別居したら、もう離婚するしかないのだろうか…。どのくらいの確率で離婚に至るのだろう…。とお悩みではないでしょうか。別居は確かに夫婦関係の大きな転機です。住まいを別にするということは、日常的なコミュニケーションが減少し、お互いの生活が独立していくことを意味します。しかし、別居イコール離婚という公式は必ずしも成り立ちません。
私は夫婦関係修復コーチとして20年以上、1万組を超える夫婦の関係修復をサポートしてきました。その経験から言えることは、別居は確かに関係の危機ですが、新たな関係を構築するチャンスでもあるということです。
今回は、別居から離婚に至る確率の実態と、別居状態から関係を修復するための具体的な方法をお伝えします。別居中のあなたも、別居を考えているあなたも、この記事を通して冷静な判断材料と希望を見出していただければ幸いです。
- 別居から離婚に至る統計的な確率と傾向
- 別居が離婚につながりやすい理由と対策
- 別居から関係修復に成功した夫婦の共通点
- 別居中に一人でもできる関係修復のステップ
- 別居を関係改善のチャンスに変える考え方
1.別居から離婚に至る確率:統計データが示す現実
「別居したら、どのくらいの確率で離婚するのだろう」というのは、別居中の多くの方が知りたいと思う情報です。まずは現実を正確に知ることから始めましょう。
1-1.別居期間別の離婚確率と傾向
別居後の時間経過と離婚率には、明確な相関関係があります。厚生労働省の「令和4年度 離婚に関する統計」によると、2020年における別居期間別の離婚件数では、別居期間が1年未満の夫婦が全体の約39.3%を占め、最も多い割合となっています。
下図は別居期間別の離婚割合を示したものです。この図からも分かるように、別居開始から時間が経つにつれて離婚に至る確率は徐々に下がっていきます。

この統計が示しているのは、別居を始めてから1年以内が最も関係の分かれ目となる重要な時期だということです。この時期を乗り越えられると、離婚率は徐々に下がっていく傾向にあります。
私のカウンセリング経験からも、別居開始から3ヶ月〜6ヶ月の時期は特に重要です。この期間に適切な対応ができれば、関係修復の可能性は大きく広がります。逆に、この期間に何も行動を起こさないと、離婚に向かう流れが強まりやすいのです。
1-2.離婚の種類と割合から見る別居中の行方
別居中の夫婦がどのような形で離婚に至るのかも、今後の見通しを立てる上で参考になります。厚生労働省の人口動態調査によると、2020年における離婚の種類別割合は、協議離婚が約87%、調停離婚が約7.5%、審判離婚が約2%、裁判離婚が約1%となっています。
下図はこれらの割合を視覚的に示したものです。圧倒的に多いのが協議離婚であることがわかります。

この数字から読み取れるのは、大多数の夫婦は話し合いによる解決を選んでいるということです。これは裏を返せば、コミュニケーションの質と量が別居後の関係を大きく左右するということでもあります。
別居中であっても、敵対的な関係ではなく、何らかの対話の回路を保っておくことが重要です。それが離婚回避の可能性を高めるだけでなく、万が一離婚する場合でも円満な別れにつながります。
1-3.年代・子どもの有無による別居後の離婚確率の違い
別居後の離婚確率は、夫婦の年代や子どもの有無によっても異なります。内閣府男女共同参画局のデータによれば、親が離婚した未成年の子どもの数は毎年約20万人です。これは子どもがいる家庭でも離婚が珍しくないことを示していますが、一方で、子どものいる夫婦は別居から関係修復に向かうケースも少なくありません。
私のカウンセリング経験では、子どもがいる夫婦の場合、別居期間中に子どもを介したコミュニケーションが継続することで、関係改善のきっかけが生まれやすい傾向にあります。
また、結婚期間が長い熟年夫婦の場合は、別居から離婚に至るケースは比較的少なく、経済的な事情や健康上の理由から別居生活を継続するケースが多いと言えます。
2.別居が離婚に繋がりやすい理由とその対策
ここまでは別居から離婚に至る確率について統計データを見てきました。では次に、なぜ別居が離婚につながりやすいのか、その理由とそれに対する対策について考えていきましょう。これを理解することで、別居中の自分の状況をより客観的に把握し、適切な行動を取るヒントになるはずです。
2-1.別居によってさらに深まるコミュニケーション不足
別居の最も大きな影響は、日常的なコミュニケーションの減少です。同じ屋根の下で生活していれば、たとえ会話が少なくても、食事の時間や就寝前のひととき、休日の過ごし方などを共有する機会がありました。
