離婚したくないけど離婚したい葛藤を解消する|20年のカウンセリング経験から導く解決法

離婚したくないけど離婚したい…。この一見矛盾した気持ちに苦しんでいる方は、思いのほか多いのではないでしょうか。愛情や思い出、家族という絆を守りたい気持ちがある一方で、日々の関係に疲れ、このままでは自分が壊れてしまうと感じる瞬間もあるでしょう。

私は夫婦関係修復コーチとして20年以上、1万組を超える夫婦の関係修復をサポートしてきました。その経験から言えるのは、このような複雑な感情を抱くことは決して異常なことではないということです。

むしろ、深い絆で結ばれた関係だからこそ、簡単に諦められない葛藤が生まれるのです。今、あなたが感じているその痛みや混乱は、関係を大切に思う証でもあります。

この記事では、そんな矛盾した感情に向き合いながら、より良い決断へと導く道筋をお伝えします。離婚を選ぶにせよ、関係修復を目指すにせよ、あなた自身が納得できる選択をするための具体的な方法をご紹介します。

この記事で分かること
  • 「離婚したくないけど離婚したい」という矛盾した感情の正体
  • 自分の本当の気持ちを見極める方法
  • 一人でもできる夫婦関係改善の具体的ステップ
  • どんな選択をしても自分を責めないための心の守り方
  • 夫婦関係を根本から変えるための専門的アプローチ

1.「離婚したくないけど離婚したい」という気持ちの整理

「離婚したい」と「離婚したくない」という相反する気持ちの間で揺れ動くことは、実は多くの方が経験する自然な感情です。この章では、そんな矛盾した感情の正体と向き合い方について解説します。

1-1.矛盾する感情に悩む人が実は多い理由

「離婚したくないのに離婚したい」という気持ちに苦しんでいるのは、あなただけではありません。この複雑な感情を抱える人は非常に多いのです。

なぜこのような矛盾した感情が生まれるのでしょうか。それは、人間の心の中には「理性」と「感情」という二つの異なる部分があるからです。理性では「家族を守りたい」「子どものためにも離婚はしたくない」と考える一方で、感情面では「もう耐えられない」「解放されたい」と感じてしまうのです。

厚生労働省の統計によれば、日本の離婚件数は年間約20万件。しかし、離婚を真剣に考えながらも実行に移さない「グレーゾーン」の夫婦は、その数倍以上存在すると言われています。つまり、あなたの葛藤は決して特別なものではないのです。

このような感情の揺れは、むしろ関係性を大切に思っている証拠でもあります。大切に思っていなければ、これほど悩むことなく簡単に決断できてしまうでしょう。

1-2.気持ちが揺れ動く4つの典型的なパターン

夫婦関係の悩みを抱える方々の気持ちは、いくつかの典型的なパターンに分類されることがあります。ご自身がどのパターンに近いかを知ることで、自分の感情をより客観的に理解できるようになります。

下図は、離婚を考える際に多くの方が経験する感情の揺れ動きを視覚化したものです。自分の気持ちがどのパターンに当てはまるか、確認してみてください。

気持ちが揺れ動く4つの典型的パターン
  • 現状維持と変化の間での葛藤
  • 愛情と失望の繰り返し
  • 子どものためと自分のためのジレンマ
  • 過去の思い出と現在の不満の対立
離婚を考える際の感情の揺れ動き4パターン

それぞれのパターンについて詳しく見ていきましょう。

現状維持と変化の間での葛藤

「このままでは耐えられない」と感じる一方で、「変化」に対する不安も大きいパターンです。特に長年連れ添った夫婦の場合、離婚後の生活がイメージできず、経済的不安や孤独への恐れから現状にとどまることを選びがちです。

この葛藤は特に、専業主婦や収入差が大きいカップルに多く見られます。変化を恐れるあまり、不満を抱えたまま関係を続けることで、さらに関係性が悪化するという悪循環に陥りやすい傾向があります。

愛情と失望の繰り返し

「やっぱり愛している」と感じる瞬間と「もう無理だ」と思う瞬間が交互に訪れるパターンです。パートナーが時々見せる優しさや思いやりに希望を感じる一方で、繰り返される問題行動に絶望を感じる状態です。

私のカウンセリングでも、「優しい時もあるから離婚を決断できない」という声をよく聞きます。この揺れ動く感情が、決断を先延ばしにする要因になっていることが多いのです。

