室はどうする。そんな具体的な問題が次々と押し寄せてきて、何から手をつけていいかわからない状態になっているかもしれません。
実は、厚生労働省の令和6年(2024年)人口動態統計によると、日本の年間離婚件数は約18万5,895組にのぼります。つまり、今まさにあなたと同じような局面に立たされている夫婦は、決して少なくないのです。
ただ、ここでお伝えしておきたいことがあります。離婚したいと言われたからといって、それがそのまま離婚という結果に直結するわけではありません。私がこれまで夫婦関係の改善に関わってきた中でも、同じ家で過ごしている期間の行動次第で、関係が少しずつ良い方向に変わっていったご夫婦は数多くいらっしゃいます。
この記事では、離婚したいと言われた後、同じ家でどう過ごせばいいのかを具体的にお伝えしていきます。日常の距離感の取り方から、絶対にやってはいけないNG行動、子どもがいる場合の振る舞い方、そして関係修復につなげるための考え方まで、今日から実践できる内容をまとめました。
- 離婚したいと言われた後、同じ家での具体的な過ごし方
- 同じ家で過ごす中で絶対にやってはいけないNG行動
- 子どもがいる場合の家庭内での振る舞い方
- 同居期間を夫婦関係の修復につなげるための考え方
- 一人で抱え込まないための相談先と公的制度
まずは、多くの方が一番知りたいと感じている、同じ家での具体的な過ごし方からお伝えしていきます。
1.離婚したいと言われた後、同じ家での具体的な過ごし方
離婚したいと言われた直後は、これまでと同じように暮らすことなんてとても無理だと感じるものです。でも、すぐに別居できる状況にない方がほとんどではないでしょうか。
だからこそ大切なのは、同じ家にいながらも、自分とパートナーの両方にとって無理のない距離感を見つけることです。
ここでは、日々の生活の中で意識すべきポイントを具体的にお伝えしていきます。
1-1.最初の1週間で意識すべき3つの心構え
離婚したいと言われた直後の1週間は、もっとも感情が不安定になりやすい時期です。この時期に衝動的な行動をとってしまうと、後から取り返すのがとても難しくなります。
まずは、次の3つの心構えを意識してみてください。
- すぐに結論を出そうとしない
- 自分の感情を一人で抱え込まない
- パートナーの言葉に即座に反応しない
それぞれ詳しくお伝えしていきます。
すぐに結論を出そうとしない
言われた直後は、どうにかしなければという焦りから、すぐに答えを出そうとしがちです。しかし、感情が大きく揺れている状態で出した結論は、冷静な判断とは言えません。
今の段階では、離婚に同意するのも、修復を急ぐのも、どちらも早すぎます。まずは1週間、何も決めないという選択を自分に許してあげてください。
自分の感情を一人で抱え込まない
つらい気持ちを誰にも話さずに我慢し続けると、心がどんどん追い詰められていきます。信頼できる友人でも、家族でも、専門のカウンセラーでも構いません。
ただし、一つだけ注意点があります。パートナーの悪口を周囲に言いふらすのは逆効果です。あくまでも、自分の気持ちを整理するために話を聴いてもらう、という目的で頼ってみてください。
パートナーの言葉に即座に反応しない
パートナーが何か厳しいことを言ったとき、すぐに言い返したくなったり、泣いてしまったりするのは当然の反応です。
しかし、相手の言葉に感情のまま反応してしまうと、売り言葉に買い言葉でどんどん関係が悪化してしまいます。何か言われても、一呼吸置いてから返す。これだけで、状況は大きく変わります。
それでも感情がこみ上げてきたときは、その場を少し離れてください。別の部屋に移って深呼吸をする、紙に今の気持ちをそのまま書き出す、外に出て10分ほど歩く。こうした方法で気持ちをいったん落ち着けてから、パートナーと向き合うようにしてみてください。
それでは次に、食事や寝室、家事といった日常生活の場面での具体的な距離感の取り方についてお伝えしていきます。