しかし別居すると、そうした自然な接触が失われてしまいます。その結果、お互いの近況や考えを知る機会が激減し、誤解や思い込みが生じやすくなります。
これに対する対策として、定期的なコミュニケーションの機会を意識的に設けることが重要です。例えば、週に一度の電話や、月に一度の食事など、無理のない範囲でお互いの状況を共有する時間を作ってみましょう。もし直接のコミュニケーションが難しい場合は、手紙やメールなどの間接的な方法でも構いません。
2-2.別居中に生じる心理的変化と依存度の低下
別居期間が長くなるにつれて、お互いへの依存度が低下していくことも、離婚につながる大きな要因です。別々の生活に慣れ、相手がいなくても日常が回るようになると、「このままでも良いのでは」という思いが強くなりがちです。
私のカウンセリングでも、「最初は寂しかったけど、今は一人の生活に慣れてしまった」という声をよく耳にします。この感覚は自然なものですが、関係修復を望むなら注意が必要です。
対策としては、別居中であっても「夫婦である」という意識を保つことが大切です。誕生日や結婚記念日などの特別な日に連絡を取ったり、相手の健康や仕事を気にかける姿勢を持ち続けましょう。完全に独立した生活に移行してしまう前に、関係の再構築に向けた行動を起こすことが重要です。
2-3.第三者の介入による関係性の変化
別居期間中に新たな出会いがあり、第三者が関係に介入してくることも、離婚につながる大きな要因です。特に感情的な支えを求めている時期は、思いがけない関係に発展するリスクが高まります。
私のカウンセリングでも、「別居中に相談相手ができて、その人との関係が深まってしまった」というケースは少なくありません。こうした状況になると、元の関係に戻る道が一気に狭まってしまいます。
対策としては、別居中も「夫婦」という枠組みを大切にする意識を持つことです。悩みを相談する相手としては、同性の友人や家族、あるいは専門家を選ぶようにしましょう。また、お互いに新しい関係を作らないというルールを明確にしておくことも効果的です。
別居はあくまで「考える時間」であり、新たな関係を探す期間ではないという認識を持つことが重要です。
3.別居から関係修復に成功した夫婦の共通点
ここまでは別居が離婚につながりやすい理由とその対策について見てきました。しかし実際に、別居から関係修復に成功した夫婦も多くいらっしゃいます。
では、そうした夫婦には、どのような共通点があるのでしょうか。ここからは、20年以上の夫婦カウンセリング経験から見えてきた特徴をお伝えします。
3-1.適切な「距離感」の設定と守るべき約束事
別居から関係修復に成功した夫婦の最大の特徴は、適切な距離感とルールの設定にあります。これは「完全に切れる」でもなく「しつこく連絡する」でもない、バランスの取れた関わり方です。
修復に成功した夫婦が設定している主な約束事は以下の通りです。
- 定期的だが強制的ではないコミュニケーションの機会
- 子どもに関する情報共有のルール
- 金銭面での取り決め
- 重要な決断をする際の相談方法
これらの約束事について詳しく見ていきましょう。
定期的だが強制的ではないコミュニケーションの機会
例えば、週に一度の電話や月に一度の食事など、お互いにプレッシャーを感じない程度の接点を持つことが効果的です。これにより、完全に疎遠になることを防ぎつつ、必要な距離感も保つことができます。
子どもに関する情報共有のルール
子どもがいる場合は、学校行事や健康状態など、子どもに関する情報をどのように共有するかのルールを明確にしておくことが重要です。これにより、子どもを介した自然なコミュニケーションの機会が生まれます。
金銭面での取り決め
別居中の生活費や共有財産の扱いについて、明確な取り決めをしておくことで、不必要なトラブルを防ぐことができます。これは信頼関係を保つために非常に重要な要素です。
重要な決断をする際の相談方法
引っ越しや転職など、お互いに影響するような大きな決断をする際の相談方法も決めておくとよいでしょう。こうした明確なルール設定が、別居期間中の安定した関係維持を支えています。
3-2.効果的なコミュニケーション再開の方法
関係修復に成功した夫婦の二つ目の特徴は、効果的なコミュニケーションの再開方法を見つけていることです。別居によって日常的な会話が減ったからこそ、質の高い対話が重要になります。