子どものためと自分のためのジレンマ

「子どものためには家族を維持すべき」という思いと、「自分の幸せも大切にしたい」という気持ちの間で揺れ動くパターンです。特に小さなお子さんがいる場合、この葛藤は非常に強くなります。

文部科学省の調査によると、親の離婚は子どもの心理的安定に一定の影響を与える可能性があることが示されています。しかし同時に、不和の続く家庭環境も子どもに負担をかけるという事実もあります。

過去の思い出と現在の不満の対立

「あの頃は良かった」という過去の思い出と、現在の関係への不満が対立するパターンです。結婚当初の幸せな記憶が、現在の関係を終わらせる決断を難しくしています。

特に、交際期間や新婚時代に強い絆を感じていたカップルほど、この葛藤が強く現れる傾向があります。「あの頃の関係に戻れるのでは」という期待が、決断を先延ばしにする原因となっているのです。

1-3.離婚を考えるべきか判断するための5つのチェックポイント

「本当に離婚すべきなのか」「まだ関係を修復する余地はあるのか」。この判断は非常に難しいものです。しかし、いくつかの重要なポイントを確認することで、より冷静な判断ができるようになります。

離婚を考えるべきか判断するための5つのチェックポイント
  • パートナーの問題行動が改善する可能性があるか
  • 関係の中に肯定的な瞬間がまだ存在するか
  • コミュニケーションがまだ可能か
  • 自分自身の心身の健康状態はどうか
  • 離婚と修復、どちらのシナリオにも向き合えているか

ここから、それぞれのチェックポイントについて詳しく説明していきます。

パートナーの問題行動が改善する可能性があるか

離婚を考える最大の理由は、多くの場合「相手の言動」にあります。その問題行動が一時的なものか、本質的なものかを見極めることが重要です。

例えば、仕事のストレスによる一時的な態度の変化なのか、あるいは長年続く人格的な問題なのかを区別しましょう。また、過去に問題を指摘したときの反応も重要な判断材料となります。真摯に受け止め、改善しようとする姿勢が見られたかどうかで、今後の可能性も変わってきます。

関係の中に肯定的な瞬間がまだ存在するか

日常の中で、まだ笑顔で会話できる瞬間や、お互いを思いやる行動が残っているかどうかを振り返ってみましょう。完全に否定的な感情だけで満たされた関係は、修復が難しい場合があります。

しかし、怒りや失望の中にも、時折見せる相手の優しさや思いやりに心が動くことがあるなら、まだ関係を見直す余地があるかもしれません。私のカウンセリングでも、「悪いところばかりではない」と気づくことが、関係改善の第一歩になることがよくあります。

コミュニケーションがまだ可能か

お互いの気持ちや考えを伝え合うことが、まだ可能かどうかも重要なポイントです。意見の相違はあっても、最低限の会話ができるかどうかで、修復の可能性は大きく変わります。

会話が常に攻撃や無視、沈黙に終わるようであれば、専門家の助けを借りることも検討すべきでしょう。一方、「話せば分かる部分もある」と感じられるなら、コミュニケーションの質を改善する余地があります。

自分自身の心身の健康状態はどうか

この関係を続けることで、あなた自身の健康や精神状態が深刻に損なわれていないかを確認することも大切です。不眠や食欲不振、うつ症状などが続いている場合は、まず自分の健康を優先すべきかもしれません。

「子どものため」「世間体のため」と自分を犠牲にし続けることは、長期的に見て誰の幸せにもつながりません。自分が心身ともに健康でいることが、家族全体の幸せにつながるという視点も大切です。

離婚と修復、どちらのシナリオにも向き合えているか

最後に、「関係が修復された場合」と「離婚した場合」の両方のシナリオを、現実的に想像できているかどうかも重要です。どちらの道を選んでも困難は伴います。

離婚後の生活や経済面、子どもへの影響などを現実的に考えられているでしょうか。また、関係修復のために必要な時間や労力、お互いの変化についても想像できているでしょうか。どちらの選択肢も理想化せず、現実的に向き合うことが、後悔のない決断につながります。

2.夫婦関係の根本的な問題を見極める方法

ここまでに「離婚したくないけど離婚したい」という気持ちの整理や、離婚を考えるべきかどうかを判断するためのチェックポイントについて見てきました。さらに一歩踏み込んで、ここからは夫婦関係の根本にある問題を見極めるための方法をご紹介します。

離婚を考えるほどの危機に直面している場合、表面的な不満の奥にある根本的な問題を見極めることが大切です。この章では、関係の本質的な課題を理解し、自分自身の本音を知るための方法をご紹介します。

