「本当に離婚していいのかな…」「離婚するのやっぱりやめようかな」
夫婦関係に悩み、一度は離婚を決意したものの、どこかで迷いを感じているあなたへ。その気持ちを持つのは自然なことです。
私は夫婦関係修復のカウンセラーとして、20年以上にわたり1万組を超える夫婦の関係修復をサポートしてきました。その経験から、一度離婚を考えるほど悩んだカップルの方が、むしろより深い絆で結ばれることも多いということを実感しています。
ただし、ここで大切なのは「ただ離婚をやめる」のではなく、お互いが成長できる新しい関係を築くことです。「離婚はやめたけれど、また同じ問題で悩むことになった」という状況は避けなければなりません。
この記事では、離婚を思いとどまるべきかの判断材料と、その後の具体的な関係修復の方法をお伝えします。すべて、一人から始められる実践的な方法をご紹介していきますので、パートナーの協力が得られなくても、まずはあなた自身で取り組むことができます。
▼この記事でわかること
- 離婚をやめるべきかどうかの判断材料
- 関係修復に向けた具体的な行動プラン
- 手続きの進行状況別の対応方法
- よくある悩みへの具体的な対処法
1.「離婚をやめる」と考え始めた時、確認すべき3つのこと
離婚をやめようと考え始めた時、まず確認していただきたいことが3つあります。なぜなら、この3つを整理することで、あなたの今後の行動がより明確になるからです。
- あなたの本当の気持ちを整理する
- 子どもへの影響を冷静に考える
- 経済面での現実を見つめ直す
では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
1-1.あなたの本当の気持ちを整理する
まず最初に行っていただきたいのは、あなた自身の気持ちの整理です。
「離婚をやめたい」という気持ちの中には、実はいくつかの異なるパターンがあります。その気持ちが「恐怖からの逃避」なのか、「関係修復への希望」なのかを見極めることが、とても重要になってきます。
例えば、私のカウンセリングに来られた40代の女性は、このように話してくれました。
「離婚を考えたのは、夫が家事も育児も手伝ってくれず、すべて私任せだったから。でも、実際に離婚を考え始めると、一人で子育てと仕事の両立ができるのか不安で…。だから離婚はやめようかなと思い始めたんです」
この方の場合、離婚をやめようと考えたのは「関係修復への希望」からではなく、「経済的な不安や将来への恐れ」からでした。このようなケースでは、ただ離婚をやめても本質的な問題は解決しません。むしろ、先送りにすることで状況が悪化してしまう可能性もあるのです。
一方で、こんな声も聞かれます。
「夫は最近、少しずつ変わろうとしている様子が見られます。私も自分の態度を振り返ると、夫の気持ちを考えずに批判ばかりしていたかもしれません。もう一度、二人で向き合い直してみたいと思うようになりました」
このように、お互いの課題に気づき、関係を改善したいという前向きな気持ちからの決断であれば、離婚を思いとどまることで、より良い関係を築けるチャンスとなります。
ご自身の気持ちを整理する際は、以下のような質問を自分に投げかけてみましょう。ノートに書き出すことをおすすめします。
- 離婚を考えはじめた本当の理由は何か
- 今、離婚をやめたいと思う理由は何か
- パートナーとどんな関係になりたいと思っているか
- その関係を築くために、自分には何ができそうか
これらの質問に向き合うことで、次に取るべき行動が見えてくるはずです。
では、次に大切な視点として、お子様への影響について考えていきましょう。
1-2.子どもへの影響を冷静に考える
気持ちの整理ができたら、次に考えていただきたいのが子どもへの影響です。離婚を思いとどまる理由として、「子どものため」というのはとても多く聞かれます。
しかし、ここで大切なのは、「子どものため」と一言で片付けるのではなく、具体的にどのような影響があるのかを考えることです。
私のカウンセリングに来られた30代の女性は、こんな気づきを得ました。
「最初は『子どものためには離婚しない方がいい』と思っていました。でも、よく考えてみると、夫婦の関係が悪いままだと、子どもたちは毎日緊張した空気の中で生活することになります。それって本当に子どものためなのかな、と考えるようになりました」
その通りです。子どものためを考えるなら、大切なのは『親が離婚するかしないか』ではなく『子どもが安心して生活できる環境があるか』という点なのです。
