パートナーから突然「好きな人ができた」と打ち明けられたとき、頭の中が真っ白になった方も多いのではないでしょうか。あるいは、スマートフォンのメッセージを偶然見てしまい、心が凍りついた方もいるかもしれません。
厚生労働省の統計によると、2024年の離婚件数は18万5,904組にのぼります。離婚危機は、特別な家庭だけに起きることではありません。今まさに同じ状況で苦しんでいる方が、全国に大勢います。
それでも、離婚したくないという気持ちを抱えているなら、どうかまだあきらめないでください。この記事はそんな方のために書きました。妻から、あるいは夫から好きな人ができたと告げられた側、どちらの方にも当てはまる内容です。
私は夫婦関係修復コーチとして20年以上、1万組を超える夫婦の関係修復に携わってきました。この状況に置かれた方が最初に陥りがちな行動のパターン、そしてその後の関係に大きく影響する初動の判断について、今日は具体的にお伝えしていきます。
大切なことをひとつお伝えしておきます。「好きな人がいる」という理由だけで、離婚は自動的に成立するわけではありません。今のあなたには、焦らず冷静に動くための時間も、選択肢も、まだ十分に残されています。
この記事では、相手に好きな人がいても離婚したくないと感じている方に向けて、今すぐ取るべき行動、知っておくべき法律の基本、パートナーの心理の読み方、そして一人から始められる関係修復の具体的な方法をお伝えしていきます。
この記事を読むと、以下のことが分かります。
- 離婚届にすぐサインしなくていい法的な理由
- 好きな人ができたパートナーの心理の3つの段階
- この時期に絶対やってはいけない言動
- 一人から始められる関係修復の具体的なステップ
- 修復に成功した実例から学べること
1. 相手に好きな人がいると知ったら、まず今すぐやるべきこと
相手から「好きな人がいる」「離婚したい」と言われた直後は、誰でも冷静ではいられません。ただ、この最初の数日間の行動が、その後の関係に大きく影響します。今すぐやるべきことを順番にお伝えします。
1-1. 離婚届にすぐサインしなくていい理由
日本の民法763条は「夫婦は、その協議で、離婚をすることができる」と定めています。つまり、離婚にはあなた自身の合意が必要であり、相手が一方的に成立させることはできません。相手が感情的になって早くサインしろと迫ってきたとしても、冷静に断る権利はあなたにあります。
私のカウンセリングでも、追い詰められた状況でつい離婚届にサインしてしまい、その後「やっぱり修復したかった」と後悔される方を多く見てきました。離婚は人生の大きな決断です。感情が高ぶっているときほど、書類への署名は一度立ち止まることをお勧めします。
1-2. 感情が高ぶっているときに先にやること
ショックを受けたとき、人はどうしても感情的に動いてしまいます。泣き続ける、責め立てる、LINEを何十件も送り続ける──そうした行動は気持ちとしては理解できますが、修復の可能性を下げてしまうことが少なくありません。
感情が高ぶっているときに最初にやるべきことは、その場での決断や言葉のやり取りをいったん止めることです。感情がピークにある状態での話し合いは、互いに傷つけ合うだけに終わることがほとんどだからです。
もし子どもがいる場合は、子どもの前での口論は絶対に避けてください。子どもへの影響は後になってじわじわと出てきます。子どもがいる空間では、できるだけ普段通りに振る舞うことが大切です。
もう一つ、この時期にやっておくべきことがあります。相手が浮気(不貞行為)をしている可能性がある場合は、証拠に関わる情報を消さずに保全しておいてください。感情的になってスマートフォンを投げたり、メッセージを削除したりしてしまわないよう注意が必要です。
1-3. 勝手に離婚届を出されないための緊急対策
「相手が勝手に離婚届を市役所に出してしまうのでは」という不安を感じている方もいます。実は、そうした心配に対して有効な公的制度があります。
法務省が案内している不受理申出制度です。本籍地の市区町村に「離婚届不受理申出書」を提出しておくことで、本人の意思に反して提出された離婚届が受理されないように防ぐことができます。
この制度は、相手が感情的になっている時期には特に有効な緊急対策です。対象となるのは離婚届だけでなく、婚姻届や養子縁組など5種類の届出です。申出時には本人確認書類が必要ですので、お住まいの市区町村の窓口に早めに確認してみてください。