2-1.表面的な不満と根本的な問題の違い

私たちが日常的に感じる「不満」は、実は氷山の一角に過ぎないことが多いのです。表面に現れる言動の背後には、より深い問題が隠れています。

下図は、夫婦間の問題を「氷山モデル」で表したものです。水面上に見える部分(表面的な不満)の下には、より大きな根本的な問題が隠れています。真の解決のためには、この水面下にある問題にアプローチする必要があります。

夫婦問題の氷山モデル

例えば、「家事を手伝ってくれない」という不満の裏には、「私の努力や苦労を認めてくれない」「家族としての責任を共有してくれない」という根本的な問題が潜んでいることがあります。また、「会話がない」という不満の背後には、「精神的なつながりが失われている」「お互いへの関心が薄れている」という本質的な問題があるかもしれません。

表面的な不満に対処するだけでは、一時的に関係が改善したように見えても、根本的な問題が解決されなければ、再び同じパターンに戻ってしまいます。真の解決のためには、目に見える不満の奥にある根本的な問題に目を向ける必要があるのです。

「どうして私の話を聞いてくれないの?」といった不満が繰り返し生じる場合、単に「話を聞く」という行動だけでなく、「尊重されたい」「理解されたい」というニーズを満たすための深い対話が必要になります。

2-2.自分の本音を知るための自己分析法

離婚を考えるほどの状況では、自分自身の気持ちさえも混乱していることがあります。自分が本当は何を望んでいるのか、何に傷ついているのかを明確にすることから始めましょう。

自分の本音を知るための3つの方法
  • 感情日記をつける
  • 「なぜ」を5回繰り返す
  • 第三者の視点で考える

それでは、これらの方法について詳しく見ていきましょう。

感情日記をつける

毎日の感情や出来事を書き留めることで、自分の感情のパターンを客観的に見ることができます。特に「パートナーに対してどんな感情を抱いたか」「どんな時に幸せや安心を感じるか」「どんな言動に傷つくか」などを記録してみましょう。

日記をつける際は、事実と感情を分けて書くことがポイントです。「夫が晩酌をしながらスマホを見ていた(事実)」「無視されていると感じて悲しくなった(感情)」というように区別すると、より客観的に状況を理解できるようになります。

「なぜ」を5回繰り返す

自分の感情や欲求の根源を探るには、「なぜ」という問いを繰り返す方法が効果的です。例えば、

  • 「なぜ離婚を考えるのか?」→「パートナーとの会話がないから」
  • 「なぜ会話がないことが問題なのか?」→「孤独を感じるから」
  • 「なぜ孤独が辛いのか?」→「大切にされていないと感じるから」
  • 「なぜ大切にされていないと感じるのか?」→「自分の存在価値を認めてもらえていないと思うから」
  • 「なぜ存在価値を認めてもらいたいのか?」→「自分自身を肯定したいから」

このように掘り下げていくと、表面的な不満の奥にある本質的なニーズが見えてきます。この例では、「会話がない」という表面的な問題の裏に、「自己肯定感」という深い心理的ニーズがあることがわかります。

第三者の視点で考える

自分の状況を、あたかも親しい友人の悩みであるかのように想像してみましょう。「もし親友がこんな状況にいたら、どんなアドバイスをするだろうか?」という視点で考えることで、感情に流されない冷静な判断ができるようになります。

また、5年後、10年後の自分が今の選択をどう評価するかを想像することも有効です。「このまま関係を続けた場合」と「別の道を選んだ場合」の両方について、未来の自分はどう感じるかを考えてみましょう。

2-3.相手の本当の気持ちを理解するためのヒント

夫婦間の問題解決において、相手の本音を理解することも同じく重要です。しかし、お互いに防衛的になっていると、真の気持ちが見えにくくなっています。

相手の言動の背後にある気持ちを理解するためには、以下の点に注目してみましょう。言葉だけでなく、行動や態度からも多くの情報を読み取ることができます。

まず、相手の行動パターンに注目してください。例えば、「仕事で忙しい」と言い続ける夫には、「仕事に逃げている」という見方もできますが、別の視点では「家族を養うためにプレッシャーを感じている」という気持ちが隠れているかもしれません。

次に、相手の育った環境や価値観を考慮しましょう。感情表現が苦手な人は、必ずしも愛情がないわけではなく、単に感情を表現する方法を学んでこなかった可能性があります。「言わなくてもわかるはず」という思い込みが、多くの誤解を生んでいることもあります。