1-2.食事・寝室・家事についての距離感の取り方
同じ家にいる以上、食事、寝室、家事の3つは避けて通れない問題です。ここでの振る舞い方が、その後の関係に大きく影響します。
まず食事についてです。いきなり食事を別々にすると、家庭の空気が一気に冷え込んでしまうことがあります。かといって、無理に一緒に食べるのもお互いにとって苦痛です。
私がおすすめしているのは、食事を作る側はこれまで通りに作り、食べるかどうかは相手に任せるという形です。つまり、わざわざ別にもしない、強制もしない。自然な流れに身を委ねることがポイントです。
次に寝室についてです。もともと同じ寝室だった場合、パートナーが部屋を分けたいと言ったら、その希望をそのまま受け入れてください。ここで抵抗したり悲しそうな態度を見せたりすると、相手にとってはプレッシャーになります。
逆に、パートナーが何も言わないなら、自分から寝室を分ける必要はありません。あくまでも、今の状況にとって自然な形を選ぶことが大切です。
家事については、これまで通りの分担をできるだけ維持するのが基本です。離婚を言い出された側が家事を全部やろうとしたり、逆に一切手をつけなくなったりすると、どちらも不自然な空気を生み出します。
普段通りの生活を淡々と続けること。これが、相手に余計なストレスを与えず、関係の修復にもつながる土台になります。
1-3.会話の頻度とタイミングの基本ルール
離婚を言い出された後、パートナーとどのくらい会話すればいいのか、何を話せばいいのかは、多くの方が悩むポイントです。
結論から言うと、こちらから無理に会話を増やす必要はありません。むしろ、相手が話しかけてきたら自然に応じる、くらいの距離感がちょうどいいです。
ここで大切なのは、会話の内容です。離婚や夫婦関係に関する話題は、この時期はできるだけ避けてください。日常の連絡事項、たとえば子どもの予定やゴミ出しの確認といった必要最低限のやりとりで十分です。
では、具体的にどんな声かけなら自然なのか。たとえば、朝であれば次のような一言で十分です。
「今日、燃えるゴミの日だったよね」
「子どもの迎え、今日はどっちが行く?」
こうした生活上の事務連絡であれば、気まずさも少なく、会話のきっかけにもなります。逆に避けたいのは、「最近どう思ってる?」「気持ちは変わった?」といった、相手の心に踏み込むような聞き方です。
タイミングにも注意が必要です。朝のバタバタした時間帯や、疲れて帰ってきた直後に大事な話を切り出すのは避けましょう。もし夫婦の問題について話す必要がある場合は、お互いが落ち着いている休日の昼間などを選ぶのがおすすめです。
また、LINEやメールでの連絡も同じです。何度もメッセージを送ったり、返事がないのに追加でメッセージを入れたりするのは、相手を追い詰める行為になります。送る前に一度、この内容は今送る必要があるかなと自分に問いかけてみてください。
1-4.パートナーとの適切な距離を保つ日常の工夫
ここまで食事や寝室、会話のルールをお伝えしてきましたが、日常生活の中ではもう少し細かい場面でも意識しておくべきことがあります。
たとえば、帰宅時間が重なる場面です。玄関で顔を合わせたとき、無視するのも不自然ですし、べったり話しかけるのも逆効果です。軽く「おかえり」「ただいま」と声をかけるだけでも、家の空気は変わります。
リビングの過ごし方も工夫できます。パートナーがリビングにいるからといって、自分の部屋に逃げ込み続けると、あからさまに避けている印象を与えてしまいます。自然体でいられる範囲で、同じ空間にいる時間を持ちましょう。
ただし、あくまでも自分が無理をしない範囲で、ということが大前提です。心が限界に近いときは、散歩に出たり、少し外で時間を過ごしたりして、自分の心をケアする時間を意識的に作ってください。