離婚に応じる気持ちがないのであれば、この手続きをしておくことで、少なくとも書類上の離婚が一方的に進むリスクを防ぐことができます。
2. 「好きな人がいる」だけでは離婚は自動的に成立しない
緊急の初動を押さえたところで、次に知っておいていただきたいのが法律の基本的な考え方です。「好きな人ができた」という言葉を聞くと、もう離婚しかないように感じてしまいがちですが、法律的に見るとそうではありません。
2-1. 離婚が成立するために必要な条件
日本で離婚が成立するには、夫婦の合意による協議離婚、合意できない場合の調停、それでも解決しない場合の裁判という順番を踏むことになります。どの段階でも、あなたが合意しなければ離婚は前に進みません。
協議離婚は、夫婦の両方が同意することで初めて成立します。相手が強く離婚を求めてきても、あなたが同意しなければ、それだけでは離婚は前に進みません。
協議でまとまらない場合は、家庭裁判所への調停申し立てへと進みます。調停もあくまで話し合いの場であり、ここでも合意しなければ成立しません。調停が不成立になって初めて、裁判(離婚訴訟)という選択肢が出てきます。
裁判で離婚が認められるためには、民法に定められた法定離婚事由が必要です。相手の感情的な理由だけで裁判離婚が確定することはまずありません。
2-2. 自分が同意しなければ離婚が進まない法的な理由
民法763条により、協議離婚はあなたの合意なしには成立しません。では、協議で合意できない場合、相手はどうするかというと、家庭裁判所への離婚調停の申し立てという手順を踏むことになります。
裁判所の統計によると、夫婦関係調整調停の新受件数は令和6年で3万8,281件に上り、平均審理期間は5.3か月とされています(裁判所・2025年公表)。調停はあくまでも話し合いの場であり、ここでも合意しなければ成立しません。
調停が不成立になると、次は裁判(離婚訴訟)となります。しかし裁判では、民法770条に定められた法定離婚事由が必要です。感情的な「好きな人ができた」という理由だけで裁判で離婚が認められることは、まずありません。
2-3. 「好きな人がいる」と「不貞行為」は法律上まったく違う
好きな人がいるという事実と、法律上の不貞行為は、まったく別のことです。民法が定める不貞行為とは、配偶者以外の者と肉体関係を持つことを指すのが基本です。気持ちが移った、好きな人ができたというだけでは、法律上の不貞行為には当たりません。
もし実際に不貞行為があったのであれば、話は変わります。証拠を保全しておくことで、あなた側が有利な立場に立てる可能性が出てきます。ただし証拠の収集には適法な方法と範囲がありますので、判断が難しい場合は弁護士への相談をお勧めします。
相手に好きな人ができたというだけで、離婚を無条件に認める法的な根拠にはなりません。修復を望むあなたにとって、これはとても大切な事実です。
ここまでの内容を整理すると、あなたの置かれた状況が法的にどういう意味を持つかが一目で確認できます。
| ▼状況別・法的な見通し早見表 | ||
| 状況 | 法的な位置づけ | あなたが取れる対応 |
|---|---|---|
| 相手に好きな人ができたと告げられた(肉体関係なし) | 法定離婚事由に該当しない。あなたが同意しなければ離婚は成立しない | 離婚届へのサインを拒否できる。修復を目指す時間を確保できる |
| 相手に不貞行為(肉体関係)があった | 民法770条の法定離婚事由に該当する可能性がある | 証拠を適法に保全する。弁護士に相談して対応を検討する |
| 相手がすでに離婚調停を申し立てた | 調停はあくまで話し合いの場。合意しなければ成立しない | 調停に出席し、合意しない意思を示す。弁護士への相談も有効 |
3. 好きな人ができたパートナーの心理を冷静に理解する
法律の知識と初動を押さえたところで、次に大切なのはパートナーの気持ちを理解することです。「なぜこんなことになってしまったのか」という問いへの答えを探すことは、修復の手がかりにもつながっていきます。
3-1. パートナーの気持ちが動くときの3つの段階
なぜこんなことになってしまったのか──その問いが頭を離れない方も多いでしょう。ただ、パートナーの気持ちが動くのは、誰か一人のせいで起きることではありません。多くの場合、二人の間に積み重なった変化がその背景にあります。
20年以上の経験から、パートナーに好きな人ができる場合、多くのケースでその気持ちには段階があることが分かっています。心の変化はほとんどの場合、じわじわと進んでいきます。