成功している夫婦は、まず「非難・批判・要求」を避け、「感謝・理解・提案」を中心とした会話を心がけています。例えば「なぜこうしなかったの」ではなく「〇〇してくれてありがとう」という言い方に変えるだけでも、会話の質は大きく変わります。
また、深刻な問題について話し合う際も、一度に全てを解決しようとせず、一つずつ丁寧に対話することを心がけています。こうした段階的なアプローチが、コミュニケーションの質を高め、関係修復への道を開いていくのです。
3-3.別居期間を「リセット」として活かすマインドセット
三つ目の特徴は、別居期間を「リセット」と捉えるマインドセットです。関係修復に成功した夫婦は、別居をただの「危機」や「終わりの始まり」としてではなく、新しい関係を築くための「リセット期間」として活用しています。
これは「過去の問題を引きずらない」という姿勢につながります。もちろん問題の原因を理解することは大切ですが、それを相手を責めるための材料にするのではなく、今後の関係改善に活かすための学びとして捉えるのです。
私のカウンセリングでも、「別居してみて初めて相手の大切さに気づいた」「自分自身の問題に向き合う時間ができた」という声をよく聞きます。このように別居期間を前向きに活用することが、新たな関係構築の土台となっているのです。
4.別居中にできる夫婦関係修復のための5つのステップ
別居から関係修復に成功した夫婦の共通点を見てきましたが、では具体的に何をすればよいのでしょうか。ここからは、別居中でも一人から始められる関係修復の5つのステップをご紹介します。
まずは5つのステップの全体像を把握しましょう。
- 【Step1】自分自身の感情と向き合う
- 【Step2】相手の立場で考える練習をする
- 【Step3】非難せずに自分の気持ちを伝える技術を磨く
- 【Step4】小さな接点から再構築を始める
- 【Step5】専門家のサポートを活用する
それでは、これらのステップを一つずつ詳しく解説していきます。
4-1.【Step1】自分自身の感情と向き合う
関係修復の第一歩は、自分自身の感情と向き合うことです。多くの場合、別居に至るまでには様々な感情が複雑に絡み合っています。怒り、悲しみ、不安、恐れ、そして時には希望も。これらの感情を整理せずに行動すると、衝動的な言動につながりかねません。
感情整理の具体的な方法としては、日記をつけることが効果的です。「今日感じたこと」「なぜそう感じたのか」を書き出してみましょう。また、信頼できる人に話を聞いてもらうことも助けになります。
下記のような感情整理ワークシートを活用すると、自分の気持ちを客観的に見つめることができます。まずは自分だけで取り組み、慣れてきたら週に1回程度、定期的に記入する習慣をつけるとよいでしょう。
感情整理ワークシート | |
---|---|
日付 | 年 月 日 |
今日感じた感情 (該当するものに〇) |
怒り 悲しみ 不安 恐れ 寂しさ 後悔 失望 希望 安心 |
感情の強さ | 1~10で評価: |
どんな状況でその感情を 感じましたか? |
|
なぜそのように 感じたのでしょうか? |
|
この感情から気づいたこと は何ですか? |
|
明日は何を意識して 過ごしますか? |
大切なのは、感情を否定せず、ありのままに受け入れること。「こんなふうに感じるべきではない」と自分を責めるのではなく、「今はこう感じている」と認めることから始めましょう。それが冷静な判断と建設的な行動への第一歩となります。
4-2.【Step2】相手の立場で考える練習をする
次のステップは、相手の立場に立って考える練習です。これは単に「相手の気持ちを想像する」ということではなく、「相手の視点から状況を見る」という意識的な努力を指します。
例えば、「なぜ相手はそのような行動をとったのか」「相手は何を感じていたのか」と考えてみましょう。これは相手の行動を正当化するためではなく、理解を深めるための試みです。
また、自分の言動が相手にどのように受け取られたかを振り返ることも重要です。時には自分では気づかない言葉の選び方や態度が、相手を傷つけていたかもしれません。この気づきが、今後のコミュニケーションを改善する鍵となります。
4-3.【Step3】非難せずに自分の気持ちを伝える技術を磨く
3つ目のステップは、非難せずに自分の気持ちを伝える技術を磨くことです。これは関係修復において最も重要なスキルの一つと言えるでしょう。
効果的な気持ちの伝え方には、以下のようなポイントがあります。
- 「わたしメッセージ」を使う
- 具体的な状況や行動に焦点を当てる