ここまでは、同じ家での具体的な過ごし方についてお伝えしてきました。ただ、過ごし方を意識するのと同じくらい大切なのが、絶対にやってはいけない行動を知っておくことです。次の章では、多くの方がついやってしまいがちなNG行動についてお伝えしていきます。
2.同じ家で過ごす中で絶対にやってはいけないNG行動
離婚したいと言われた後は、なんとかしなければという気持ちが先走って、つい行動が空回りしてしまうことがあります。
けれど、この時期の間違った行動は、パートナーの気持ちをさらに遠ざけてしまうことが多いのです。私のカウンセリングでも、関係が悪化してしまったケースの多くは、言われた直後の対応が原因になっています。
特にやってしまいがちなNG行動は、次の4つです。
- 感情的に問い詰める・泣いてすがる
- 離婚の話題を何度も蒸し返す
- 子どもや親族を味方につけようとする
- 相手の行動を監視・管理する
それぞれ詳しくお伝えしていきます。
2-1.感情的に問い詰める・泣いてすがる
離婚したいと言われた直後に一番多い反応が、感情的に問い詰めたり、泣いてすがったりすることです。
「なんで?」「どうして?」「私(俺)の何がいけなかったの?」
こうした問いかけは、自分の気持ちとしてはごく自然なものです。しかし、パートナーの立場からすると、すでに悩み抜いた末に出した言葉に対して、さらに責められているように感じてしまいます。
泣いてすがるのも同様です。相手が罪悪感を抱えている場合、泣きすがられるとその罪悪感がストレスに変わり、もう一緒にはいられないという気持ちがかえって強くなることがあります。
つらくて涙が出ること自体は何も悪くありません。ただ、パートナーの前で感情をぶつけ続けるのは、修復のチャンスを自ら閉ざしてしまう行為だということだけは覚えておいてください。
泣きたいときは、一人になれる場所で思い切り泣いてください。それは弱さではなく、自分の心を守るための大切な時間です。
2-2.離婚の話題を何度も蒸し返す
パートナーが離婚について話したがらないのに、こちらから何度も話題を持ち出すのもNG行動の一つです。
もう一度ちゃんと話し合いたい、考え直してほしい、気持ちは変わらないの。こうした言葉を繰り返し投げかけると、相手にとっては毎日プレッシャーをかけられているのと同じです。
もちろん、いつか話し合いの場は必要になります。しかし、そのタイミングは今ではありません。
相手が冷静に話せる状態になるまで待つことが、結果的には修復への近道になります。目安としては、少なくとも2〜4週間は離婚の話題に触れないくらいの気持ちでいるのがちょうどいいです。
待っている間に何もしないわけではありません。その時間を使って、自分自身を見つめ直したり、後半でお伝えする修復のための第一歩を始めたりすることに意味があります。
2-3.子どもや親族を味方につけようとする
追い詰められた気持ちから、子どもや義両親、自分の両親を巻き込もうとする方がいます。
たとえば、子どもに向かって「パパ(ママ)が離婚したいって言ってるんだよ」と伝えたり、義両親に電話をして相手を説得してもらおうとしたりするケースです。
しかし、これは逆効果になることがほとんどです。パートナーにとっては、自分のプライベートな問題が周囲に晒されたと感じ、裏切られたという気持ちが加わります。
とりわけ子どもを巻き込むことは、夫婦関係だけでなく、子どもの心にも深い傷を残す可能性があります。
どうしても誰かに相談したい場合は、夫婦関係に直接関わらない第三者、たとえば友人や専門のカウンセラーを選んでください。夫婦の問題は、あくまでも夫婦の間で向き合うものです。
2-4.相手の行動を監視・管理する
離婚を言い出された側が不安から相手の行動を細かくチェックしてしまうのも、よく見られるNG行動です。
スマホをこっそり覗く、帰宅時間を毎回確認する、誰と会っているのかしつこく聞くといった行動がこれにあたります。
気持ちはわかります。もしかして他に好きな人がいるのでは、もう心が離れてしまっているのではと不安が止まらないのは当然です。