例えば、以下のような状況では、子どもは大きなストレスを感じています。
「パパとママが、いつも怒った声で話している」
「食事の時も、誰も話さない」
「自分が話しかけても、親は聞いていないみたい」
このような環境で育つ子どもは、心の発達に影響を受ける可能性があります。つまり、「離婚する・しない」以前に、「子どもが安心できる家庭環境をつくれるか」が重要なポイントとなってくるのです。
離婚を思いとどまり、関係修復に向かうのであれば、必ず「子どもが安心して生活できる環境づくり」を意識していく必要があります。具体的には、夫婦でお互いを否定するような言葉を使わない、子どもの前での言い争いを避けるなどの配慮から始めていきましょう。
1-3.経済面での現実を見つめ直す
次に考えたいのが、現実的な経済面での影響です。この部分は、感情的になりやすい夫婦関係の中でも、特に冷静に見つめる必要があります。
私が経験した中で印象的だった事例があります。ある40代の女性は、こう話してくれました。
「離婚を考えた時、慰謝料をもらえば何とかなると思っていました。でも、実際に計算してみると、子どもの教育費や将来の生活費を考えると、とても足りないことが分かって。でも、それを理由に離婚をやめるのは、また同じ問題の繰り返しになりそうで…」
経済的な不安から離婚をやめる選択は、往々にして新たなストレスを生み出します。大切なのは、以下の2つの視点で考えることです。
①「今の生活水準を維持できるか」という視点
世帯収入が減ることで、子どもの習い事を減らさなければいけないかもしれません。引っ越しが必要になるかもしれません。これらについて、具体的な数字で考えることが重要です。
②「将来の経済的自立の可能性」という視点
もし今は経済的に難しくても、資格取得や転職などで、将来的に自立できる見込みがあるのであれば、それは大きな判断材料となります。
ただし、ここで強調しておきたいのは、経済面の課題は、多くの場合、夫婦で話し合うことで解決策が見つかるということです。例えば、以下のような方法が考えられます。
「お互いの収入と支出を見直し、家計の立て直しを図る」
「将来のキャリアプランについて話し合う」
「子どもの教育費の工面について一緒に考える」
このように、経済面の課題は、むしろ夫婦で向き合うべき共通の課題として捉えることで、関係修復のきっかけにもなり得るのです。
では、これら3つの確認ポイントを踏まえた上で、次は実際の関係修復に向けて、知っておくべき重要な考え方についてお伝えしていきましょう。
2.離婚をやめて関係修復を目指す前に知っておくべきこと
これまで、離婚をやめるかどうかの判断材料について見てきました。ここからは、実際に関係修復を目指す際に、まず理解しておいていただきたい重要な考え方についてお伝えします。
多くの方が関係修復に失敗してしまう原因は、この部分の理解が不十分なままスタートしてしまうことにあります。まずは以下の3つの考え方をしっかりと押さえていきましょう。
2-1.「元の関係に戻る」ことが目的ではない
「離婚はやめて、元の関係に戻りたい」
これは多くの方が口にする言葉ですが、実は大きな落とし穴が潜んでいます。なぜなら「元の関係」の中にこそ、今回の危機に至った原因が存在するからです。
私のカウンセリングに来られた方の多くは、当初「元の仲の良かった関係に戻りたい」と話されます。しかし、よくよく話を聞いていくと、実は「元の関係」の中にも様々な問題が存在していたことに気づかれます。
例えば、ある方はこう振り返ってくれました。
「思い返してみると、結婚当初から、お互いの気持ちをちゃんと話し合うことはありませんでした。ただ、若かったから色々と許し合えていただけで、コミュニケーションの取り方自体に大きな問題があったんだと気づきました」
本当の意味での関係修復とは、「元に戻る」ことではなく、「新しい、より良い関係を築く」ということなのです。
2-2.相手の変化を待つ前に、自分から変われること
「夫が変わってくれれば、私も変われるのに…」
これも、カウンセリングでよく耳にする言葉です。確かに、パートナーに問題がある場合も少なくありません。しかし、相手の変化を待っているだけでは、状況は何も変わりません。
ある30代の女性は、こんな体験を語ってくれました。
「最初は夫が変わることばかり求めていました。でも、カウンセリングで『自分にできることから始めてみては?』とアドバイスをもらい、まずは『ありがとう』を意識して言うようにしてみました。すると不思議なことに、夫の態度が少しずつ柔らかくなっていったんです」