また、ストレスや疲労が行動に与える影響も無視できません。仕事や育児のストレスが溜まっているとき、私たちは本来の自分らしさを失いがちです。一時的な態度と本質的な部分を区別することも大切です。

相手を「理解しよう」とする姿勢自体が、関係改善の重要な第一歩となります。理解することは、必ずしも同意することではありません。相手の視点に立って考えることで、対立ではなく対話へと進む道が開けてくるのです。

3.一人でもできる!夫婦関係を改善するための実践ステップ

ここまで夫婦関係の根本的な問題を見極める方法について考えてきました。問題の本質が見えてきたところで、次は具体的な行動に移るステップです。夫婦関係の改善は本来、二人で取り組むものですが、現実には相手の協力が得られないケースも多いものです。

しかし、20年以上の夫婦カウンセリングの経験から言えることは、まず一人が変わることで、関係全体が変わりうるということです。ここからは、パートナーの協力がなくても、あなた一人で始められる具体的な実践ステップをご紹介します。

3-1.【Step1】自分の感情と向き合う

関係改善の第一歩は、自分自身の感情と正直に向き合うことです。怒り、悲しみ、失望、恐れ—これらの感情を抑え込まず、しっかりと認識しましょう。

感情を認めることは、決して弱さの表れではありません。むしろ、自分の内面に誠実に向き合う強さの表れです。「こんなことで悲しむなんておかしい」「怒ってはいけない」といった自己検閲は手放しましょう。

感情日記をつけることは、この自己理解に大いに役立ちます。毎日数分でも、自分が感じたことを書き留めてみてください。特に強い感情が湧いた出来事とその時の自分の反応を記録すると、次第に自分の感情パターンが見えてきます。

感情との向き合い方が分かると、相手の言動に対する自分の反応をコントロールできるようになります。これは決して「我慢する」ということではなく、感情に振り回されずに建設的な対応ができるようになるということです。

3-2.【Step2】コミュニケーションの質を変える

夫婦関係の多くの問題は、コミュニケーション不全から生じています。相手の協力なしでも、あなたから会話のパターンを変えることで、徐々に関係性を改善できる可能性があります。

効果的なコミュニケーションの変え方
  • 「私メッセージ」を活用する
  • 「聞く」から「聴く」への転換
  • 質問を通して関心を示す
  • 非言語コミュニケーションを意識する

それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。

「私メッセージ」を活用する

日常会話における「私メッセージ」の活用から始めましょう。「あなたはいつも…」と相手を非難する代わりに、「わたしは~と感じる」と自分の気持ちを伝えるスタイルです。

例えば、「あなたは約束を守らない」ではなく、「約束が守られないと、信頼されていないように感じて悲しくなります」と伝えるのです。これにより、相手は防衛的になりにくく、あなたの気持ちに耳を傾けやすくなります。

「聞く」から「聴く」への転換

相手の話を「聞く」ことから「聴く」ことへの転換も重要です。相手の言葉を遮らず、自分の考えを押し付けず、まずは相手の立場に立って理解しようとする姿勢を示しましょう。

「それで、あなたはどう感じたの?」と、相手の感情に関心を示す問いかけも効果的です。相手が話している間は、目を見て、うなずきながら、全身で「あなたの話を聴いています」という姿勢を示すことが大切です。

質問を通して関心を示す

相手の話に対して、さらに質問することで関心を示しましょう。「それでどうなったの?」「その時どう感じたの?」といった質問は、相手に「私の話に興味を持ってくれている」と感じさせます。

特に、パートナーの日常や関心事について尋ねることで、「あなたのことを大切に思っている」というメッセージを伝えることができます。表面的な会話から始めて、徐々に深い対話へと発展させていきましょう。

非言語コミュニケーションを意識する

言葉だけでなく、表情やジェスチャー、声のトーンなどの非言語コミュニケーションも重要です。冷たい表情や態度では、どんなに良い言葉を使っても相手に伝わりません。

温かい表情、適度なアイコンタクト、相手に向き合う姿勢など、全身で「あなたを大切に思っている」というメッセージを伝えましょう。非言語コミュニケーションは言葉以上に強いメッセージを伝えることがあります。

