ある日突然、夫や妻から「好きな人ができた。離婚してほしい」と告げられ、頭が真っ白になっていませんか。
信じていたパートナーからの言葉に、怒りや悲しみ、そして自分の何がいけなかったのだろうという気持ちが一度に押し寄せ、眠れない夜を過ごしている方も多いのではないでしょうか。
それでも、あなたが今この記事を読んでいるのは、心のどこかで、まだ離婚したくない、もう一度やり直したいと願っているからだと思います。
最初にお伝えしておきます。あなたが同意しない限り、離婚は成立しません。そして、ここからの向き合い方しだいで、夫婦関係は十分に取り戻せます。
私は夫婦関係修復コーチとして20年以上、1万組を超えるご夫婦の関係修復をサポートしてきました。その中には、パートナーから好きな人ができたと言われた状態から、1年ほどかけて再び笑い合える夫婦に戻った方がたくさんいます。
この記事では、離婚を止める方法から、関係を取り戻すまでの道のりを順番にお伝えします。
- 好きな人ができたと言われても、勝手に離婚されない理由と防ぎ方
- 言われた直後にやってはいけない5つの言動
- 好きな人ができたという言葉の裏にある相手の本当の気持ち
- 相手の協力がなくても一人から始められる関係修復の5ステップ
- 相手と話すときの言葉選びと、話し合いが進まないときに頼れる場所
- 1年かけて夫婦関係を取り戻した夫と妻の実例
今はとても苦しいと思いますが、正しい順番で動けば、道は必ず開けていきます。
1.「好きな人ができた」と言われても、あなたが同意しなければ離婚は成立しません
それでは最初に、あなたが今いちばん不安に感じているであろう、相手の希望だけで離婚させられてしまうのかという疑問からお答えします。
結論から言うと、あなたが離婚に同意しない限り、相手が一方的に離婚を成立させることはできません。その理由を、4つの視点から順番に説明していきます。
1-1.協議離婚は夫婦2人の合意がなければ成立しない
日本の離婚の多くは、夫婦が話し合って離婚届を役所に出す協議離婚という形です。協議離婚は、夫婦2人が話し合い、2人とも離婚に納得して初めて成立します。
法務省の案内でも、協議離婚は離婚をしようとする夫婦が届け出る手続きとされています。そして離婚届には、夫婦2人の署名に加えて、成年の証人2人の署名も必要です。
つまり、相手がどれだけ強く離婚したいと言っても、あなたがサインしなければ離婚届は完成しないのです。
好きな人ができたという言葉は、あくまで相手の気持ちを伝えたものにすぎません。気持ちを伝えられたことと、離婚が決まったことは、まったく別の話です。まずはこの事実を、心の支えにしてください。
1-2.「好きな人ができた」だけでは裁判でも離婚理由になりにくい
では、話し合いで決まらず、裁判にまで進んだ場合はどうなるのでしょうか。結論から言うと、好きな人ができたことだけを理由に、裁判で離婚が認められることは基本的にありません。裁判で離婚が認められるには、民法で決められた離婚の理由、つまり法定離婚事由が必要だからです。
相手が離婚をあきらめない場合、まずは家庭裁判所での調停、それでもまとまらなければ裁判へと進む可能性があります。ただ、調停はあくまで話し合いの場なので、ここでもあなたの同意がなければ離婚は成立しません。
法定離婚事由には、配偶者の不貞行為、悪意の遺棄(正当な理由なく同居や生活費の負担を拒むこと)、3年以上の生死不明、その他婚姻を継続し難い重大な事由などがあります。
この中に、ほかに好きな人ができたという理由は入っていません。相手の心変わりは、あくまで相手側の事情だからです。
ただし、注意しておきたい点もあります。夫婦の別居が長く続き、関係が完全に壊れていると判断されると、婚姻を継続し難い重大な事由にあたるとされる可能性があるのです。
だからこそ、離婚を拒否するだけで安心せず、別居が長引く前から関係を立て直す動きを始めることが大切です。その具体的な方法は、記事の後半でくわしくお伝えします。
1-3.不倫をしている側からの離婚請求は原則として認められない
さらに、相手と好きな人との関係がすでに不倫に進んでいる場合、相手からの離婚請求は原則として認められません。