人間関係は、常に双方向のものです。どちらかが変化を起こせば、必ずもう一方にも何らかの変化が起きます。大切なのは、「誰が悪いか」ではなく、「誰が最初の一歩を踏み出すか」なのです。
2-3.適切な距離感を保ちながら進めることの重要性
関係修復を決意すると、つい「早く元のように仲良くなりたい」という気持ちから、相手に詰め寄ってしまいがちです。しかし、これは逆効果となることが多いのです。
私の経験上、関係修復に成功するカップルの多くは、適切な距離感を保ちながら、ゆっくりと時間をかけて関係を築き直しています。
例えば、こんな事例があります。
「夫と離婚の話をした後、私は必死で夫に話しかけ、関係を修復しようとしました。でも、それが逆に夫を追い詰めてしまい、より関係が悪化してしまったんです。その後、カウンセリングで『まずは適度な距離を保ちながら、お互いを観察する時間を作ってみては?』とアドバイスを受け、実践してみたところ、少しずつですが会話ができるようになってきました」
これは、相手の心の準備が整っていない段階で急接近しすぎると、かえって警戒心を高めてしまうためです。
それでは、具体的にどのように関係修復を進めていけば良いのでしょうか。次の章では、実践的な5つのステップについてご説明していきます。
3.離婚を思いとどまって良かったと思える関係を築く5つのステップ
ここまで、関係修復に向けた基本的な考え方を見てきました。では、具体的にどのような行動を取ればよいのでしょうか。
実際に多くのカップルが成功してきた「関係修復の5つのステップ」をご紹介します。
- 【Step1】感情的な言動を控える訓練をする
- 【Step2】パートナーの良いところを3つ書き出す
- 【Step3】小さな感謝を伝え始める
- 【Step4】自分の気持ちを「私は~」で伝える
- 【Step5】二人の将来について具体的に語り合う
これらのステップは、すべて一人から始められる方法なので、パートナーの協力が得られなくても、まずはあなた自身の意志だけで実践することができます。
ここから、各ステップについて詳しく見ていきますが、重要なのは、必ずステップ順に進めていくことです。なぜなら、それぞれのステップには意味があり、順番を飛ばしてしまうと、かえって関係が悪化してしまう可能性があるためです。
それではいきましょう。
3-1.【Step1】感情的な言動を控える訓練をする
最初に取り組むべきなのは、自分自身の感情的な言動をコントロールする訓練です。
私のカウンセリングでは、このステップを飛ばして「すぐに気持ちを伝えたい」という方も多くいらっしゃいます。しかし、感情的な状態のままでは、どんなに良い言葉を選んでも、その真意は相手に伝わりにくいものです。
例えば、こんな事例がありました。
「夫が帰りが遅いときも、『心配だったから連絡してほしかった』と冷静に伝えられるようになりました。すると、夫も素直に『ごめん、次から気をつける』と言ってくれるようになったんです」
この方は、以前であれば「また遅いじゃない!」と声を荒げていたそうです。しかし、感情的な言葉を控える訓練を重ねることで、夫との関係に変化が現れ始めました。
具体的な実践方法としては、まず「深呼吸」から始めましょう。イライラしたり、悲しくなったりしたときは、その場で深呼吸を3回行います。そして、「今の自分は感情的になっているな」と一歩引いた視点で自分を観察するのです。
3-2.【Step2】パートナーの良いところを3つ書き出す
感情をコントロールできるようになってきたら、次はパートナーの良いところを意識的に探す訓練を始めます。
なぜこのステップが重要なのでしょうか。それは、夫婦関係が悪化すると、自然と相手の悪いところばかりが目につくようになってしまうためです。この悪循環を断ち切るには、意識的に相手の良いところを探す習慣をつける必要があります。
ある40代の女性は、このステップで大きな気づきを得ました。
「最初は『良いところなんて見つからない』と思っていました。でも、毎日ノートに書き出す習慣をつけていったら、『子どもの宿題を見てくれている』『洗濯物を取り込んでくれている』など、今まで当たり前すぎて気づかなかった夫の優しさが見えてきたんです」
具体的な実践方法は、とてもシンプルです。毎晩寝る前に、その日のパートナーの良かった行動や態度を3つノートに書き出します。最初は「見つからない」と感じるかもしれません。それでも、小さなことでも良いので、必ず3つ書き出すように心がけましょう。