- 感情を素直に表現する
- 相手に望むことを提案する
では、それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。
「わたしメッセージ」を使う
「あなたはいつも~」という相手を責める言い方ではなく、「私は~と感じる」という自分の感情を伝える言い方を心がけましょう。例えば、「あなたはいつも帰りが遅くて私のことを考えていない」ではなく、「あなたの帰りが遅いと、私は寂しさや不安を感じてしまうの」と伝えると、相手は防衛的にならずに聞き入れやすくなります。
具体的な状況や行動に焦点を当てる
「いつも」「絶対に」などの極端な表現は避け、具体的な状況や行動について話すようにしましょう。例えば「先週の土曜日、約束の時間に来なかったとき」というように具体的に伝えると、相手も状況を思い出しやすく、議論がかみ合いやすくなります。
感情を素直に表現する
怒りや悲しみなどのネガティブな感情も含めて、素直に表現することが大切です。ただし、感情をぶつけるのではなく、「私は悲しかった」「私は不安を感じた」と静かに伝えるよう心がけましょう。
相手に望むことを提案する
問題点を指摘するだけでなく、「次からはこうしてほしい」という具体的な提案を添えると建設的です。こうした伝え方は練習が必要ですが、別居中は自分のペースで考えて言葉を選ぶ時間があります。手紙やメールで伝えてみるのも一つの方法です。
4-4.【Step4】小さな接点から再構築を始める
4つ目のステップは、小さな接点から関係を再構築していくことです。いきなり重大な問題について話し合ったり、全てを一度に解決しようとするのではなく、まずは小さな成功体験を積み重ねていくことが大切です。
例えば、子どもの学校行事について簡単な連絡を取り合うことから始め、次第に食事や短い会話の機会を設けていくといった段階的なアプローチが効果的です。
また、かつて二人で楽しんだ共通の趣味や思い出の場所を再訪することで、ポジティブな感情を呼び起こすこともできます。重要なのは焦らず、お互いが心地よいと感じるペースで進めることです。
4-5.【Step5】専門家のサポートを活用する
最後のステップは、専門家のサポートを活用することです。夫婦関係の修復は複雑で、時には客観的な視点や専門的な知識が必要になります。
夫婦カウンセリングは二人で受けるものというイメージがありますが、実は一人でも十分に効果があります。むしろ、最初は一人で相談することで、自分自身の課題に向き合い、効果的なアプローチを学ぶことができます。
カウンセリングでは、感情の整理の仕方や効果的なコミュニケーション方法、具体的な関係改善のステップなど、専門的な観点からのアドバイスが得られます。また、これまで見えなかった問題の本質や解決のヒントが明らかになることも少なくありません。
私自身も多くの方が一人でカウンセリングを受けることから始め、最終的には関係修復に成功するケースを数多く見てきました。専門家のサポートを受けることは、決して弱さの表れではなく、関係を大切にする強さの表れです。
まとめ:別居は終わりではなく、新しい関係の始まりになり得る
今回は、別居から離婚に至る確率、別居が離婚につながりやすい理由とその対策、関係修復に成功した夫婦の共通点、そして具体的な修復のステップについてお伝えしてきました。別居というつらい状況にあっても、前向きな一歩を踏み出すヒントを得ていただけたでしょうか。
確かに統計データを見ると、別居から離婚に至るケースは少なくありません。しかし、別居は必ずしも終わりを意味するわけではなく、新しい関係の始まりになる可能性を秘めています。
私のカウンセリング経験から言えることは、別居を経験したことで、かえって関係が深まった夫婦は数多くいるということです。別居という「距離」があったからこそ、お互いの存在の大切さに気づいたり、自分自身の問題点と向き合う機会を得られたりするのです。
大切なのは、ただ時間が過ぎるのを待つのではなく、自分からできる行動を起こすこと。自分の感情と向き合い、相手の立場で考え、効果的なコミュニケーションを心がけ、小さな一歩から始めることです。
そして、一人で抱え込まず、必要に応じて専門家のサポートを受けることも検討してみてください。一人でも始められる関係修復の道があることを、どうか忘れないでください。別居はピリオドではなく、より良い関係へのコンマになり得るのです。
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