しかし、監視や管理は信頼関係の真逆にある行為です。パートナーが感じるのは安心ではなく息苦しさであり、この人とはもう無理だという確信を強めてしまうだけです。
不安なときほど相手ではなく自分に目を向ける。これは簡単なことではありませんが、関係修復を目指すなら、避けては通れない意識の切り替えです。
ここまで、絶対にやってはいけない4つのNG行動についてお伝えしてきました。続いては、お子さんがいるご家庭に向けて、子どもの前でどう振る舞うべきかをお伝えしていきます。
3.子どもがいる場合の家庭内での振る舞い方
子どもがいるご家庭では、夫婦の問題がそのまま子どもの生活や心にも影響を及ぼします。
子どもは、親が思っている以上に家の空気を敏感に感じ取っています。だからこそ、夫婦の問題を解決する努力と同時に、子どもへの配慮を忘れないことがとても大切です。
3-1.子どもの前では絶対に離婚の話をしないこと
これは、お子さんがいるご家庭に向けてもっとも強くお伝えしたいことです。
子どもの前で離婚の話をしてはいけません。夫婦の口論を聞かせるのも、ため息混じりに「もうダメかもしれない」と漏らすのも避けてください。
法務省も、離婚による子どもへの負担を最小限にするため、子育てに関する取り決めを事前にしっかり行うことの重要性を案内しています。それだけ、子どもにとって両親の離婚問題は大きな影響を与えるものなのです。
子どもが不安を感じている様子がある場合は、「パパもママも、あなたのことは大好きだよ。それは絶対に変わらないからね」と伝えてあげてください。
夫婦の間に何が起きていても、子どもにとっての安心を守ることは、親としての最優先事項です。
3-2.子どもの生活リズムを崩さないための工夫
夫婦の関係が揺れているとき、つい子どもの生活にまで影響が出てしまうことがあります。
たとえば、食事の時間がバラバラになったり、お風呂の時間がずれたり、習い事の送迎が曖昧になったり。大人にとっては些細な変化でも、子どもにとってはいつもと違うという不安につながります。
ここで意識してほしいのは、子どもの日常のルーティンだけは意識して守るということです。朝ごはんの時間、学校の準備、寝る前の声かけ。こうした小さな日常の積み重ねが、子どもにとってはこの家は大丈夫だという安心感になります。
もちろん完璧にやる必要はありません。意識しているということ自体が、子どもにとっては十分に伝わります。
3-3.夫婦の問題に子どもを巻き込まないためのルール
先ほどのNG行動の章でも触れましたが、子どもを夫婦の問題に巻き込むことは、どんな理由があっても避けるべきです。
具体的にどんな行動が巻き込みにあたるのか、よくあるケースをお伝えしておきます。
たとえば、「パパ(ママ)のこと、どう思う?」と子どもに聞く行為。子どもにとっては、どちらかの味方をしなければいけないという苦しい状況に追い込まれます。
また、子どもに相手の様子を探らせるのも巻き込みです。「パパ(ママ)、最近スマホばっかり見てない?」と聞くだけでも、子どもは親のスパイ役を求められていると感じてしまうことがあります。
夫婦の間で決めておくべきルールはとてもシンプルです。
- 子どもの前で夫婦の問題を話さない
- 子どもにどちらかの味方を求めない
- 子どもを通じて相手にメッセージを伝えない
この3つを夫婦の間で約束として共有しておくだけでも、子どもの心を守ることにつながります。もしパートナーとこうした約束を交わすのが難しい状態であれば、まずは自分だけでもこのルールを守ることから始めてください。
4.この同居期間を夫婦関係の修復につなげるために
ここまでは、同じ家での具体的な過ごし方、やってはいけないNG行動、そして子どもへの配慮についてお伝えしてきました。ここからは、今のこの同居期間を夫婦関係の修復につなげていくための考え方をお伝えしていきます。
離婚したいと言われたからといって、それが最終的な結論とは限りません。私のカウンセリング経験でも、離婚を口にした側の気持ちが時間とともに変わっていったケースは少なくありません。