では次に、これらのステップを踏まえた上で、実際にパートナーとの関係を改善していく方法を見ていきましょう。
3-3.【Step3】小さな感謝を伝え始める
パートナーの良いところを見つける習慣がついてきたら、次はその気づきを「言葉」として伝えていくステップに進みます。
ここで重要なのは、最初から大きな感謝を伝えようとしないことです。「ありがとう」という言葉は、小さなことから始めていきましょう。なぜなら、いきなり大げさな感謝を伝えると、相手は警戒心を抱いてしまう可能性があるためです。
例えば、こんな事例があります。
「夫が食器を流しに置いてくれただけでも『ありがとう』と言うようにしました。最初は照れくさかったのですが、続けているうちに自然に言えるようになりました。すると夫も、私に『ありがとう』を返してくれるようになったんです」
小さな感謝の積み重ねが、夫婦の関係性を少しずつ変えていくのです。
3-4.【Step4】自分の気持ちを「私は~」で伝える
感謝を伝える習慣ができてきたら、いよいよ自分の気持ちを伝えていくステップに入ります。ここでのポイントは、「あなたが〜」という相手を責める言い方ではなく、「私は〜」という自分の気持ちを伝える方法を使うことです。
具体的な例を見てみましょう。
「あなたはいつも仕事ばかりで、家族のことを考えていない」
↓
「私は、家族と過ごす時間が少なくて寂しいと感じています」
同じ内容でも、伝え方によって相手の受け取り方は大きく変わります。「あなたが〜」は相手を責める言葉になりやすく、防衛反応を引き起こしてしまいます。一方、「私は〜」という表現は、自分の気持ちを正直に伝えることができ、相手も受け入れやすくなります。
3-5.【Step5】二人の将来について具体的に語り合う
ここまでのステップを着実に進めてきた上で、最後に二人の将来について語り合うステップに入ります。
このステップで大切なのは、「理想の未来」を具体的にイメージしながら話をすることです。単に「仲良く暮らしたい」という漠然とした願望ではなく、「休日は家族で出かける時間を作りたい」「お互いの趣味を理解し合いたい」といった具体的な姿をイメージすることで、実現に向けた行動が見えてきます。
例えば、ある夫婦はこんな対話から関係が大きく改善したと言います。
「私:子どもが大きくなったら、二人で温泉旅行に行けたらいいなって思うんです」
「夫:そうだね。毎年誕生日は二人で過ごす時間を作ろうか」
このような具体的な未来像を共有することで、お互いが同じ方向を向いて歩んでいける関係が築けるのです。
ただし、ここで注意したいのは、このような対話は焦らずに進めていくことです。無理に話を進めようとせず、お互いの気持ちの準備が整ってから、少しずつ将来の話をしていくようにしましょう。
では次に、実際の離婚手続きの進行状況に応じた具体的な対処法について見ていきましょう。
4.離婚の手続きを進めている段階別の対処法
ここまで関係修復の具体的なステップを見てきましたが、実際には「既に離婚の手続きを進めている」という方も多いことでしょう。では、その場合はどのように対応すれば良いのでしょうか。
手続きの進行状況によって、取るべき対応は異なってきます。ここからは、具体的な段階別の対処法についてお伝えしていきます。
4-1.話し合いの段階での対応
まず、パートナーと離婚について話し合いを始めている段階では、この状況を「関係を見直すチャンス」と捉えることができます。
私のカウンセリングでは、このような相談がよくあります。
「夫から『離婚したい』と切り出されて、頭が真っ白になってしまいました。すぐに『絶対にイヤ』と泣きながら訴えてしまったんです。でも、それが逆効果だったような気がして…」
確かに、突然の離婚話は大きなショックを伴います。しかし、この段階では、まだお互いの気持ちを確認し合える余地が十分にあります。
例えば、ある40代の女性は、このように対応して関係の改善に成功しました。
「夫から離婚を切り出されたとき、すぐには返事をせず、『あなたがそう考えるようになった理由を、私にも教えてほしい』と冷静に聞くようにしました。すると夫は『実は仕事のストレスで、誰かに八つ当たりしたくなっていた』と本音を話してくれたんです」
このように、話し合いの段階では「すぐに結論を出そうとしない」ことが重要です。その代わりに、以下のような対応を心がけましょう。
「パートナーの話をまずは最後まで聞く」
「自分の気持ちを伝えるときは、感情的にならないよう深呼吸をする」