日々の小さな会話から、このようなコミュニケーションスタイルを意識して実践することで、少しずつ会話の質が変わっていくのを感じるでしょう。

3-3.【Step3】小さな変化から始める

関係改善は、一気に大きく変えようとするよりも、小さな変化の積み重ねが効果的です。すぐに実践できる「小さな変化」から始めてみましょう。

すぐに始められる小さな変化の例
  • 一日に一つ、心からの感謝や肯定的な言葉を伝える
  • 触れ合いの機会を意識的に増やす(軽く肩に触れる、手を握るなど)
  • 自分から挨拶や会話を始める習慣をつける
  • 相手の好きなことに関心を示す
  • 些細な思いやりの行動を日常に取り入れる

これらの小さな変化について、もう少し詳しく見ていきましょう。

一日に一つ、心からの感謝や肯定的な言葉を伝える

「ありがとう」「助かった」「嬉しい」といった肯定的な言葉を意識的に増やしましょう。長年の関係では当たり前になってしまうことも多いですが、相手の行動や存在に対する感謝の気持ちを口に出すことで、関係の雰囲気は少しずつ変わります。

たとえごく当たり前のことでも、「いつも子どもの送り迎えをしてくれてありがとう」「今日の夕食、とても美味しかった」など、具体的に伝えることがポイントです。

触れ合いの機会を意識的に増やす

長く一緒にいると、スキンシップが減ってしまうことがあります。肩や腕に軽く触れる、すれ違いざまに手を握る、帰宅時にハグするなど、小さな触れ合いを意識的に増やしてみましょう。

身体的な接触は「オキシトシン」と呼ばれる絆ホルモンの分泌を促し、心理的な距離感を縮める効果があります。相手の反応を見ながら、自然な形で触れ合いの機会を作ってみてください。

自分から挨拶や会話を始める習慣をつける

「おはよう」「お帰り」といった基本的な挨拶を、心を込めて行うことから始めましょう。また、相手の日常に関心を持ち、「今日はどうだった?」と聞くことも大切です。

会話が少なくなっている関係では、まず「話せる状態」を作ることが先決です。難しいテーマや問題については一旦置いておき、日常の小さな会話を増やすことから始めましょう。

相手の好きなことに関心を示す

パートナーの趣味や関心事に、たとえそれが自分の興味と異なるものであっても、関心を示してみましょう。「最近のお気に入りは何?」と質問したり、相手が熱中していることについて話を聞いたりすることで、相手は「自分に関心を持ってくれている」と感じるでしょう。

単に「いいね」と言うだけでなく、「どうしてそれが好きなの?」「最初はどうやって始めたの?」など、掘り下げる質問をすることで、より深い会話につながります。

些細な思いやりの行動を日常に取り入れる

「相手が飲み物を持ってきてくれたら、次は自分が準備する」「相手が忙しそうなら、普段は任せている家事を手伝う」など、小さな思いやりの行動を増やしましょう。

これらの行動は一つ一つは小さいですが、継続することで大きな変化をもたらします。「相手が変わらなければ自分も変わらない」という姿勢ではなく、まず自分から行動を起こすことで、関係のパターンを少しずつ変えていくことができるのです。

3-4.【Step4】境界線を設定する

相手を思いやり、関係改善に努めることは大切ですが、同時に自分自身を守るための「境界線」を設定することも重要です。境界線とは、自分がどこまで許容できて、どこからは受け入れられないかを明確にすることです。

境界線を設定する3つのステップ
  • 自分が受け入れられないものを明確にする
  • 境界線を穏やかに、しかし明確に伝える
  • 境界線が守られなかった場合の対応を決めておく

それぞれのステップについて詳しく見ていきましょう。

自分が受け入れられないものを明確にする

まず、自分が受け入れられないものを明確にすることから始めましょう。例えば、暴言、物を投げる行為、長時間の無視などが挙げられます。これらは「これ以上は許容できない」という自分なりのラインです。

自分の感情や価値観を振り返り、「これは絶対に受け入れられない」「これは傷つく」というものをリストアップしてみましょう。自分の限界を知ることは、自己理解と自己保護の第一歩です。

境界線を穏やかに、しかし明確に伝える

次に、その境界線を穏やかに、しかし明確に伝えることです。感情的になるのではなく、「〇〇されると、とても傷つきます。これからはそのような言動をしないでほしいです」というように、具体的に伝えましょう。

「I(私)メッセージ」を使い、相手を責めるのではなく、自分の気持ちを中心に伝えることがポイントです。また、適切なタイミング(穏やかな気持ちの時)を選ぶことも大切です。

