離婚したくない!という思いを抱えながら、途方に暮れている方もいるでしょう。突然パートナーから離婚を切り出され、何をどうすれば良いのか分からず、不安と恐怖でいっぱいになっているかもしれません。
私は夫婦関係修復コーチとして20年以上、1万組を超える夫婦の関係修復をサポートしてきました。その経験から言えるのは、離婚の危機は必ずしも関係の終わりを意味するものではないということです。むしろ、この危機を乗り越えることで、以前よりも強い絆で結ばれた関係を築けることも少なくありません。
内閣府男女共同参画局のデータによると、日本では年間約18万件の離婚が発生していますが、その一方で多くの夫婦が危機を乗り越え、関係を修復しています。あなたも決して孤独ではありません。この記事では、離婚危機に直面したときの具体的な対応策から、関係修復のための実践的ステップまでをお伝えします。
- 離婚を回避するための緊急対応策と法的手段
- パートナーの心理を理解し関係修復に向かうアプローチ法
- 配偶者の心を取り戻すための5つの実践ステップ
- 離婚危機を乗り越えた先にある新たな関係構築の方法
- 一人でも始められる夫婦関係改善のための具体的な行動計画
1.離婚を回避するための緊急対応策
パートナーから突然「離婚したい」と言われたとき、まずは冷静に対応することが最も重要です。感情的になって相手を責めたり、すがりついたりすることは逆効果となりがちです。ここでは、離婚の危機に直面したときに、すぐに実行できる具体的な対応策をお伝えします。
1-1.離婚を切り出されたときの冷静な対応法
パートナーから離婚を切り出されたとき、多くの人は動揺して感情的な反応をしてしまいます。しかし、その瞬間の対応が今後の展開を大きく左右します。まずは深呼吸をして冷静さを保つことが何よりも大切です。
「分かった、話し合おう」と伝え、その場で結論を急がないようにしましょう。「考える時間が欲しい」と伝えることで、お互いが冷静に考える余裕を作ることができます。感情的にならず、相手の話をじっくり聞く姿勢を見せることが、関係修復の第一歩となります。
1-2.離婚届不受理申出書の活用方法
もしパートナーが一方的に離婚届を提出しようとしている場合、「離婚届不受理申出書」を活用することができます。これは、配偶者が勝手に離婚届を出すことを防ぐための法的手段です。
申出書は各市区町村の戸籍課で入手でき、提出後は6ヶ月間(延長も可能)、離婚届が受理されなくなります。この間に冷静な話し合いや調停などの手続きを進めることができます。ただし、これはあくまで時間を稼ぐための一時的な手段であり、根本的な関係修復のためには別のアプローチも必要です。
1-3.夫婦関係調整調停(円満調停)の申立て方
話し合いが難しい状況であれば、家庭裁判所の「夫婦関係調整調停(円満調停)」を利用する方法もあります。これは離婚を目的としたものではなく、夫婦関係の修復を目指す調停です。
申立ては居住地を管轄する家庭裁判所で行えます。費用は収入印紙代1,200円と郵便切手代(裁判所により異なる)のみです。調停では、裁判官と調停委員が中立的な立場から夫婦間の問題解決をサポートしてくれます。第三者の介入により、二人だけでは難しい問題の整理や解決の糸口が見つかることもあります。
以下の図は、夫婦関係調整調停(円満調停)の申立てから解決までの流れを示しています。手続きの見通しが立つことで、不安も軽減されるでしょう。

1-4.法的に離婚を拒否できる条件
日本の法制度では、協議離婚以外の離婚(調停離婚・裁判離婚)において、一定の条件下では離婚を拒否できる場合があります。特に重要なのは「有責配偶者からの離婚請求」の場合です。
離婚を拒否できる主な条件としては、以下のようなケースが該当します。
- 離婚原因を作った側(浮気や暴力など)からの離婚請求である
- 離婚によって経済的に著しく困難な状況に陥る可能性がある
- 子どもの福祉に重大な影響がある場合
- 婚姻を継続する意思があり、関係修復の可能性がある場合
特に「有責配偶者」の概念は重要です。浮気や暴力など婚姻関係を破綻させた原因を作った側からの離婚請求は、原則として認められません。また、離婚によって子どもの生活環境や教育環境が著しく悪化する場合なども、裁判所は慎重な判断を下します。ただし、これらはあくまで法的な側面であり、長期的には関係修復に向けた取り組みが必要です。
1-5.離婚危機における専門家への相談タイミング
離婚危機に直面したとき、いつ専門家に相談すべきかは重要な判断ポイントです。基本的には、早い段階での相談が効果的です。
特に以下のような状況では、専門家への相談を検討しましょう。
- パートナーとの対話が完全に途絶えた場合
- 感情的な対立が激しく冷静な話し合いができない状況