大切なのは、パートナーの協力がなくても、まずは自分一人から始められることがあるという事実です。
4-1.パートナーの気持ちが変わる可能性を見極めるサイン
パートナーの気持ちにまだ修復の余地があるのか、それともかなり固まっているのか。この見極めは、今後の動き方を考えるうえでとても大切です。見極めのポイントは、日常のやりとりの中に残っている小さなサインです。
以下の表で、今のパートナーの様子がどちらに近いかを確認してみてください。
| まだ修復の余地があるサイン | 気持ちがかなり固まっているサイン |
|---|---|
| 日常の会話がゼロにはなっていない | 一切の会話を拒否している |
| 食事や子どものことなど必要なやりとりには応じる | 生活上の連絡事項すら無視される |
| 家を出る素振りを見せていない | すでに物件を探している・弁護士に相談を始めている |
| 同じ空間にいることを極端には避けない | 同じ部屋にいること自体を明確に拒否する |
ただし、ここで大事なのは、今の状態がずっと続くとは限らないということです。今は拒否的でも、あなたの態度や行動が変わることで、数か月後にパートナーの気持ちが少しずつ変わることは十分にあり得ます。
焦ってサインを読み取ろうとするよりも、まずは自分自身にできることに集中する方が、結果としては修復につながりやすいのです。
4-2.一人から始められる関係修復の第一歩
夫婦関係を立て直したいと思っても、パートナーが話し合いに応じてくれないと何も始められないと感じるかもしれません。
しかし、実はそうではありません。夫婦関係の改善は、片方が先に変わることから始まるケースがとても多いのです。
まずやっていただきたいのは、自分自身の日々の言動を振り返ることです。パートナーが離婚を考えるに至った背景には、必ず何らかの積み重ねがあります。すべてがあなたのせいだという話ではありません。ただ、自分の側にも改善できる部分がなかったかを冷静に振り返ることは、修復への大きな一歩になります。
そのうえで、今日から一人で始められる具体的な行動があります。
たとえば、日常の中で小さな感謝の言葉を口にすることです。ご飯を作ってくれたとき、子どもの送り迎えをしてくれたとき。「ありがとう」のひと言を、意識して伝えてみてください。
「ご飯、ありがとう」
「送ってくれたんだね、助かった」
たったこれだけのことですが、相手は確実に受け取っています。
もう一つは、パートナーが何か話しているとき、最後まで口を挟まずに聴くことです。途中で反論したり、自分の意見をかぶせたりせず、ただ最後まで聴く。これだけで、相手の安心感は大きく変わります。
こうした振り返りや小さな行動の変化は、パートナーに直接伝える必要はありません。まずは自分の中で意識するだけで十分です。その意識が日常のちょっとした態度として表に出てきたとき、パートナーもそれを感じ取ることがあります。
4-3.焦らずに信頼を積み直すことが修復の近道になる
夫婦関係を修復したいという気持ちが強いほど、早く元に戻りたい、すぐに何とかしたいと焦ってしまうものです。
ですが、ここで正直にお伝えしておきたいことがあります。一度大きく揺らいだ夫婦関係が安定を取り戻すには、最低でも1年、場合によっては1年半ほどの時間がかかるのが現実です。
これは長い時間に感じるかもしれません。しかし、逆に言えば、1年かけてでも関係を立て直したご夫婦は実際にいらっしゃるということでもあります。
私が関わったケースの中に、30代後半で小学生の子どもが2人いる妻の方がいらっしゃいました。夫から離婚を切り出された後も同じ家で暮らし続ける中で、まず自分の関わり方を見直すことから始められました。
具体的には、それまで夫の話を途中で遮って自分の意見を言いがちだったことに気づき、まず最後まで聴くことを徹底されたのです。さらに、日常の中で小さな感謝の言葉を意識的に伝えるようにしました。