- 不満の蓄積期
- 心が外に向かう期
- 決断・要求期
それぞれについて詳しく説明します。
①不満の蓄積期
不満の蓄積期とは、パートナーの中に不満や孤独感が静かに積み重なっていく状態のことです。まだ「好きな人がいる」わけではありませんが、夫婦間の日常的なすれ違いや、会話の少なさ、認めてもらえない感覚が少しずつ蓄積していきます。
表面上はいつも通りに見えることも多く、この段階には気づきにくいことが特徴です。気づかないまま時間が経つにつれ、次の段階へと移行していくことがあります。
②心が外に向かう期
心が外に向かう期とは、家庭の外に自分を認めてくれる存在が現れ、そちらへ意識が向き始める状態です。まだ「好きになった」という自覚がないことも多く、気が合うだけ、友達みたいな感覚と本人が感じているケースも少なくありません。
ただ、心の中では家庭とその相手を無意識に比べるようになっていきます。
③決断・要求期
決断・要求期とは、相手への気持ちが固まり、配偶者に離婚を求めてくる段階です。この時期に初めて、好きな人ができた、離婚したいという言葉が出てきます。
ただし、決断・要求期であっても、完全に気持ちが固まっているとは限りません。揺れている場合も多く、どう向き合うかによって関係は変わり得ます。焦らずに、次の見極めのポイントを確認していきましょう。
3-2. まだ修復できる可能性が高いサインとそうでないサイン
「もう手遅れなのか、まだ間に合うのか」──これは修復を望む方が最も知りたいことの一つです。断言はできませんが、修復の可能性が高い状況にはいくつかのサインがあります。1つでも当てはまれば可能性は残っています。複数の難しいサインが重なる場合は、より早めに専門家へ相談することをお勧めします。
今の自分の状況と照らし合わせながら、下の表を確認してみてください。
| ▼今の状況セルフチェック | |
| 修復の可能性が残っているサイン | より慎重な対応が必要なサイン |
|---|---|
| □ まだ同じ屋根の下で生活している | □ すでに別居して数か月以上が経過している |
| □ 子どものことや家の用事については会話ができる | □ 相手が弁護士に相談を始めている |
| □ 相手が完全に感情を閉ざしているわけではない | □ 連絡そのものがまったく取れなくなっている |
ただし一つだけ覚えておいてほしいのは、どちらのサインが当てはまっていても、修復をあきらめる必要はないということです。私がサポートしてきた中でも、一度は別居になった夫婦が、1年以上かけて関係を取り戻した事例は少なくありません。状況の見極めは大切ですが、そこで答えを決めてしまわないでください。
3-3. この時期にやってしまいがちな致命的な言動
ここでは、修復を望む方が陥りやすい落とし穴をお伝えします。良かれと思ってやってしまいがちな言動が、実は状況を悪化させていることがあります。
この時期に特に気をつけてほしいのは、次の3つです。
- 感情的な責め立てや泣き落とし
- 相手の行動を監視・追いかける
- 早急に結論を迫る
それぞれについて解説します。
①感情的な責め立てや泣き落とし
なんでそんなことをするの、こんなにつらいのに分からないの──という言葉は、気持ちとして当然です。でも、追い詰められた相手は、責められるほど心を閉ざし、逃げたい気持ちが強くなります。
特に好きな人ができているパートナーは、今の家庭に対して息苦しさや重さを感じていることが多いです。そこに感情的な言葉が加わると、離婚への気持ちがかえって強まってしまいます。
②相手の行動を監視・追いかける
スマートフォンを確認しようとする、帰宅時間を細かく聞く、後をつける──こういった行動は心配から来るものですが、相手に大きなプレッシャーを与えます。
監視されていると感じた相手は、家の外に居場所を求めるようになります。せっかく同居しているという大切な時間を、逆効果な行動で失ってしまうことになりかねません。
③早急に結論を迫る
どうするの、今すぐ決めてほしい、あの人と別れてほしい──こうした言葉を繰り返すことも、状況を悪化させます。
パートナーが揺れている段階でいきなり結論を迫ると、その揺れを止めてしまうことになります。揺れているということは、まだ関係を完全に断ち切る気持ちになっていないということです。その揺れに寄り添う接し方こそが、修復のきっかけになることが多いのです。