- 法的な手続きについて不安や疑問がある場合
- 自分の精神状態が不安定になっている場合
- 子どもへの影響が心配される場合
私のカウンセリングでも、「もう手遅れかと思った」という段階から関係修復に成功した夫婦は数多くいます。専門家は客観的な視点と専門知識で、あなたが気づかなかった解決策を提案できることがあります。また、弁護士とカウンセラーでは提供できるサポートが異なるため、状況に応じて適切な専門家を選ぶことが大切です。いつでも相談できる専門家を見つけておくことは、安心感にもつながります。
2.相手の気持ちを理解し関係修復に向かう心理的アプローチ
法的な対応策を知ることも重要ですが、真の関係修復のためには、パートナーの気持ちを理解し、心理的なアプローチで関係を改善していくことが欠かせません。この章では、前章で説明した緊急対応策の次に取り組むべき、相手の心理を理解し、効果的なコミュニケーションを通じて関係修復に向かうための方法をお伝えします。
2-1.パートナーが離婚を考える心理的背景
パートナーが離婚を考える理由は、表面的なきっかけだけでなく、長期間にわたって積み重なった不満や失望感が根底にあることがほとんどです。この心理的背景を理解することが、関係修復の第一歩となります。
多くの場合、「話を聞いてもらえない」「理解されていない」「尊重されていない」という感覚が離婚を考えるきっかけとなります。相手が具体的に挙げる離婚理由(「価値観の違い」「性格の不一致」など)は、こうした根本的な感情の表れであることが少なくありません。相手の言葉の背後にある感情や欲求を理解しようとする姿勢が大切です。
2-2.効果的なコミュニケーション方法
関係修復のためには、相手の話をしっかりと「聴く」姿勢が何より重要です。ここで大切なのは、反論や弁解をせずに、まずは相手の気持ちを受け止めることです。
効果的なコミュニケーションを実現するためのポイントをいくつかご紹介します。
- 「あなたの気持ちを理解したい」という姿勢を示す
- 相手が話している間は遮らずに最後まで聞く
- 「それで辛かったんだね」など共感の言葉を返す
- 自分の意見を言う前に相手の気持ちを要約して確認する
- 非難や批判の言葉は使わない
特に重要なのは、「聴く」姿勢です。私たちは往々にして「聞く」ことと「聴く」ことを混同しがちですが、その違いは大きいものです。単に言葉を耳に入れるだけでなく、相手の感情や背景にある思いまで理解しようとする姿勢が「聴く」ということです。自分の言い分を主張するのは、相手の気持ちをしっかり受け止めた後にしましょう。
2-3.相手の怒りを鎮め心を開いてもらうための会話術
パートナーが怒りや不満を抱えている場合、まずはその感情を正当なものとして認めることが大切です。「そんなことで怒るなんておかしい」という否定は逆効果です。
効果的なアプローチとしては、「あなたがそう感じるのは当然だと思う」「私の〇〇という行動があなたを傷つけたんだね」と、相手の感情を認め、自分の責任を素直に認めることです。こうした誠実な対応が、相手の心を開く鍵となります。また、過去の問題を蒸し返すのではなく、未来に向けた建設的な提案をするよう心がけましょう。
2-4.離婚危機における自分の感情のコントロール法
離婚危機に直面すると、不安や恐怖、怒りなど様々な感情が湧き上がります。これらの感情に振り回されると冷静な判断ができなくなるため、感情をコントロールする方法を身につけることが重要です。
感情が高ぶったときは、いったんその場を離れて深呼吸をしましょう。また、信頼できる友人や家族に話を聞いてもらうことで、感情の整理ができることもあります。日記を書いて感情を言語化することも効果的です。感情をコントロールできるようになると、相手と建設的な対話ができるようになります。
2-5.信頼回復のための具体的な行動ステップ
信頼は一度失うと取り戻すのに時間がかかりますが、具体的な行動の積み重ねで回復することができます。まずは約束を必ず守ることから始めましょう。
小さな約束でも確実に守ることで、徐々に信頼を回復できます。また、相手の要望や期待に対して「やります」と言うだけでなく、実際に行動で示すことが重要です。さらに、自分の変化を言葉で伝えるのではなく、行動で示し続けることが信頼回復への道です。すぐに結果が出なくても、粘り強く続けることが大切です。
3.配偶者の心を取り戻すための5つの実践ステップ
ここまでは離婚危機における緊急対応や心理的アプローチについてお伝えしてきました。しかし、真の関係修復のためには、具体的な実践ステップを踏む必要があります。私のカウンセリング経験から、多くの夫婦が関係を修復できた実践ステップをお伝えします。これらは、たとえパートナーの協力が得られなくても、あなた一人から始められる方法です。