夫婦関係が壊れた原因を自分で作った側を、法律では有責配偶者と呼び、不倫、つまり不貞行為をした配偶者はこれにあたります。裁判所が有責配偶者からの離婚請求を認めないのは、自分で原因を作っておきながら、離婚したくない相手に離婚を押しつけるのは身勝手だと考えられているからです。
ただし、例外もあります。過去の裁判では、別居がかなり長い期間続いている、夫婦の間に経済的に自立していない子どもがいない、離婚しても相手が経済的・精神的にひどく苦しい状況にならない、といった条件がそろった場合に、有責配偶者からの離婚が認められたケースがあります。
裏を返せば、こうした条件がそろわない限り、不倫をした側からの離婚請求は簡単には通らないということです。
なお、相手が不倫を認めていない段階で、あなたが不倫だと決めつけてしまうのは逆効果です。好きな人との関係が不倫にあたるのかどうかの考え方は、3章でくわしくお伝えします。
1-4.勝手に離婚届を出される不安は「不受理申出」で防げる
ここまでで、あなたが同意しなければ離婚は成立しないことが分かりました。それでも、相手が勝手に離婚届を出してしまうのではないかと不安な方もいると思いますが、その不安は離婚届の不受理申出という制度で防げます。
不受理申出とは、本人の意思にもとづかない離婚届が役所で受け付けられないように、前もって申し出ておく仕組みです。カウンセリングの現場でも、勝手に出されるのが怖くて眠れないという相談をよくいただきますが、この制度を知って落ち着きを取り戻す方は少なくありません。
法務省によると、この申出は夫または妻が行うことができ、手数料はかかりません。また、一度申し出ておけば、自分で取り下げない限り効力が続きます。
手続きは、原則として本人が市区町村の役所の窓口に出向いて行います。運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類を持っていけば、その場で申出書を書いて提出できます。別居中でも申し出ることができ、もし相手が離婚届を出そうとした場合は、受け付けられなかったことがあなたに知らされます。
ただし、申出をしたことを相手に突きつけるのは避けてください。「もう勝手に離婚できないからね」と伝えると、相手の反発を強めるだけで、関係修復が遠のいてしまうからです。
不受理申出は、相手と戦うための道具ではありません。あなたが落ち着いて関係修復に取り組む時間を守るお守りだと考えてください。
2.言われた直後にやってはいけない5つの言動
法律の面では、あなたが簡単に離婚させられることはないと分かりました。ただ、本当に大切なのはここからです。
告げられた直後の数日から数週間は、気持ちが大きく揺れ、後から振り返ると後悔するような言動をしてしまいやすい時期です。そして、この時期の対応しだいで、その後の関係修復の進みやすさが大きく変わります。
私がこれまで見てきた中でも、関係修復がうまくいった方の多くは、この時期に次の5つを避けていました。
- その場で離婚届にサインしてしまう
- 泣いてすがって必死に引き止める
- 相手を責め立てて問い詰める
- 相手の好きな人に直接連絡する
- スマホを盗み見たり後をつけたりする
どれも、つらい気持ちから思わずやってしまいがちなものばかりです。それぞれ、なぜ避けるべきなのか、代わりに何をすればよいのかを順番に解説していきます。
2-1.その場で離婚届にサインしてしまう
1つ目は、相手に言われるまま離婚届にサインしてしまうことです。ショックで頭が働かない中、相手に強く迫られると、もうどうでもいいという気持ちになってサインしてしまう方がいます。
しかし、離婚届には、その場で絶対にサインしないでください。一度サインして提出されてしまうと、後から気持ちが変わっても、離婚をなかったことにするのはとても難しくなります。
また、離婚届と一緒に、お金や子どものことを口約束で決めてしまうのも危険です。ショックの中で決めた条件は、後になってあなたや子どもの生活を苦しめることがあります。
相手に迫られたときは、次のように伝えれば十分です。
「突然すぎて、今は何も決められない。ちゃんと考えたいから、少し時間がほしい」
ポイントは、相手を責めずに、自分の気持ちとして時間がほしいと伝えることです。感情的に「絶対に別れない!」と叫ぶよりも、相手も受け入れやすくなります。
2-2.泣いてすがって必死に引き止める