境界線が守られなかった場合の対応を決めておく

そして最後に、境界線が守られなかった場合の対応を決めておくことです。例えば、暴言が出たら「今は話し合える状態ではないので、落ち着いてから話しましょう」と言って、その場を離れるなどの対応が考えられます。

これは「脅し」ではなく、自分自身の心を守るための健全な自己防衛です。相手を変えようとするのではなく、自分の反応を変えることで、関係のパターンを少しずつ変えていくことができます。

境界線を設定することは、自分を大切にすることであり、同時に健全な関係を築くための基盤にもなります。自分の心と身体の安全を確保することは、どんな関係においても最優先されるべきことなのです。

3-5.【Step5】専門家のサポートを得る

ここまでの努力をしても関係が改善しない、または一人での取り組みに限界を感じる場合は、専門家のサポートを検討するタイミングかもしれません。実は、夫婦関係の修復において、専門家の介入は非常に効果的なことが多いのです。

カウンセリングは必ずしも二人で受ける必要はありません。一人でカウンセリングを受けることで、自分の対応を変え、結果として関係全体が改善することも十分ありえます。私の経験では、最初は一人で来談され、その後関係が改善し、最終的にパートナーも一緒にカウンセリングに来られるケースも少なくありません。

専門家のサポートを受けるメリット
  • 第三者の客観的な視点が得られる
  • 感情的な対話を安全に進行できる
  • 具体的な改善策や実践法を提案してもらえる
  • 自分の盲点や思考パターンに気づける
  • 専門的知識に基づいた的確なアドバイスが受けられる

それぞれについて、もう少し詳しく説明しましょう。

第三者の客観的な視点が得られる

専門家は、二人の関係を客観的に見ることができます。当事者同士では気づきにくい関係性のパターンや、コミュニケーションの問題点を指摘してもらえるため、新たな気づきが得られます。

「これは夫婦間ではよくあるパターンです」と言われるだけでも、「自分たちだけがこんな問題を抱えているわけではない」と安心できることがあります。

感情的な対話を安全に進行できる

専門家が進行役となることで、普段は感情的になってしまうような話題でも、冷静に話し合うことができます。相手の話を最後まで聞く、一方的に責めない、といったルールの中で対話ができるのは、専門家の場があるからこそです。

カウンセリングの場は「安全な場」として機能し、普段は言えない本音を伝え合うことができます。

具体的な改善策や実践法を提案してもらえる

専門家は、これまでに多くの夫婦の問題解決をサポートしてきた経験から、あなたの状況に合った具体的なアドバイスや実践法を提案することができます。

「今度はこのような言い方を試してみてください」「次にこのような状況になったら、こう対応してみましょう」といった具体的な提案は、実践しやすく効果も実感しやすいものです。

自分の盲点や思考パターンに気づける

自分では気づいていない思考パターンや行動の癖に目を向けるきっかけになります。例えば、「あなたは相手の言葉を文字通りに受け取りすぎているかもしれませんね」「あなたは相手に完璧を求めていませんか?」などの指摘は、自己理解を深める重要な契機となります。

自己洞察が深まることで、相手への理解も深まり、関係改善につながります。

専門的知識に基づいた的確なアドバイスが受けられる

専門家は心理学、脳科学、コミュニケーション理論などの専門知識を持っています。「なぜそのような反応が起こるのか」「どうすれば効果的に気持ちを伝えられるか」といった疑問に、科学的根拠に基づいた説明やアドバイスを受けることができます。

理論的な裏付けがあることで、「なぜそうすべきなのか」を理解した上で行動を変えることができ、より効果的な変化が期待できます。

一人で抱え込まず、専門家の力を借りることも、関係改善への重要なステップなのです。カウンセリングは「問題がある人が行くもの」ではなく、より健全で幸せな関係を築くためのサポートと捉えてみてください。

4.どんな選択をしても自分を責めないための心の守り方

ここまで、一人でもできる夫婦関係の改善ステップについて解説してきました。しかし、これらの努力をしても状況が変わらない場合もあります。そんな時、どんな決断をするにせよ、自分自身の心を守ることが何より大切です。

これまで見てきたように、夫婦関係の修復には様々なアプローチがあります。しかし、すべての関係が必ず修復できるわけではありません。どのような選択をするにせよ、最も大切なのは自分自身の心を守ることです。

