「最近、夫婦の会話が減ってきた」「何となく心が通じ合っていないような気がする」。こんな風に感じ始めた時、多くの夫婦は不安を感じます。
私は夫婦関係修復のカウンセリングを20年以上続けてきましたが、このような状態は「倦怠期」と呼ばれ、多くの夫婦が経験する自然な過程です。しかし、この時期をどう過ごすかによって、その後の夫婦関係は大きく変わってきます。
私のカウンセリングでも、倦怠期をうまく乗り越えた夫婦は、むしろ以前よりも深い絆で結ばれるようになっています。一方で、この時期の対応を誤ると、その後の関係修復が難しくなることも事実です。
この記事では、1万組以上の夫婦カウンセリングで得た経験をもとに、倦怠期を乗り越えるための具体的な方法をお伝えしていきます。
▼この記事で分かること
- 倦怠期を乗り越えるための具体的な5つのステップ
- 夫婦の倦怠期がなぜ起こるのか
- 倦怠期を乗り越えた先にある夫婦関係
1.倦怠期を乗り越える5つの具体的な方法
夫婦の倦怠期を乗り越えるためには、まずは今の状態を理解し、そこから一つずつ具体的な行動を積み重ねていくことが大切です。私の経験から、多くの夫婦が実践できて効果的だった方法を、5つのステップにまとめてお伝えしていきます。
1-1.【Step1】今の状態を冷静に受け止める
倦怠期を乗り越える第一歩は、今の状態を冷静に受け止めることです。多くの方は「このままずっと冷めた関係が続くのではないか」と不安を感じ、焦ってしまいがちです。しかし、この焦りが状況を更に悪化させてしまうことがあります。
私のカウンセリングに来られた奥様は、こんな風に話してくれました。

「主人と話さなければと思って、無理に話しかけていたんです。でも、それが逆効果で、お互いにストレスが溜まっていました。カウンセリングで『それは自然な状態なんですよ』と言われて、肩の力が抜けました」
このように、まずは今の状態を「夫婦関係の自然な変化の過程」として受け止めることが大切です。その上で、「今の関係をより良いものに変えていこう」という前向きな気持ちを持つことで、次のステップに進む準備が整います。
具体的には、以下のような意識を持つようにしましょう。
- 倦怠期は多くの夫婦が経験する自然な過程であることを理解する
- 無理に今までの関係を取り戻そうとしない
- 今は夫婦関係が新しい段階に移行する準備期間だと捉える
このように冷静な状態で状況を受け止められたら、次は具体的な改善に向けて、二人の関係を見つめ直していきましょう。
1-2.【Step2】二人の関係を阻害している要因を見つめる
冷静な状態で今の関係を受け止められたら、次は二人の関係を阻害している要因を見つめていきましょう。実は、多くの夫婦が「倦怠期だから仕方ない」と諦めていますが、具体的な原因があることがほとんどです。
私のカウンセリングでは、夫婦関係を阻害する要因として、特に以下の3つが多く見られます。
- 生活リズムのずれによるすれ違い
- 育児や仕事による心身の疲れ
- お互いへの期待と現実のギャップ
あるご夫婦は、こんな気づきを得ました。

「夫は夜型で、私は朝型。その生活リズムの違いが、知らず知らずのうちに会話を減らしていたんです。『倦怠期だから』と思い込んでいましたが、実は単純な生活習慣の問題だったんですね」
このように、関係を阻害している要因は案外シンプルなことが多いのです。大切なのは、『倦怠期だから仕方ない』と諦めるのではなく、具体的な原因を冷静に見つめることです。
1-3.【Step3】まずは一人から始める小さな改善行動
関係を阻害している要因が見えてきたら、次は具体的な改善行動を始めていきましょう。ここで重要なのは、「パートナーの協力が必要」と考えすぎないことです。まずは自分一人でできる小さな行動から始めることが、大きな変化につながります。
私のカウンセリングでも、次のような声をよく聞きます。