2つ目は、泣いてすがり、必死に引き止めることです。愛している相手を失いたくない気持ちから、何度も「行かないで」「悪いところは全部直すから」と訴えてしまうのは、とても自然なことです。
けれども、離婚を切り出した側にとって、すがられることは強いプレッシャーになります。相手の心は、引き止められるほど、早くここから離れたいという方向に動いてしまいやすいのです。
人は、追いかけられると逃げたくなり、追われなくなると気になり始めるものです。必死にすがるほど、相手の中で、あなたといると苦しい、好きな人といると楽だという比べ方が強まってしまいます。
例えば、ある旦那様は妻から好きな人ができたと告げられた後、毎日のように長いメッセージを送り、帰ってきた妻に何時間も話し合いを求め続けました。その結果、妻は仕事のあとまっすぐ帰ってこなくなり、ついには「あなたといると息が詰まる」と言われてしまったそうです。
泣きたいときや気持ちをぶつけたいときは、相手の前ではなく、信頼できる友人や専門家の前で吐き出してください。気持ちを吐き出す場所を別に持つことで、相手の前では落ち着いていられるようになります。
2-3.相手を責め立てて問い詰める
3つ目は、相手を責め立て、問い詰めることです。裏切られた怒りから、「いつから?」「相手は誰?」「子どものことはどうでもいいの?」と、一気に問いただしたくなる気持ちはよく分かります。
ただ、責められた相手は、自分を守ろうとして心を閉ざします。そして、こんなふうに責められるから好きな人のほうがいいんだと、自分の心変わりを正当化する理由にしてしまうのです。
特に避けてほしいのが、相手の人格を否定する言葉や、過去の出来事を蒸し返すことです。「最低だね」「あのときもそうだった」といった言葉は、一時的に気持ちが晴れても、相手の心に深い傷を残し、修復の可能性を大きく下げてしまいます。
怒りを感じるのは、あなたが真剣に夫婦関係を大切にしてきた証です。その気持ちを否定する必要はありません。ただ、怒りをそのまま相手にぶつけるのではなく、紙に書き出したり、相談相手に話したりして、まずは自分の中で受け止めてください。
相手に気持ちを伝えるときは、責める言葉ではなく、次のように自分の気持ちとして伝えると、相手も話を聞く余地が生まれます。
「好きな人ができたって聞いて、すごく悲しかった。正直、まだ受け止めきれてない」
2-4.相手の好きな人に直接連絡する
4つ目は、相手の好きな人に直接連絡することです。それが誰か分かったとき、「家庭を壊さないで」「もう会わないで」と直接訴えたくなる方は少なくありません。
しかし、これは関係修復から最も遠ざかる行動の一つです。あなたが好きな人を責めると、配偶者はその人を守ろうとして、かえって2人の結びつきが強まってしまうことがあるからです。
周りから反対されるほど2人の気持ちが燃え上がる心理は、恋愛ではよく見られるものです。配偶者の目には、あなたが2人を邪魔する存在に、好きな人が守ってあげるべき存在に映ってしまいます。
さらに、感情的なメッセージを送ったり、職場や自宅に押しかけたりすると、内容によっては名誉毀損や脅迫などのトラブルに発展し、あなたが不利な立場に立たされるおそれもあります。
もし不倫が事実で、慰謝料の請求などを考えるのであれば、自分で動く前に必ず弁護士に相談してください。そして関係修復を願うなら、あなたが向き合うべき相手は、好きな人ではなく配偶者です。
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2-5.スマホを盗み見たり後をつけたりする
5つ目は、相手のスマホを盗み見たり、後をつけたりすることです。本当に不倫しているのか確かめたい気持ちから、寝ている間にスマホを見たり、帰り道をこっそりつけたりしたくなる方もいます。
けれども、こうした行動にはいくつもの危険があります。まず、相手のIDやパスワードを使って勝手にSNSやメールにログインすると、不正アクセス禁止法に触れるおそれがあります。また、慣れない尾行は相手に気づかれやすく、思わぬトラブルを招くこともあります。
そして何より、見つかったときに相手からの信頼を一気に失います。相手に監視されていると感じさせることは、関係修復にとって大きなマイナスです。
それに、スマホの中身を見てしまうと、知らなくてもよい言葉まで目に入り、あなた自身が深く傷ついてしまうことも少なくありません。