4. 一人からできる関係修復の具体的なステップ
では、実際にどう動けばいいのでしょうか。ここからは、あなた一人から始められる具体的な方法をお伝えしていきます。
4-1. まず自分自身を整えることが修復の第一歩
多くの方が「相手をどう変えるか」を考えてしまいますが、修復の第一歩は、相手を変えることではなく、自分自身を整えることです。これは20年以上のカウンセリング経験を通じて、私が確信していることの一つです。
この時期、特につらいのが好きな人と自分を比べてしまう苦しさではないでしょうか。相手はどんな人なのか、自分には何が足りないのか──そう考え続けると、自己否定の連鎖に引き込まれていきます。比べることに使うエネルギーは、修復には一切役立ちません。その意識を、自分を立て直すことに向け直すのが最初の一歩です。
相手に好きな人ができた背景には、ほとんどの場合、夫婦間に何らかのすれ違いが積み重なっています。そのすれ違いを生んだ要因の一部は、あなた自身の言動にも含まれている可能性があります。それは変えられる部分がある、という意味での希望の話です。
自分を整えるとは、まず感情のコントロールができる状態に戻すことです。具体的には、睡眠と食事を最低限整えること、信頼できる一人の人に気持ちを吐き出すこと、毎日の生活の中に小さな楽しみを意識的に作ることが有効です。これは現実逃避ではなく、長期戦に向けての体力づくりです。
私がサポートしてきた方の中には、カウンセリングを始めた当初、涙が止まらず話もままならない状態だった方がいました。まず自分を整えることに3か月取り組んだ後、表情が変わり、落ち着いた声でパートナーに接することができるようになりました。それが関係の転換点になったのです。
4-2. 日常の接し方で信頼を少しずつ取り戻す方法
自分が少し落ち着いてきたら、次は日常の中での接し方を見直していきます。ここで大切なのは、大きな変化を一度に見せようとしないことです。
突然すごく優しくなる、急に家事を全部やり始めるという行動は、相手に警戒心を持たせてしまうことがあります。大切なのは、小さくて自然な変化を積み重ねることです。まず、相手への責め言葉や不満の言葉を減らすことから始めてください。挨拶を丁寧にする、相手が帰ってきたときに普通に声をかける、それだけで十分です。
もし同居しているなら、相手が安心していられる空間を家の中に作ることを意識してください。ピリピリした空気、いつ責められるか分からない雰囲気──そういった家の中に居たいと思う人はいません。
会話は、重い話題ではなく、子どものこと、日常の出来事など、相手が答えやすい話から始めるのがいいでしょう。例えば、
「今日、〇〇が学校でこんなことあったみたいで、笑えたんだけど」
こういう何気ない会話のやり取りが、少しずつ空気を和らげていきます。
4-3. 話し合いのタイミングと進め方
日常の接し方を変えながら、いずれはきちんと話し合いをしたいと思う方も多いでしょう。ただ、タイミングと進め方を間違えると逆効果になることがあります。
話し合いの場を設けるタイミングは、感情が静まり、日常の会話が少し戻ってきた頃が適しています。まだ相手が完全に感情的になっている時期は避けた方が無難です。
話し合いの場では、伝え方に気をつけることが大切です。相手を責める言葉ではなく、自分がどう感じているかを伝える言い方に切り替えるだけで、相手の受け取り方は大きく変わります。
なんでそんなことしたの、ではなく──私はとても悲しくて、どうしたらいいか分からなかった。
この違いは、責めているか・気持ちを伝えているかの違いです。責め言葉は相手の防衛心を高め、話し合いを閉じさせます。
もう一つ、好きな人と別れてほしいと伝えることについても触れておきます。結論から言うと、この要求を感情的に繰り返すことは、修復においてほぼ逆効果になります。追い詰められた相手は、家庭ではなく外の世界に居場所を求めるようになるからです。伝えるなら、問い詰める形ではなく、自分が夫婦関係をやり直したいという気持ちを静かに話すにとどめることをお勧めします。
また、一度の話し合いで全てを解決しようとしないことも重要です。話し合いを短く、何度かに分けて積み重ねていく方が、関係に無理をかけません。話し合いの終わりは、お互いが傷ついた状態ではなく、少なくとも中立的な状態で終わることを意識してください。
もし話し合い自体が難しい、または一人でこの先どう進めればいいか分からないと感じたときは、専門家のサポートを活用することも有効な選択肢です。