具体的には、次の5つのステップを順番に実践していくことで、徐々に関係を修復していくことができます。
- 【Step1】自分を見つめ直す
- 【Step2】パートナーの不満を正確に理解する
- 【Step3】小さな変化から始める
- 【Step4】心と行動の一貫性を意識する
- 【Step5】長期的な関係改善計画を立てる
それでは、一つひとつのステップについて詳しく見ていきましょう。
3-1.【Step1】自分を見つめ直す
関係修復の第一歩は、自分自身を客観的に見つめ直すことから始まります。多くの場合、問題の原因を相手だけに求めがちですが、関係は常に双方によって作られるものです。
自分の言動や態度がパートナーにどのような影響を与えていたのかを振り返りましょう。「自分はどのような部分で相手を傷つけていたのか」「何が相手の不満や不安の原因となっていたのか」を正直に考えてみることが大切です。この自己省察の過程で、改善すべき自分の課題が見えてくるはずです。
3-2.【Step2】パートナーの不満を正確に理解する
次に、パートナーの不満や要望を正確に理解することが重要です。ここでのポイントは、表面的な言葉だけでなく、その裏にある感情や欲求を読み取ることです。
「家事を手伝ってほしい」という要望の裏には、「尊重されたい」「パートナーとして認められたい」という欲求があるかもしれません。相手の言葉をただ聞くだけでなく、「それはつまり、どういう気持ちなの?」と掘り下げて聞くことで、真のニーズが見えてきます。このステップでは、判断や反論をせずに、純粋に理解しようとする姿勢が大切です。
3-3.【Step3】小さな変化から始める
パートナーの不満や要望を理解したら、できることから少しずつ変化を始めましょう。大きな変革を一度に起こそうとするのではなく、小さな行動から着実に変えていくことが重要です。
例えば、「もっと話を聞いてほしい」という要望があれば、毎日10分でも会話の時間を作る。「気持ちを分かってほしい」という要望には、相手の話を遮らずに最後まで聞くなど、具体的な行動に落とし込みます。小さな変化でも、継続することで相手に伝わり、信頼回復につながります。
3-4.【Step4】心と⾏動の一貫性を意識する
関係修復において特に重要なのは、言葉と行動の一致です。「変わります」と言いながら実際の行動が伴わなければ、かえって信頼を失います。
心と行動の一貫性を保つためには、無理な約束をしないことが大切です。できることとできないことを明確にし、約束したことは必ず守る。小さなことでも確実に実行することで、徐々に信頼を取り戻すことができます。相手の反応が思うようでなくても、自分の変化を継続することが重要です。
3-5.【Step5】⻑期的な関係改善計画を立てる
関係修復は一朝一夕には実現しません。長期的な視点で関係改善の計画を立てることが大切です。焦らず、着実に進めていくための道筋を考えましょう。
具体的には、「3ヶ月後、半年後、1年後にどのような関係になっていたいか」という目標を設定し、そのために必要な行動計画を立てます。また、定期的に振り返りの時間を持ち、計画の進捗状況を確認しましょう。時には計画を修正することも必要です。重要なのは諦めずに継続することです。
以下のワークシートは、長期的な関係改善計画を立てる際の参考になります。このようなフレームワークを使うことで、具体的な行動に落とし込みやすくなります。ぜひご活用ください。

4.離婚危機を乗り越えた先にある新たな関係構築
これまでの章では、離婚危機に直面したときの対応や関係修復のための実践ステップについてお伝えしてきました。ここからは、危機を乗り越えた先にある可能性、すなわち新たな夫婦関係の構築について考えていきたいと思います。離婚危機は、単なる試練ではなく、より良い関係へと生まれ変わるための貴重な機会でもあるのです。
4-1.危機を成長の機会に変える考え方
離婚危機を経験することは確かに辛いものですが、この危機を個人の成長と関係の深化のための機会と捉えることができます。実際、私のカウンセリングを受けた多くの夫婦が、危機を乗り越えた後に「あの危機があったからこそ、今の関係がある」と振り返っています。
危機に直面したとき、自分自身と向き合い、パートナーとの関係を見つめ直す機会が生まれます。これまで気づかなかった自分の課題や関係のパターンが明確になり、改善への第一歩を踏み出すことができるのです。「なぜこうなったのか」を責任転嫁せずに考えることで、新たな気づきと成長が生まれます。
4-2.より深い絆で結ばれるための日常習慣
危機を乗り越えた後、より深い絆で結ばれるためには日常的な習慣の積み重ねが大切です。多くの夫婦が実践して効果を感じている習慣を、以下にご紹介します。
- 毎日10分でも会話の時間を確保する