事実を整理したいときは、相手のスマホではなく、あなたが自分の目で見たことを記録するのがおすすめです。帰宅時間や外出の回数、言われた言葉などを、日付と一緒にノートに書き留めておいてください。
こうした記録は、後で専門家に相談するときにも役立ちます。証拠がどうしても必要な場合は、自分で調べるのではなく、弁護士などの専門家に相談したうえで進めてください。
3.「好きな人ができた」の裏にある相手の本当の気持ち
ここまで、言われた直後に避けたい5つの言動をお伝えしてきました。こうした行動を避けて少し落ち着いてきたら、次に向き合ってほしいのが、相手がなぜ好きな人ができたと口にしたのか、という点です。
先に結論をお伝えすると、好きな人の存在は、多くの場合、それまでの夫婦のすれ違いが表に出てきた結果であり、相手にとっては今の生活からの逃げ場になっています。
相手の本当の気持ちが分からないまま動いても、関係修復はうまくいきません。反対に、心の奥にある気持ちが見えてくると、あなたが何をすればよいのかもはっきりしてきます。
3-1.好きな人ができる前から心は少しずつ離れ始めていた
好きな人ができたと聞くと、相手の心がある日突然、別の人へ移ってしまったように感じるかもしれません。けれども多くの場合、相手の心は、好きな人が現れるずっと前から少しずつ離れ始めています。
私がこれまでお会いしてきたご夫婦の多くも、振り返ってみると、好きな人ができる前から夫婦の間にすれ違いがありました。会話が子どもや家事の連絡だけになっていた、相手の話をきちんと聞いていなかった、お互いに感謝を伝えなくなっていた、といった小さな積み重ねです。
心が満たされない状態が続くと、人は自分の気持ちを分かってくれる誰かを外に求めやすくなります。好きな人の存在は、関係が壊れた原因というより、すでにあったすれ違いが表に出てきた結果であることが多いのです。
例えば、夫から好きな人ができたと告げられたある奥様は、最初は夫が勝手に心変わりしたと思っていました。ところが振り返ってみると、子育てに追われる中で夫の話を聞き流したり、帰りが遅い夫にため息ばかりついていたりしたことに気づいたそうです。
こう聞くと、結局は自分が悪いということなのかと感じるかもしれません。けれども、これはあなたを責めるための話ではありません。どんな理由があっても、配偶者以外の人に気持ちを向けたことの責任は相手にあります。
大切なのは、すれ違いの中にあなた自身が変えられる部分を見つけることです。自分が変えられる部分があるということは、関係を取り戻す力があなたの中にあるということだからです。
3-2.「好きな人」は今の生活からの逃げ場になっていることが多い
次に知っておいてほしいのは、相手にとって好きな人は、今の生活からの逃げ場になっていることが多いという点です。
仕事のプレッシャー、子育ての疲れ、家での居心地の悪さ。こうした毎日のしんどさを抱えているとき、家庭の外にいる好きな人はとても魅力的に見えます。なぜなら、好きな人とは生活の苦労を一緒に背負う必要がなく、楽しい時間だけを過ごせるからです。
つまり、相手が好きになっているのは、好きな人そのものというより、その人といるときの楽な自分である場合が少なくありません。家庭で感じている息苦しさから逃れたい気持ちが、恋愛感情のように感じられていることもあるのです。
ここで大切なのは、相手の好きな人と自分を比べて落ち込まないことです。あなたが好きな人に負けているわけではありません。毎日の生活の場と、たまにしか会わない非日常の場を比べれば、非日常のほうが輝いて見えるのは当然のことです。
逆に言えば、家庭が相手にとって居心地のよい場所に変わっていけば、逃げ場を外に求める理由は少しずつ薄れていきます。実際に、修復がうまくいったご夫婦の多くは、責めることをやめて家の空気が穏やかになるにつれ、相手が家で過ごす時間を少しずつ増やしていきました。
3-3.恋愛感情と不倫(不貞行為)は分けて考える
最後に、冷静に分けて考えてほしいのが、恋愛感情と不倫の違いです。気持ちだけの段階なら法律上の不貞行為にはあたらず、相手の心が戻る余地も大きい状態です。一方、肉体関係がある不貞行為の段階では、慰謝料や有責配偶者といった法律の問題が関わってきます。
2つの段階の違いを、表に整理しました。