5. 子ども・生活・お金も含めた現実的な判断
関係修復を考える一方で、離婚になった場合の現実も、冷静に把握しておく必要があります。感情だけで判断を急いでしまう前に、子ども・生活・お金という観点から現実的な見通しを持っておくことは、どんな決断をするにしても大切なことです。
5-1. 離婚した場合に起きる現実的な変化
離婚は、感情の問題であると同時に、生活そのものを根底から変える出来事です。特に子どもがいる場合、その影響は大きくなります。
厚生労働省の調査(令和5年版厚生労働白書)によると、母子世帯の平均年間収入は世帯全体で373万円、父子世帯は606万円とされています。これは、離婚後の経済的な生活水準が現役の夫婦世帯と比べて大きく変化するケースが多いことを示しています。特に、これまで相手の収入に依存していた場合や、仕事を中断してきた場合は、離婚後の生活設計をしっかりと考えておく必要があります。
また、ひとり親になった理由の約8割は離婚によるものです。子どもへの影響という観点でも、離婚は子どもにとって環境の大きな変化になります。もちろん、夫婦が激しく対立した状態のまま一緒にいることが子どもにとっていいとも言いません。ただ、離婚という選択の重さを、感情が落ち着いているときに冷静に認識しておくことは大切です。
5-2. 修復を選んだ場合の長期的な見通し
修復を選んだ場合はどうでしょうか。私の経験から言えば、修復は決して簡単ではありませんが、正しい方向で取り組めば可能性は十分にあります。
現実的には、1年から1年半程度をかけて、少しずつ関係が変化していくというイメージが正確です。結婚生活の年数を考えれば、1年間の丁寧な取り組みで関係が変わっていくのは、割に合わない話ではないはずです。
修復の流れには、大まかな時期ごとの目安があります。全体の見通しを持っておくことで、途中で諦めにくくなります。
| ▼関係修復の大まかなロードマップ | ||
| 時期の目安 | この時期に取り組むこと | この時期に期待できる変化 |
|---|---|---|
| 0〜3か月 | ・自分の感情を落ち着かせる ・離婚届への対応など法的な初動を固める ・家の中の空気を重くしない |
・焦りや混乱が少しずつ落ち着いてくる ・日常の会話が少し戻り始める |
| 3〜6か月 | ・日常の接し方を意識的に変え続ける ・相手が安心できる空間を作る ・重い話し合いはまだ急がない |
・相手の警戒心が少しずつ和らぐ ・家の中の雰囲気が軽くなってくる |
| 6か月〜1年 | ・タイミングを見て話し合いを始める ・自分の気持ちを責めずに伝える練習をする ・専門家のサポートを継続する |
・関係の転換点が訪れることが多い時期 ・相手から歩み寄りのサインが出ることもある |
| 1年以降 | ・新しい夫婦の形を二人で作っていく ・修復後の関係をより深めていく |
・以前より深い信頼関係が築かれることも多い |
途中で揺れ戻しが起きることもありますが、それは多くの場合、修復の過程の一部です。一歩進んで半歩戻るような感覚が続くことも珍しくありません。その揺れを焦らず受け止めながら続けることが、長期的な修復につながっていきます。
5-3. 一人で抱え込まず、早めに相談先を確保する大切さ
修復には時間がかかり、途中で揺れ戻しが起きることもある──そうした長い過程を、一人で全部抱えようとしないでください。話せる相手がいるかどうかで、精神的な負担はまったく違ってきます。
厚生労働省の調査によれば、父子世帯では相談できる相手がいると答えた方が54.8%と、母子世帯の78.1%に比べて低い結果が出ています(令和5年版厚生労働白書)。特に男性は、こうした悩みを誰かに話すことを避けがちです。でも、抱え込むほど判断が偏り、適切な行動が取れなくなることがあります。
相談先としては、家庭裁判所の夫婦関係調整調停(費用は収入印紙1,200円分)、自治体の家庭相談窓口、専門のカウンセラーや夫婦関係修復コーチなどがあります。それぞれ目的が異なりますので、状況に応じて使い分けることをお勧めします。どうしても一人で判断するより、専門家に現状を整理してもらう方が、ずっと効率的に前進できます。
6. 好きな人がいた夫と向き合い、1年で修復できたAさんの話
ここまで、初動の対処から法律の知識、パートナーの心理、修復の方法まで幅広くお伝えしてきました。最後に、実際にこの状況を乗り越えた方の事例をご紹介します。
6-1. 修復に向かうまでの道のり