- 相手の小さな変化や努力に気づき、感謝の言葉を伝える
- 週に1回はデートの時間を作る
- お互いの気持ちや考えを率直に伝え合う機会を持つ
- 一緒に新しい体験や挑戦をする
毎日の会話の時間を確保することは最も基本的ですが効果的な習慣です。仕事や家事、育児に追われていても、10分でも良いので互いの目を見て話す時間を作りましょう。また、「ありがとう」「助かった」という感謝の言葉は、関係を強化する強力な接着剤となります。新しい体験を共有することで、お互いの新たな一面を発見し、関係に新鮮さをもたらすこともできます。
4-3.二度と離婚の危機に陥らないための予防策
離婚危機を乗り越えた後は、二度と同じ危機に陥らないための予防策を講じることが重要です。以下に効果的な予防策をいくつかご紹介します。
- 定期的なコミュニケーションの機会を設ける
- 小さな不満が大きくなる前に伝え合う習慣をつくる
- 感謝と肯定的な言葉を日常的に交わす
- お互いの変化や成長を認め合う
- 必要に応じて専門家のサポートを受ける
定期的なコミュニケーションの機会を設けることは最も効果的な予防策の一つです。例えば、月に一度は夫婦で外出し、関係の状態について率直に話し合う時間を作りましょう。また、問題は早期発見、早期解決が鉄則です。日々の小さな不満や気になることを溜め込まずに伝え合える関係性を築くことで、大きな問題に発展する前に解決することができます。関係は常に変化していくものであり、継続的なメンテナンスが必要なのです。
4-4.子どもの心を守りながら夫婦関係を改善する方法
子どものいる家庭では、夫婦関係の改善と同時に子どもの心のケアも重要です。厚生労働省の統計によれば、令和5年に親の離婚によって影響を受けた未成年の子どもは16万人以上に上ります。離婚危機は大人だけでなく、子どもにも大きな影響を与えるのです。
夫婦間の対立や緊張を子どもの前で見せないように心がけましょう。問題について話し合う場合は、子どもがいない時間や場所を選ぶことが大切です。また、子どもに対して相手の悪口を言ったり、子どもを味方につけようとする行為は絶対に避けるべきです。子どもの安心感を守りながら、夫婦関係の改善に取り組むバランスが重要です。
以下の表は、子どもの心を守りながら夫婦関係を改善するためのDo(やるべきこと)とDon’t(避けるべきこと)をまとめたものです。これらを意識することで、子どもへの負担を最小限に抑えることができます。

4-5.カウンセリングを活用した効果的な関係修復事例
最後に、専門家のサポートを受けて関係修復に成功した事例をご紹介します。私の20年以上にわたるカウンセリング経験の中から、特に参考になるケースをお伝えします。
ある40代の女性は、夫から突然離婚を切り出されて途方に暮れていました。カウンセリングを通じて、夫が長年「話を聞いてもらえていない」と感じていたことが明らかになりました。彼女は意識的に「聴く」姿勢を身につけ、徐々に実践していきました。最初は夫の反応も冷たかったものの、彼女の一貫した変化によって、3ヶ月後には夫から「もう一度やり直してみたい」という言葉を引き出すことができたのです。
このように、たとえ一方からの働きかけであっても、適切なアプローチと継続的な努力によって関係は修復可能です。専門家のサポートを受けることで、より効果的な方法を学び、実践することができます。
まとめ
離婚の危機に直面したとき、多くの方が絶望や不安を感じるものです。しかし、これまでお伝えしてきたように、離婚危機は必ずしも関係の終わりを意味するものではありません。むしろ、より良い関係へと生まれ変わるための転機となる可能性を秘めています。
緊急時の対応策として、冷静さを保ち、離婚届不受理申出書や円満調停などの法的手段を活用することも重要です。しかし、真の関係修復のためには、相手の気持ちを理解し、自分自身を見つめ直す心理的アプローチが欠かせません。
「自分を見つめ直す」「パートナーの不満を正確に理解する」「小さな変化から始める」「心と行動の一貫性を意識する」「長期的な関係改善計画を立てる」という5つのステップを着実に実践していくことで、徐々に関係を修復していくことができます。
そして何より重要なのは、あなた一人からでも始められるということです。相手の協力が得られなくても、あなたの変化が相手の変化を促し、関係の好循環を生み出す可能性があります。
離婚危機は確かに辛い経験ですが、その先には新たな可能性が広がっています。諦めずに取り組むことで、以前よりも強く、深い絆で結ばれた夫婦関係を築くことができるのです。あなたの家族の幸せのために、勇気を持って一歩を踏み出してください。
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