| ▼気持ちだけの段階と不貞行為がある段階の違い | ||
| 観点 | 気持ちだけの段階 | 不貞行為がある段階 |
|---|---|---|
| 状態の例 | 好意を打ち明けた、食事やLINEのやりとりをしている | 配偶者以外の人と肉体関係がある |
| 法律上の扱い | 不貞行為にはあたらない | 不貞行為として法定離婚事由にあたる |
| 慰謝料 | 請求は難しいことが多い | 請求できる可能性がある |
| 相手からの離婚請求 | 好きな人ができたことだけでは裁判で認められにくい | 有責配偶者として原則認められない |
| 関係修復の見込み | 相手の心が戻る余地が大きい | 時間はかかるが取り戻すことはできる |
好きな人ができたという言葉だけでは、相手がどちらの段階にいるのかは分かりません。法律でいう不貞行為とは、配偶者以外の人と自分の意思で肉体関係を持つことを指します。
とはいえ、たとえ不倫に進んでいたとしても、関係を取り戻したご夫婦はたくさんいます。どちらの段階であっても、修復をあきらめる必要はありません。
ここで気をつけてほしいのは、事実が分からないうちから「どうせ不倫してるんでしょ」と決めつけないことです。決めつけられた相手は心を閉ざし、本当のことを話してくれなくなります。
相手との関係が気になるときは、問い詰めるのではなく、落ち着いたタイミングで静かに聞いてみてください。
「その人とは、どういう関係なのか教えてほしい。責めたいわけじゃなくて、ちゃんと知りたいんだ」
3-4.相手の気持ちが戻る可能性を示すサイン
ここまで相手の気持ちを見てきて、それでも本当にまだ間に合うのだろうかと不安に感じている方もいると思います。私がこれまで多くのご夫婦を見てきた中で、相手の気持ちが戻りやすい状態に共通していたサインは、毎日家に帰ってくる、日常の会話に応じる、離婚の条件を細かく詰めてこない、の3つです。
まず、好きな人ができたと言いながらも、毎日家に帰ってくる場合です。本当に心が完全に離れていれば、人は家から足が遠のきます。帰ってくるということは、家庭とのつながりを完全には切れていない証拠です。
次に、子どもの話や日常のちょっとした会話には応じてくれる場合です。夫婦としての会話はなくても、家族としてのやりとりが残っているなら、そこから関係を立て直していく糸口は十分にあります。
そして、離婚したいと言いながら、財産や親権などの具体的な条件を詰めてこない場合も、心のどこかで迷いがあることが多いものです。気持ちが揺れているからこそ、決定的な一歩を踏み出せずにいるのです。
ただし、これらのサインが見当たらないからといって、手遅れだと思う必要はありません。サインは、あなたの関わり方しだいで後からいくらでも増えていきます。実際に、最初は会話すらなかった状態から関係を取り戻したご夫婦もたくさんいます。
4.相手の協力がなくても一人から始められる関係修復の5ステップ
相手の本当の気持ちが見えてきたら、いよいよ関係修復に向けて動き出す段階です。とはいえ、今の相手は話し合いに応じてくれなかったり、気持ちが好きな人に向いていたりして、2人で協力して取り組むのは難しいことがほとんどです。
でも、安心してください。夫婦関係は、どちらか一方が先に変わることで動き始めます。私がサポートしてきたご夫婦の多くも、最初はどちらか一人が変わるところから修復が始まりました。
ただし、関係修復には最低でも1年ほどかかるのが一般的です。先の見えない道のりは心が折れやすいので、どのように進んでいくことが多いのか、目安を表にまとめました。
| ▼関係修復までの道のりの目安 | ||
| 時期 | あなたがすること | 起こりやすい変化 |
|---|---|---|
| 最初の3か月 | 心を落ち着かせ、責めない・追わない態度を身につける | 相手の反応はまだ冷たいことが多い |
| 3か月〜半年 | 挨拶や感謝など、穏やかな関わりを続ける | 家の空気がやわらぎ、短い会話が戻ってくる |
| 半年〜1年 | 相手の本音を最後まで聞き、自分の変化を続ける | 相手が本音を話す、好きな人との関係に変化が出る |
| 1年〜1年半 | やり直しの話し合いに向き合い、信頼を積み直す | 夫婦として再出発の話し合いができるようになる |