この章では、どんな決断をしても後悔しないための心の持ち方と、自分自身を大切にする方法について考えていきましょう。

4-1.自己肯定感を保つための3つの習慣

夫婦関係の危機に直面すると、「自分に価値がない」「自分が悪いからこうなった」といった自己否定的な思考に陥りがちです。しかし、どんな状況であれ、あなたの価値は変わりません。自己肯定感を保つための習慣を身につけましょう。

自己肯定感を保つための3つの習慣
  • 自分の小さな成功や長所を認める習慣
  • 自分を大切にする時間を確保する習慣
  • 感謝の気持ちを持つ習慣

以下は罫線で表した自己チェックシートです。

自己肯定感を高めるための毎日のチェックシート
日付:___________
【1】今日の自分の成功や良い行動(小さなことでも構いません)


【2】自分を大切にするために今日行ったこと
【3】今日感謝できること3つ


【4】自分への前向きなメッセージ
このシートを毎日活用することで、自分を認め、大切にする習慣が身につきます。特に辛い時期こそ、自分を労わる時間を作りましょう。

それぞれの習慣について詳しく見ていきましょう。

自分の小さな成功や長所を認める習慣

毎日、自分が達成したことや自分の良い面を具体的に書き出す習慣をつけましょう。例えば「今日は子どもの宿題を根気よく手伝えた」「同僚に親切にできた」など、小さなことでも構いません。

批判的な内なる声に支配されがちな時こそ、意識的に自分の良い面に目を向けることが大切です。「自分にはこんな強みがある」「こんな価値がある」と自分に言い聞かせることで、徐々に自己肯定感が高まっていきます。

自分を大切にする時間を確保する習慣

日々の忙しさの中で、自分のための時間を意識的に作りましょう。好きな本を読む、趣味に没頭する、友人と会う、ただ静かに過ごす—どんな形でも構いません。

特に関係の悩みが深刻な時ほど、「自分を充電する時間」が必要です。自分を大切にする時間を持つことは、「わがまま」ではなく、心身の健康を保つための必要なケアです。そして、自分を大切にできる人こそ、他者も大切にできるのです。

感謝の気持ちを持つ習慣

毎日、感謝できることを3つ挙げる習慣をつけましょう。例えば「健康であること」「屋根のある家に住めること」「美味しい食事ができること」など、当たり前に思えることにも感謝の目を向けます。

苦しい状況にあるときこそ、まだ自分の人生に存在する良いものに目を向けることが、精神的な回復力を高めます。感謝の習慣は、困難な状況においても希望を見出す力を養います。

4-2.離婚を選んだ場合の心の準備と対処法

様々な努力をしても関係の修復が難しく、離婚を選択する場合もあるでしょう。そのような決断に至った場合でも、自分を責める必要はありません。ここでは、離婚という選択をした場合の心の準備について考えていきます。

離婚を選んだ場合の心の準備
  • 「失敗」ではなく「一つの選択」として捉え直す
  • 喪失感と向き合う
  • サポートネットワークを構築する
  • 自分なりの癒しの儀式を行う
  • 新しい生活への具体的な計画を立てる

それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。

「失敗」ではなく「一つの選択」として捉え直す

まず大切なのは、「失敗」ではなく「一つの選択」として捉え直すことです。離婚は人生の終わりではなく、新たな始まりでもあります。「理想の結婚生活を実現できなかった」と自分を責めるのではなく、「お互いの成長のために必要な決断だった」と捉え直すことで、前向きな気持ちを持つことができます。

離婚率が約35%という現実を考えても、離婚は決して稀なことではありません。多くの人が同じ道を歩み、新たな人生を切り開いています。あなたもその一人になれるのです。

喪失感と向き合う

次に、喪失感と向き合うことも重要です。離婚は、パートナーだけでなく、「夫婦」としてのアイデンティティ、将来の計画、場合によっては共通の友人関係などの喪失を伴います。このような喪失に対する悲しみや怒りは自然な感情であり、無理に抑え込む必要はありません。

感情を否定せず、「今は悲しくて当然だ」と自分に許可を与えましょう。感情に向き合い、それを通過することで、少しずつ心が癒されていきます。

サポートネットワークを構築する

そして、サポートネットワークを構築することも大切です。信頼できる家族や友人、専門家のサポートを積極的に求めましょう。「一人で何とかしなければ」と抱え込まず、必要なときには助けを求める勇気を持つことが、回復への近道となります。