最初の3か月はほとんど変化がなく、不安な日々だったそうです。しかし半年ほど経った頃から夫の表情がやわらぎ始め、約1年後には夫の方から「もう少し一緒にやってみよう」という言葉が出てきました。
大事なのは、今すぐ劇的に変えようとするのではなく、小さな行動の積み重ねで信頼を一つずつ取り戻していくことです。今日の一つの心がけが、半年後、1年後の夫婦関係を変える力になります。
ここまで、同居期間を修復につなげるための考え方をお伝えしてきました。ただ、すべてのケースで同居を続けるのが正解というわけではありません。次の章では、同居を続けるべきか、別居に移るべきかの判断基準についてお伝えしていきます。
5.同居を続けるか別居に移るかの判断基準
同じ家で過ごし続けることが関係修復に有利に働くケースもあれば、逆に離れた方がお互いにとってプラスになるケースもあります。
ここでは、どういう場合に同居継続が良いのか、どういう場合に別居を考えるべきなのかを整理してお伝えしていきます。
5-1.同居継続が修復に有利に働くケース
同居を続けることが修復にプラスに働きやすいのは、主に次の3つの条件がそろっている場合です。パートナーと最低限のコミュニケーションが成り立っていること、子どもの生活環境をできるだけ維持したい事情があること、そしてあなた自身が冷静に日々を過ごせる状態であることです。
まず、会話がゼロではなく、日常のやりとりがある程度できている状態であれば、同じ家にいること自体がパートナーにとってあなたの変化を感じ取る機会になります。
また、子どもがいて生活環境を維持したい場合も、同居継続を選ぶ理由になります。子どもにとっては、両親が同じ家にいることそのものが安心材料になるためです。
さらに、あなた自身が冷静に過ごせるかどうかも重要な条件です。パートナーの顔を見るたびに感情が抑えられなくなるような場合は、同居を続けることがかえって逆効果になります。
5-2.別居を検討すべきケース
逆に、同居を続けることで状況が悪化する可能性が高い場合は、別居を検討した方がいいこともあります。特に次の2つに当てはまる場合は注意が必要です。パートナーがはっきりと出ていってほしいと言っている場合と、家の中で毎日のように口論が起こっている場合です。
パートナーが明確に距離を求めている状態で同居を続けると、相手にとっては自分の意思が無視されていると感じ、修復の可能性がさらに遠のいてしまいます。
また、毎日のように言い合いが続く場合も、お互いの印象がどんどん悪くなり、冷静に関係を見直すことができなくなります。
ここまでの内容を整理すると、同居を続けるか別居に移るかの判断基準は次のようになります。
| ▼同居継続か別居かの判断基準 | |
| 同居継続が有利なケース | 別居を検討すべきケース |
|---|---|
| 最低限の日常会話が成り立っている | パートナーが明確に出ていってほしいと言っている |
| 子どもの生活環境を維持したい | 家の中で毎日のように口論が起こる |
| 自分自身が冷静に過ごせる状態である | 顔を合わせるたびに感情が抑えられない |
| パートナーの変化を感じ取れる距離にいたい | 身の安全がおびやかされている(※即別居・相談) |
ただし、別居する場合にも注意点があります。感情的に家を飛び出すのではなく、冷静に準備をしてから動くことが大切です。特に、生活費や子どものことについては、別居前に最低限の取り決めをしておくことをおすすめします。
5-3.身の安全が最優先になるケースとその相談先
同居を続けるか別居かという判断以前に、身の安全がおびやかされている場合は、迷わず安全の確保を最優先にしてください。
パートナーから暴力を受けている、暴言が日常的にエスカレートしている、物を壊すなどの威圧的な行動がある。こうした状況では、関係修復よりもまず自分と子どもの安全を守ることが先です。