特に最初の3か月は、相手の反応が冷たくても、ここで土台を作れるかどうかがその後を大きく左右します。この流れを知っておくと、途中で焦らずにすみます。
その第一歩となるのが、次の5つのステップです。
- 【Step1】離婚の話を急がず時間を味方につける
- 【Step2】自分の心を落ち着かせて感情に振り回されないようにする
- 【Step3】夫婦の心がすれ違ってきた原因を振り返る
- 【Step4】責めない・追わない態度で相手に安心感を取り戻してもらう
- 【Step5】一緒にいて心地よいと思われる自分に変わっていく
ステップは上から順番に進めるのが基本です。
4-1.【Step1】離婚の話を急がず時間を味方につける
最初のステップは、離婚の話に今すぐ決着をつけようとしないことです。好きな人ができたと告げた相手は、早く答えを出してほしいと迫ってくるかもしれません。それでも、ここで結論を急ぐ必要はありません。
なぜなら、時間はあなたの味方になってくれるからです。恋が始まったばかりの時期は、相手の気持ちが一番燃え上がっている状態です。しかし、そうした高まりはずっと続くものではなく、時間がたつにつれて好きな人との関係にも現実が見えてくることが多いのです。
一方で、今あなたが慌てて答えを出そうとすると、相手は燃え上がった気持ちのまま決断してしまいます。だからこそ、まずは時間をかけて考えたいという姿勢を、穏やかに伝えておくことが大切です。
例えば、次のような伝え方があります。
「離婚の話は、すぐには決められない。少し時間をかけて考えさせてほしい。その間、私なりに自分のことも見つめ直してみるね」
このように、拒否するのではなく、考える時間がほしいと伝えるのがポイントです。自分も見つめ直すと添えることで、相手も責められていると感じにくくなります。
なお、相手が別居を望む場合に、無理に引き止めて言い争うのは逆効果です。ただ、1章でお伝えしたとおり、別居が長引くと離婚が認められやすくなる面もあります。別居になったとしても連絡や子どもを通じた関わりは保ち、心の距離まで離れないようにしておくことが大切です。
関連記事:別居中の夫婦関係を修復するための進め方(URLを挿入)
4-2.【Step2】自分の心を落ち着かせて感情に振り回されないようにする
時間を確保できたら、次に取り組んでほしいのが、あなた自身の心を落ち着かせることです。好きな人ができたと言われた直後は、悲しみや怒り、不安が波のように何度も押し寄せてきます。
この状態のまま相手と向き合うと、どれだけ頭では分かっていても、すがったり責めたりしてしまいます。関係修復の土台は、相手の言動に一喜一憂せず、落ち着いて対応できるあなたの心です。
心を落ち着かせるために、まず意識してほしいのは、つらい気持ちを外に出す場所を持つことです。ノートに今の気持ちをそのまま書き出すだけでも、頭の中が整理され、少し冷静さを取り戻せます。
また、睡眠や食事など、体を整えることも欠かせません。眠れない日が続くと、心はどんどん悪い方向へ考えるようになります。どうしても眠れない状態が長く続く場合は、ためらわずに医療機関を頼ってください。
具体的な場面で言うと、相手が夜遅くにスマホを触っている姿を見て、胸がざわつくことがあると思います。そんなときは、その場ですぐに何か言うのではなく、いったん別の部屋に移り、深呼吸をしてから自分の気持ちをノートに書いてみてください。
感情をなくす必要はありません。大切なのは、感情に気づき、それに振り回されずに行動を選べるようになることです。この力は、練習すれば誰でも少しずつ身につけていけます。
4-3.【Step3】夫婦の心がすれ違ってきた原因を振り返る
心が少し落ち着いてきたら、3つ目のステップとして、夫婦の心がすれ違ってきた原因を振り返ります。3章でお伝えしたように、相手の心は好きな人が現れる前から、少しずつ離れ始めていることが多いからです。
特にヒントになるのが、相手が以前に口にしていた何気ない言葉です。もっと話を聞いてほしい、家にいても休まらない、といった言葉は、相手からの小さなサインだった可能性があります。
振り返りは、頭の中だけで考えるより、書き出したほうが整理しやすくなります。次のシートを参考に、ノートに書き出してみてください。
| ▼すれ違いの原因を見つける振り返りシート | ||