「妻に『もっと話をしよう』と言っても変わらなかったんです。でも、『まずは自分から』と考えを改めて、朝の『おはよう』だけは必ず言うようにしました。すると、妻も少しずつ応えてくれるようになって…」
このように、小さな変化から始めることで、パートナーの自然な反応を引き出すことができます。具体的には、以下のような行動から始めてみましょう。
- 「おはよう」「おやすみ」の挨拶を必ず行う
- 食事の時は携帯を見ない時間を作る
- 相手の話を否定せずに聞く時間を持つ
一つ注意しておきたいのが、これらの行動は「相手の反応を期待して行う」のではなく、「自分の生活をより良くするため」という気持ちで行うことです。そうすることで、相手の反応に一喜一憂せず、継続的な改善が可能になります。
このように小さな行動を積み重ねていくと、少しずつですがパートナーとの関係に変化が現れ始めます。その変化を感じ取れたら、次のステップである「コミュニケーションの質を高める」段階に進んでいきましょう。
1-4.【Step4】コミュニケーションの質を高める
パートナーとの関係に小さな変化が見え始めたら、次は具体的なコミュニケーションの改善に取り組んでいきましょう。以下の3つのポイントを意識することで、会話の質は大きく変わります。
- 「なぜ?」ではなく「どうしたの?」と問いかける
- 相手の話を最後まで否定せずに聞く
- 自分の気持ちを「私は〇〇」と伝える
【「なぜ?」ではなく「どうしたの?」と問いかける】
「なぜ」という言葉には、無意識のうちに責める気持ちが含まれがちです。代わりに「どうしたの?」と優しく問いかけることで、相手は自分の気持ちを話しやすくなります。
【相手の話を最後まで否定せずに聞く】
話の途中で「でも」「そんなことない」と否定してしまうと、相手は気持ちを閉ざしてしまいます。まずは最後まで聞くことで、パートナーは「自分の気持ちを分かってもらえた」と感じることができます。
【自分の気持ちを「私は〇〇」と伝える】
「あなたは〇〇」と言うと、どうしても責めるような印象になってしまいます。代わりに「私は寂しいと感じる」「私はこうしてほしい」と、自分の気持ちを主語にして伝えることで、相手も受け入れやすくなります。
実際に、あるご夫婦はこのように変化を感じられたそうです。

「以前は『なんで話してくれないの?』って責めてばかりでした。でも『最近、何か大変そうに見えるけど、どうかな?』って聞くようにしたら、少しずつ夫が話してくれるようになりました」
パートナーとの会話が増え、関係が改善してきたら、いよいよ最後のステップです。ここまでの変化を確かなものにするために、二人で新しい体験を作っていきましょう。
1-5.【Step5】二人で新しい体験を作る
新しい体験を作ることは、関係をさらに深めるための重要なステップです。以下の3つの方法から、二人に合った形で始めてみましょう。
- 二人で新しい習慣を作る
- 共通の趣味を見つける
- 一緒に将来の計画を立てる
【二人で新しい習慣を作る】
「毎週土曜の朝は二人でコーヒーを飲む」「休日の夕方は近所を散歩する」など、小さな習慣から始めてみましょう。私のカウンセリングでも、こうした小さな習慣作りから、自然と会話が増えていったというケースが多くあります。
【共通の趣味を見つける】
料理教室に通う、写真を撮りに行く、ガーデニングを始めるなど、二人で楽しめる活動を見つけることで、新しい会話の種が生まれます。以前は「話すことがない」と悩んでいたご夫婦も、共通の趣味ができたことで、自然と会話が増えていったそうです。
【一緒に将来の計画を立てる】
「来年の夏休みに温泉旅行に行く」「5年後は二人で海外旅行に行く」など、具体的な目標を立てることで、二人で共有できる楽しみが生まれます。このような具体的な計画は、日々の生活に新しい楽しみをもたらしてくれます。
2.夫婦の倦怠期とはどのような状態なのか
ここまで、倦怠期を乗り越えるための具体的な方法をお伝えしてきました。では、そもそも夫婦の倦怠期とは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか。夫婦関係を改善していくためには、まず「倦怠期」という状態をしっかりと理解することが大切です。
2-1.倦怠期の3つの典型的なパターン
夫婦の倦怠期には、主に3つの典型的なパターンがあります。20年以上のカウンセリング経験から、それぞれの特徴と背景についてお伝えしていきましょう。
- 無関心型:会話もスキンシップもなく、ただ生活をこなすだけの状態
- イライラ型:些細なことで喧嘩になり、お互いにストレスを感じる状態
- 諦め型:現状を変えることを諦め、表面的な平和を保っている状態
それぞれ詳しく見ていきましょう。
【無関心型】
お互いへの関心が薄れ、同じ空間にいても特に会話もなく、ただ日々の生活をこなしているような状態です。あるご夫婦はこう話してくれました。