内閣府男女共同参画局のDV相談ナビでは、全国共通の電話番号 #8008 に電話をすると、最寄りの支援機関につないでもらえます。配偶者暴力相談支援センターへの相談件数は2024年度で約12.8万件にのぼっており、相談すること自体は特別なことではありません。
安全な場所に移ることは、関係を壊すことではありません。むしろ、冷静にこれからのことを考えるための第一歩です。
ここまでは、同居を続けるか別居に移るかの判断基準をお伝えしてきました。続いては、まだ同じ家で暮らしているうちに、お金や制度の面で最低限押さえておくべきことについてお伝えしていきます。
6.同じ家で過ごしている間に最低限決めておくべきお金と制度のこと
離婚するかしないかの結論が出ていなくても、お金と制度に関する知識を持っておくことは非常に大切です。
感情的にしんどい時期にお金の話なんてしたくないと感じるかもしれません。しかし、ここを先送りにしてしまうと、後で自分が不利になる場面が出てきてしまうことがあります。
6-1.生活費の分担と婚姻費用の基本
同じ家で暮らしていても、夫婦の間では生活費の分担について確認しておく必要があります。
婚姻中は、夫婦はお互いの生活を支え合う義務があります。これを婚姻費用といいます。離婚したいと言われた後であっても、婚姻中であるかぎり、この義務はなくなりません。
もし生活費の分担について話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に婚姻費用の分担請求調停を申し立てることもできます。申立費用は収入印紙1,200円分です。
特に、パートナーが突然生活費を入れなくなったという場合は、この制度を知っておくだけでも心の支えになります。今すぐ使わなくても、選択肢があることを覚えておいてください。
6-2.児童手当・世帯分離・住民票の扱い
お子さんがいる場合、児童手当の受取先や世帯の扱いについても知っておくべきことがあります。
こども家庭庁の案内によると、父母が離婚協議中などで別居している場合は、子どもと同居している親に優先的に児童手当が支給されるとされています。さらに、住所が同じでも世帯分離をしていれば、別居しているものとして扱われる場合があります。
同じ家に住みながら世帯分離をするかどうかは、今後の方針によって判断が変わってきます。ただ、こうした制度があることを知らないまま離婚の話が進んでしまうと、気づかないうちに不利な状況になることもあります。
今の段階で結論を出す必要はありませんが、知識として頭に入れておくことが自分を守ることにつながります。
6-3.養育費と面会交流の取り決めを先送りにしない
子どもがいるご家庭では、養育費と面会交流の取り決めについても、できるだけ早い段階で意識しておくことが大切です。
こども家庭庁の令和3年度全国ひとり親世帯等調査によると、養育費の取り決めをしている割合は母子世帯で46.7%、父子世帯で28.3%にとどまっています。現在も養育費を受け取っている割合にいたっては、母子世帯で28.1%しかありません。
つまり、感情的にしんどい時期だからと先送りにしてしまうと、結果として子どもの生活に影響が出る可能性があるのです。
同じ調査では、面会交流の取り決め率も母子世帯で30.3%にとどまっています。こちらも、同じ家で過ごしている今のうちにできるだけ話し合いの道筋をつけておくことが望ましいです。
離婚するかどうかがまだ決まっていない段階でも、万が一のために知識だけは持っておく。それは悲観的なことではなく、冷静に自分と子どもの未来を守るための準備です。
ここまで、お金と制度について押さえておくべきことをお伝えしてきました。最後に、こうしたつらい時期を一人で抱え込まないための相談先についてお伝えしていきます。
7.一人で抱え込まないために頼れる相談先
離婚したいと言われた直後は、誰にも相談できずに一人で抱え込んでしまう方がとても多いです。