「『考える時間がほしい』と伝えることも大切」
また、この段階では、法的な知識を得ておくことも有効です。例えば、離婚の種類(協議離婚、調停離婚、裁判離婚)や、親権、財産分与についての基本的な理解があれば、より冷静な判断ができるでしょう。
では次に、既に離婚調停に入っている場合の対応について見ていきましょう。
4-2.離婚調停中の場合の対応
既に離婚調停に入っている段階では、より慎重な対応が必要です。なぜなら、この段階では法的な手続きが始まっており、言動の一つ一つが今後の展開に大きく影響するためです。
ただし、調停中であっても関係修復の可能性は十分にあります。実際、私の経験では、調停の過程で冷静な話し合いができるようになり、和解に至るケースも少なくありません。
例えば、このような事例がありました。
「調停の場で初めて、夫が抱えていた悩みを知ることができました。仕事で大きな失敗をして自信を失っていたこと、それを私に話せずにいたことを。調停委員さんの前だったからこそ、お互いの本音を冷静に話せたのかもしれません」
この方の場合、調停という「第三者の介入がある場」だからこそ、お互いの気持ちを整理して伝えることができました。つまり、調停は単なる離婚手続きではなく、関係を見直すための貴重な機会とも捉えられるのです。
調停中の具体的な対応としては、以下のような姿勢を心がけましょう。
「調停の場では感情的にならず、事実に基づいて話をする」
「相手の話にもしっかりと耳を傾ける」
「将来の生活について、具体的なプランを示せるようにしておく」
4-3.離婚届提出後の対応
離婚届を提出してしまった後でも、実は修復の可能性が残されています。離婚届の提出から受理されるまでには一定期間があり、この間であれば取り下げることが可能だからです。
ある30代の女性は、このような経験を話してくれました。
「感情的になって離婚届を出してしまったんです。でも、数日経って冷静になると、本当にこれで良かったのか不安になってきて。区役所に相談に行ったところ、まだ受理前だったので取り下げることができました」
ただし、この段階で安易に取り下げを行うことは避けましょう。なぜなら、それまでの経緯や感情の整理が不十分なまま元の関係に戻っても、また同じ問題が繰り返される可能性が高いためです。
離婚届の取り下げを考える場合は、必ず以下の点について十分に考えを整理してください。
「なぜ離婚届を提出するところまで関係が悪化したのか」
「その原因について、どのような対策が考えられるか」
「二人で向き合って話し合う準備が本当にできているか」
また、この段階では法的な手続きも重要になってきます。離婚届の取り下げ方法や期限について、事前に市区町村の窓口で確認しておくことをおすすめします。
では次に、関係修復を進めていく中で直面しやすい悩みと、その具体的な対処法について見ていきましょう。
5.関係修復のプロセスでよくある悩みとその対処法
これまで、具体的な修復のステップと、手続きの段階別の対応方法を見てきました。しかし、実際に関係修復を進めていく中では、様々な困難に直面することがあります。
ここからは、カウンセリングの現場で特によく耳にする3つの悩みと、その具体的な対処法についてお伝えしていきます。これらの悩みは、多くの方が経験するものですので、決して特別なことではありません。
5-1.パートナーが冷たい態度を取り続ける場合
関係修復を試みる中で最も多い悩みが、「こちらが変化しても、パートナーが冷たい態度のままで変わってくれない」というものです。
例えば、このような声をよく聞きます。
「私なりに態度を改善しようと、『ありがとう』を伝えたり、優しく接したりしているのに、夫は相変わらず無視や素っ気ない返事ばかり。このまま続けても意味がないのかな、と不安になってきます」
確かに、このような状況は心が折れそうになります。しかし、ここで大切なのは、パートナーの態度の裏にある感情を理解することです。
ある40代の女性は、このような気づきを得ました。
「カウンセリングで『相手が冷たい態度を取るのは、まだ心を開く準備ができていないサイン』と教えてもらいました。それを聞いて、夫の気持ちの変化を焦って求めすぎていたことに気づきました。その後、『相手のペースを尊重しよう』と意識を変えてからは、少しずつですが会話ができるようになってきたんです」
このように、パートナーが冷たい態度を取り続けるのは、実は心の準備ができていない、あるいは警戒心が解けていない状態であることが多いのです。