「休日も、夫はスマホを見ながらソファでごろごろ。私も特に話しかけることもなく、気がついたら一日中ほとんど会話がないんです」
【イライラ型】
些細なことでお互いにイライラし、ちょっとした言動が喧嘩のきっかけになってしまいます。「夫の食事の音が気になって仕方ない」「妻の物の置き方が雑で腹が立つ」といった感情が日常的に生まれ、それが積み重なっていく状態です。
【諦め型】
「もう何を話しても変わらない」「こんなものかな」と、現状を変えることを諦めている状態です。表面上は平和に見えますが、実は最も注意が必要なパターンです。夫婦としての絆が徐々に薄れていく危険性があるためです。
2-2.倦怠期が訪れる理由と意味
では、なぜこのような倦怠期が訪れるのでしょうか。実は、倦怠期には重要な意味があります。それは「新しい関係性を築くための準備期間」なのです。
結婚当初は、お互いへの期待や理想が高く、それに応えようと努力する時期です。しかし、その関係を永遠に続けることは難しく、また、それは必ずしも健全な関係とは言えません。
私の経験から、倦怠期とは、そうした理想化された関係から、より現実的で安定した関係へと移行するための自然な過程だと考えられます。

「最初は主人の前では常にお洒落をしていようと頑張っていました。でも、それは無理をしていて本当の自分じゃなかったことに気が付きました。今は素の自分でいられる関係になって、かえって気持ちが楽になりました」
このように、倦怠期を経て、お互いをより深く理解し、受け入れ合える関係に発展していくのです。
2-3.倦怠期を経験する時期と期間
倦怠期はいつ頃訪れ、どのくらい続くものなのでしょうか。私の経験では、多くの夫婦が結婚後3~7年目あたりで倦怠期を経験します。特に第一子の誕生後、育児に追われる時期と重なることが多いようです。
期間については、半年から2年程度という夫婦が多いですが、これには個人差があります。大切なのは、期間の長さではありません。この時期をどのように過ごし、お互いの関係をどう育んでいくかが、その後の夫婦関係を大きく左右します。
先ほどご紹介した具体的な改善方法を実践することで、この期間を短縮し、より良い関係へと発展させることができます。倦怠期を「危機」ではなく「チャンス」と捉え、夫婦関係を見つめ直す機会として活用していきましょう。
3.倦怠期を乗り越えた先にある夫婦関係
ここまで、倦怠期の本質や乗り越え方についてお伝えしてきました。では、この時期を上手く乗り越えた先には、どのような夫婦関係が待っているのでしょうか。実は、倦怠期を乗り越えた多くの夫婦が、それまでとは異なる、より深い絆で結ばれるようになっています。
3-1.倦怠期を乗り越えることで得られる3つの変化
私のカウンセリングに来られた方々の経験から、倦怠期を乗り越えた後には、特に大きな3つの変化が表れることが分かっています。
- 互いの個性を認め合える関係への変化
- 心の安定感の獲得
- 二人で成長できる関係の実現
それぞれ詳しく見ていきましょう。
【互いの個性を認め合える関係への変化】
結婚当初は、相手の理想像を追い求めがちです。しかし、倦怠期を経て、お互いの「ありのまま」を受け入れられるようになります。