また、同じ経験をした人々のサポートグループなどに参加することも検討してみてください。共通の経験を持つ人々との交流は、大きな励みになります。

自分なりの癒しの儀式を行う

さらに、自分なりの癒しの儀式を行うことも効果的です。例えば、手紙に気持ちをつづって燃やす、思い出の品を整理する、新しい家に引っ越すなど、区切りをつける行動は、心理的な回復を助けます。自分なりの「けじめ」をつけることで、次のステージに進む準備ができるのです。

小さな儀式でも構いません。大切なのは、「ここから新しい人生が始まる」という意識を持つことです。

新しい生活への具体的な計画を立てる

最後に、新しい生活への具体的な計画を立てることも忘れないでください。住まいや仕事、経済面、子どもがいる場合は親権や面会交流など、現実的な問題に一つずつ向き合い、計画を立てていくことで、不安が軽減されます。

また、趣味や学びなど、自分自身の成長や喜びにつながる活動を計画に入れることも大切です。「これからの人生で実現したいこと」をリストアップして、少しずつ取り組んでいきましょう。

離婚は終わりであると同時に、新しい始まりでもあります。悲しみや喪失感を経て、自分自身を再発見し、新たな人生を築いていく機会として捉えてみてください。

4-3.どんな状況でも幸せを見出す力の育て方

人生には様々な困難がありますが、どんな状況においても幸せを見出す力を育てることができます。この「回復力」こそが、離婚か修復かという選択以上に、あなたの幸福にとって重要なものです。

まず、「幸せ」の定義を見直してみることから始めましょう。多くの人が「完璧な結婚生活」「理想的なパートナー」といった外部の条件に幸せを求めがちですが、真の幸せは外部環境よりも内面の状態に大きく依存します。

どんな状況でも、「今日という一日を生きられること」「呼吸ができること」「小さな美しさに気づけること」に幸せを感じられる視点を養うことで、人生の様々な局面で心の平安を保つことができます。

次に、「成長」の視点を持つことも大切です。困難な経験を単なる「不幸」ではなく、「成長の機会」と捉え直すことで、どんな経験からも学びを得ることができます。「この経験から何を学べるか」「この状況を通して、どんな強さを得られるか」と問いかけてみましょう。

そして、「貢献」の喜びを知ることも、幸せを見出す大きな鍵となります。自分以外の誰かのために何かをすること、社会に貢献することで、自分の問題から視点が広がり、より大きな満足感を得ることができます。

最後に、「今ここ」に集中する姿勢も重要です。過去の後悔や将来の不安に心を奪われると、目の前の幸せを見逃してしまいます。「マインドフルネス」と呼ばれる、今この瞬間に意識を向ける習慣を身につけることで、日常の中の小さな喜びに気づく力が養われます。

これらの姿勢は、離婚を選んだ場合にも、修復を選んだ場合にも、あなたの人生をより豊かにする力となるでしょう。

まとめ:あなたの人生を前向きに切り開くために

ここまで「離婚したくないけど離婚したい」という複雑な気持ちの整理から、夫婦関係の問題を見極める方法、一人でもできる改善ステップ、そして自分の心を守る方法まで、様々な視点からお伝えしてきました。最後に、あなたの今後の人生をより豊かに、前向きに切り開いていくためのメッセージをお伝えします。

まず、あなたの感情はすべて正当なものであるということを心に留めておいてください。「離婚したくない」という気持ちも、「もう耐えられない」という気持ちも、どちらも否定する必要はありません。それらは単に、あなたの中の異なる部分からの声なのです。

次に、どんな決断をしても、それは「正解」か「不正解」ではないということを理解してください。人生には明確な正解がないからこそ、自分の価値観に基づいた選択をする勇気が必要です。どんな選択をしても、そこからの学びと成長があり、新たな可能性が広がっています。

そして、変化は一人から始められるということを忘れないでください。相手が変わるのを待つのではなく、自分自身の反応やコミュニケーションを変えることで、関係全体のパターンを変えることができます。一人一人の小さな変化が、結果として大きな変化をもたらすのです。

最後に、専門家のサポートを求めることは、決して弱さの表れではないということをお伝えしたいと思います。むしろ、必要なときに助けを求める勇気こそが、真の強さの証です。夫婦関係で悩みを抱えているなら、専門家のサポートを検討してみてください。

私たちは、あなたがどのような選択をするにせよ、その道のりをサポートする準備があります。一人で抱え込まず、必要なときにはぜひ専門家の力を借りてください。あなたの人生が、これからもっと輝きに満ちたものになることを心から願っています。

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