では、このような状況ではどのように対応すれば良いのでしょうか。実践的な行動のポイントは以下の通りです。
「相手の変化を焦らず、自分のできることを続ける」
「以前の関係に比べて、少しでも変化があれば、それを進歩として捉える」
「自分自身のストレスケアも忘れずに行う」
パートナーの態度が変わらないからといって、あきらめてしまうのはもったいありません。なぜなら、態度の変化は、常に心の変化よりも遅れて現れるものだからです。
続いて、関係修復を目指す中で多くの方が直面する、周囲の反対への対処方法を見ていきましょう。
5-2.周囲の反対にあった場合の対処法
パートナーとの関係改善を目指そうとしたとき、意外な障壁となるのが周囲の反対です。特に両親や親しい友人からの「もう離婚した方がいい」という意見は、大きな重荷となることがあります。
周囲の反対が起きるのは、あなたを心配してくれているからです。例えば、このような声をよく聞きます。
「母が『あなたがこれ以上苦しむのを見たくない』と、離婚を勧めてきます。確かに今までの苦労を知っている母だからこその言葉なんですが、でも私は関係を修復したいんです」
このように、周囲の意見と自分の気持ちの間で板挟みになることは珍しくありません。しかし、最終的な決断を下すのは、あくまでもあなた自身です。
周囲への具体的な対応としては、以下のような伝え方が効果的です。
「あなたが心配してくれているのはとても嬉しい。でも、もう一度この関係に向き合ってみたい。その過程で、また相談に乗ってもらえると嬉しいです」
このように、相手の気持ちを受け止めつつ、自分の意思をはっきりと伝えることで、多くの場合、周囲も理解を示してくれるようになります。
5-3.子どもが不安定になった場合の接し方
関係修復の過程で、子どもの様子が変化することもよくあります。突然反抗的になったり、逆に必要以上に良い子になろうとしたり、様々な形で不安を表現することがあります。
私のカウンセリングでは、このような相談が多く寄せられます。
「小学生の娘が、急に成績が下がり始めました。夫婦関係を修復しようとしている最中なのに、かえって子どもに負担をかけているのではないかと心配です」
このような状況で大切なのは、子どもの変化は「助けを求めるサイン」として受け止めることです。
具体的な対応方法として、以下の3つが効果的です。
- 毎日15分でも、子どもと1対1で向き合う時間を作る
- 子どもの話を否定せず、まずは受け止める
- 「パパとママは二人とも、あなたのことが大好きだよ」というメッセージを繰り返し伝える
【子どもと向き合う時間を作る】
たった15分でも、子どもと1対1で向き合う時間を作ることで、子どもは「自分は大切にされている」と感じることができます。
【子どもの話を否定せずに受け止める】
子どもの気持ちを否定せず、まずは受け止めることで、子どもは安心して本音を話せるようになります。
【愛情メッセージを繰り返し伝える】
「パパとママは二人とも、あなたのことが大好きだよ」というメッセージを繰り返し伝えることで、子どもの不安は少しずつ和らいでいきます。
ある母親は、このように実践して成功しました。
「息子の話を聞く時間を必ず作るようにしたら、少しずつ本音を話してくれるようになりました。『パパとママが仲直りできるか心配』という気持ちを打ち明けてくれて、それに対して『二人で頑張っているところだよ』と正直に伝えることで、息子も安心したように見えました」
まとめ
ここまで、離婚を思いとどまってより良い関係を築くための具体的な方法を見てきました。最後に、重要なポイントを整理しておきましょう。
一番大切なのは、「ただ元に戻る」のではなく、「新しい、より良い関係を築く」という意識を持つことです。そのために、以下の点を忘れずに進めていってください。
- まずは自分の気持ちと向き合い、本当に望む関係を明確にする
- 相手の変化を待つ前に、自分から変化を起こしていく
- 具体的なステップを踏みながら、焦らずゆっくりと進める
関係修復の道のりは、決して簡単ではありません。しかし、適切な方法で取り組めば、必ず道は開けます。私がこれまでカウンセリングしてきた多くのカップルが、実際にその証です。
もし今、不安を感じているのなら、それは当然のことです。ただ、その不安があるからこそ、慎重に、そして着実に歩みを進めることができるのです。
あなたらしい幸せな関係を築けることを、心から願っています。
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