「主人の几帳面すぎるところが昔は気になっていましたが、今はその性格が『らしさ』として愛おしく感じられます。逆に、私のおおざっぱさも『君らしくていいよ』って認めてくれるようになりました」
【心の安定感】
倦怠期特有の不安やイライラが消え、パートナーと一緒にいることで心が落ち着く関係に変わっていきます。

「以前は『この関係でいいのかな』と不安でしたが、今はお互いを信頼し合える関係になれて、とても安心感があります」
【二人で成長できる関係】
お互いの個性を認め合い、心の安定感が生まれることで、それぞれの夢や目標に向かって支え合える関係が築けるようになります。
このように、倦怠期を乗り越えることで、結婚当初とは異なる、より深い絆で結ばれるようになっていくのです。
3-2.より深い絆を築くためのポイント
こうした変化を確実なものにするために、特に意識していただきたいポイントがあります。それは、「理想の関係」ではなく「二人らしい関係」を目指すことです。
例えば、あるご夫婦はこんな気づきを得ました。

「SNSで見る『仲良し夫婦』に憧れていました。でも、カウンセリングで『二人にとって心地よい関係って何だろう』と考えるようになってから、肩の力が抜けました。今は『おしゃれなデートはしないけれど、休日は二人でゆっくりDVDを見る』という私たちらしい時間の過ごし方が定着しています」
大切なのは、他の夫婦との比較ではありません。二人にとって心地よい関係性を見つけ、それを大切に育んでいくことです。そうすることで、これまでとは違う、新しい絆が自然と生まれてくるのです。
3-3.次の段階に向けた夫婦二人の目標設定
より深い絆を築けるようになってきたら、次は二人で新しい目標を設定してみましょう。共通の目標を持つことで、二人の関係性はさらに豊かなものになっていきます。
私のカウンセリングでも、次のような声をよく聞きます。

「子育てが落ち着いてきて、『これからの二人の人生をもっと楽しみたいね』って話すようになりました。今は、定年後に夫婦で旅行に行けるように、少しずつ準備を始めています」
このように、将来の夢や目標を二人で話し合い、それに向かって一緒に歩んでいく過程そのものが、夫婦の絆をさらに深めていくきっかけとなります。
大切なのは、あまり大きな目標にとらわれすぎないことです。例えば、次のような身近な目標から始めてみるのはいかがでしょうか。
「毎月一回は二人で新しいお店を開拓する」「休日は一緒に散歩する習慣を作る」「5年後に二人で海外旅行に行く」など、二人で実現できそうな目標を少しずつ増やしていってください。
まとめ
最後に、この記事でお伝えした内容を整理しておきましょう。
倦怠期は夫婦関係の危機ではなく、より深い絆を築くためのチャンスです。まずは今の状態を冷静に受け止め、一人でもできる小さな行動から始めることで、確実に関係は改善していきます。
その際、以下のポイントを意識していただくと、より効果的に改善を進めることができます。
【倦怠期を乗り越えるための重要ポイント】
- 倦怠期は多くの夫婦が経験する自然な過程
- まずは自分一人でできる小さな行動から始める
- 他の夫婦との比較ではなく、二人らしい関係を目指す
もし今、倦怠期に悩んでいらっしゃるなら、それは新しい関係に向かうための大切な時期だと捉えてください。諦めることなく、一つずつ具体的な行動を積み重ねていけば、必ずより良い関係を築くことができます。
私は20年以上のカウンセリング経験から、どんな夫婦関係でも、必ず改善の可能性があることを確信しています。この記事が、あなたの夫婦関係をより良いものにするための一助となれば幸いです。
コメントを残す