Aさん(40代、子ども2人)は、夫のスマートフォンに職場の女性とのやり取りを偶然見てしまったことがきっかけでした。夫は問い詰めた末に「好きになってしまった」と認め、離婚を求めてきました。
最初のうち、Aさんは毎日泣き続け、夫を問い詰めては口論になる日が続きました。夫の帰宅時間を確認し、LINEのやり取りを見ようとし、関係はさらに悪化していきました。
カウンセリングに来られたのは、最初の告白から約3か月後のことです。「もうどうしたらいいか分からない、でもまだ離婚したくない」という状態でした。
6-2. Aさんが一人から始めた3つのことと、関係が変わったきっかけ
カウンセリングを通じて、Aさんが取り組んだことは大きく3つです。
- 夫を問い詰めることを止め、自分の感情を落ち着かせることに集中した
- 家の中の空気を変えることを意識した
- 自分自身の時間を作り、夫だけに感情を向けない状態をつくった
それぞれについて詳しく見ていきます。
①夫を問い詰めることを止め、自分の感情を落ち着かせることに集中した
追いかけるほど相手は逃げるという原理を理解し、まず自分の状態を整えることに意識を向けました。問い詰めることをやめるのは、相手を許すことではありません。自分が冷静に動けるようになるための、最初の一歩です。
②家の中の空気を変えることを意識した
帰宅した夫に普通に挨拶をする、子どもたちとの夕食を明るく過ごすことを意識するなど、家がとにかく重くならないようにしました。夫に変わりなさいと求めるのではなく、自分が変わることを先に始めたのです。
③自分自身の時間を作り、夫だけに感情を向けない状態をつくった
友人と少し話す時間を持ったり、趣味だったウォーキングを再開したりして、夫だけに感情のすべてを向けない状態を少しずつ作っていきました。
関係が変わってきたと感じたのは、取り組みを始めて半年ほど経った頃です。夫が帰宅後にリビングに座るようになり、子どもの話を少し話してくれるようになりました。Aさんは結果を急がず、その小さな変化を喜びながら続けました。そして約1年後、夫から「やり直したい」という言葉が出てきたのです。
Aさんが変えたのは、夫ではなく自分自身でした。それが関係を変えるきっかけになりました。
6-3. 修復に「近道」はないが、「正しい道」はある
Aさんの事例で伝えたかったことは一つです。修復に即効の方法はありません。ただ、正しい方向で、あきらめずに続けることで、関係は変えられるという現実があります。
もちろん、状況によって難しさは違います。別居が始まっている、連絡が取れない、弁護士が動き始めているという場合は、より専門的なサポートが必要になることもあります。でも、だからといって修復をあきらめる必要はありません。
私がこの20年で見てきた中で確信を持って言えることは、人は変われるということ、そして夫婦は、正しい方向で向き合えば、関係を取り戻せるということです。
よくある疑問に答えます
相手に好きな人がいる状況で、修復を目指して動いていると、さまざまな疑問や不安が出てくるものです。よく寄せられる疑問に答えます。
まとめ
この記事では、相手に好きな人ができても離婚したくないと感じている方に向けて、今すぐ取るべき行動から修復の具体的な方法まで、幅広くお伝えしてきました。最後に大切なポイントをまとめます。
- 「好きな人がいる」だけでは離婚は自動的に成立しない。あなたの合意なしに協議離婚は成立しない
- 離婚届にすぐサインする必要はない。不受理申出制度を活用して時間を確保できる
- パートナーの気持ちには段階がある。決断・要求期であっても、揺れが残っている場合は多い
- 責め立て・監視・早急な結論の要求は逆効果。この時期の言動が関係の行方を左右する
- 修復は、相手を変えることではなく、自分が変わることから始まる
- 修復には1年〜1年半前後の時間がかかることを前提に、焦らず取り組むことが大切
- 一人で抱え込まず、早めに専門家への相談を検討する
相手に好きな人ができたという状況は、確かに深刻で、ショックを受けるのは当然です。でも、それはまだ終わりではありません。
今この瞬間、あなたが修復を望んでいるのなら、その気持ちがあること自体、すでに最初の一歩を踏み出しているということです。正しい方向で動き続けることで、関係は必ず変わっていきます。もし一人でどう動けばいいか分からなくなったときは、いつでも専門家に相談してください。あなたには、サポートを受ける資格があります。





コメントを残す