でも、一人で抱え込み続けると、どんどん視野が狭くなってしまいます。冷静に状況を見ることができなくなり、感情的な行動につながりやすくなるのです。
この章では、頼ることのできる相談先と、その活用の仕方をお伝えしていきます。
7-1.夫婦関係の専門カウンセラーに相談するという選択肢
夫婦の問題を相談する先として、まず知っていただきたいのが夫婦関係の専門カウンセラーです。
私たちのカウンセリングでは、悩んでいる妻か夫のどちらか一方だけがお越しになるケースがほとんどです。パートナーには内緒で相談に来られる方も多く、夫婦二人で来る必要はありません。
カウンセリングと聞くと、問題が深刻な人が行くところというイメージがあるかもしれません。しかし、実際には、今の状況をどう乗り越えたらいいかわからないという段階で来られる方が大半です。
まだ何も決まっていないという段階でこそ、専門家と一緒に状況を整理することで具体的な行動の方向性が見えてきます。一度相談してみる価値は十分にあると、私は考えています。
7-2.家庭裁判所の「円満調停」は関係修復にも使える
家庭裁判所と聞くと、離婚の手続きをする場所だと思われがちですが、実はそうとは限りません。
裁判所には夫婦関係調整調停(円満)という制度があり、これは離婚ではなく、夫婦関係を改善するための話し合いの場として利用できるものです。
この制度のポイントは、離婚した方がよいか迷っている場合にも利用できると裁判所が案内している点です。つまり、まだどうするか決まっていない段階でも使えます。
最高裁判所の報告によると、夫婦関係調整調停事件の新受件数は令和6年で38,281件にのぼっています。第三者を入れて話し合うことは、決して特別なことではありません。
同じ家の中で二人きりで話し合おうとしても感情的になってしまうという場合は、こうした公的な場を活用するのも一つの方法です。
7-3.第三者の力を借りることは弱さではない
ここまでカウンセラーや家庭裁判所についてお伝えしてきましたが、最後にひとつ、大事なことをお伝えしておきます。
自分だけでは解決が難しい問題に対して、適切な相手に助けを求められること。それは弱さではなく、むしろ強さです。
私のカウンセリングに来られる方の中にも、一人で頑張り続けた結果、心も体も限界に近づいてから来られるケースが少なくありません。もっと早く来ればよかったという声はとても多いです。
どの相談先を選ぶかは、今の状況に合わせて決めれば大丈夫です。大切なのは、一人で抱え込まないという選択を自分に許してあげることです。
この記事の内容に関連して、多くの方から寄せられる疑問にもお答えしておきます。
おわりに
離婚したいと言われた後、同じ家で過ごし続けるのは、想像以上につらいことだと思います。
毎朝顔を合わせるたびに気持ちが揺れて、何が正解なのか分からなくなる日もあるかもしれません。それは、あなたがそれだけ真剣に夫婦のことを考えている証拠でもあります。
この記事でお伝えしてきた内容をあらためて整理しておきます。
- 同じ家では食事・寝室・会話の距離感を意識し、無理のない日常を心がける
- 感情的に問い詰める、監視する、周囲を巻き込むなどのNG行動は避ける
- 子どもがいる場合は、子どもの前で離婚の話をしない、生活リズムを守ることが最優先
- 修復を目指すなら、まずは自分一人から変わることで信頼を積み直していく
- お金や制度の知識を持ち、一人で抱え込まず専門家や公的機関に頼ることも大切
夫婦関係は、一度揺らいだとしても、そこから立て直すことは可能です。もちろん時間はかかります。1年、1年半とかかることもあります。でも、今日からの小さな一歩が、その未来につながっています。
どうか、今のつらさの中にいても、自分の可能性を信じてあげてください。同じ家にいる今この時間は、修復のためのかけがえのない期間にもなり得るのです。





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