| 振り返る観点 | 思い出せる出来事・相手の言葉 | 今日から変えられること |
|---|---|---|
| 記入例:相手がよく口にしていた不満 | 家にいても休まらないと言われたのに聞き流していた | 帰ってきたら責めずに、おかえりと迎える |
| 夫婦の会話が減り始めた時期 | ||
| 相手がよく口にしていた不満 | ||
| その不満への自分の応え方 | ||
| 感謝やねぎらいを伝えなくなったこと | ||
| 自分の口ぐせや態度の癖 | ||
ここでよくある失敗が、振り返るうちに自分を責めすぎてしまうことです。全部自分が悪かったと思い込むと、心が苦しくなり、行動する力がなくなってしまいます。
振り返りの目的は、反省して落ち込むことではなく、右の列に書けることを見つけることです。例えば、相手の話を最後まで聞かずに口を挟む癖に気づいたなら、それは今日から変えられる大切な発見です。
原因が見えてくると、あなたがこれから何に取り組めばよいのかがはっきりしてきます。
4-4.【Step4】責めない・追わない態度で相手に安心感を取り戻してもらう
すれ違いの原因が見えてきたら、4つ目のステップでは、それを日々の態度に生かしていきます。具体的には、責めない・追わない態度を続けて、相手に家での安心感を取り戻してもらうことです。好きな人が逃げ場になっている相手にとって、家が居心地のよい場所に変わることは、心が戻ってくるための大切な条件です。
責めないとは、好きな人のことや離婚の話を毎日のように持ち出さないことです。追わないとは、帰宅時間を問いただしたり、行き先をしつこく確かめたりしないことです。
ただし、追わないことは、冷たく放っておくこととは違います。いつもどおりの挨拶をする、穏やかな表情で迎える、小さなことでも感謝を伝える。そうした当たり前のやりとりを、あなたから続けていくことが大切です。
例えば、相手が遅く帰ってきたときに、ため息をつく代わりに、次のように声をかけてみてください。
「おかえり。おつかれさま。ごはん温めようか?」
とはいえ、こうした関わりを続けても、しばらくは相手の反応がほとんど返ってこないことがよくあります。多くの方がくじけそうになるのがこの時期ですが、反応がないのは失敗ではありません。相手は、あなたの変化が本物かどうかを、言葉にせずに見ている最中なのです。
そんな時期を乗り越えるコツは、相手の反応ではなく、自分ができたことに目を向けることです。今日は責めずに迎えられた、感謝を一言伝えられた。そうした小さな前進をノートに書き残していくと、心が折れにくくなります。
また、優しくした見返りを求めないことも大切です。こんなに気をつかっているのに、という気持ちが表に出ると、相手はそれを無言のプレッシャーとして受け取ってしまいます。結果を急がず、淡々と続けることが何より大切です。
4-5.【Step5】一緒にいて心地よいと思われる自分に変わっていく
最後のステップは、相手から見て、一緒にいて心地よいと思われる自分に変わっていくことです。ここで言う心地よい自分とは、相手に合わせて我慢し続ける自分のことではありません。
むしろ大切なのは、あなた自身が自分の毎日を大事にし、心から笑える時間を増やしていくことです。相手のことで頭がいっぱいの状態から抜け出し、趣味や友人との時間、仕事など、自分の人生に目を向けてみてください。
人は、相手のことばかり見て不安そうにしている人より、自分の毎日を穏やかに楽しんでいる人に心をひかれます。あなたが明るさを取り戻していく姿は、相手にとって、この人とならもう一度やり直せるかもしれないと感じるきっかけになります。
また、これまで自分を縛ってきた思い込みを手放すことも大切です。妻ならこうするべき、夫ならこうあるべきといった自分なりのルールが、知らないうちに相手を責める言葉や態度につながっていることがあるからです。
例えば、家事は完璧にこなすべきだと思い込んでイライラしていた方が、その思い込みを手放したところ、家の中に笑顔が増え、相手との会話も自然と戻ってきたというケースもあります。
相手を変えようとするのではなく、自分が変わる。この姿勢を続けることで、夫婦の関係は少しずつ、でも確実に変わっていきます。
5.相手と話すときに使いたい言葉と避けたい言葉
ここまでの5つのステップを続けていくと、相手との間に少しずつ会話のきっかけが生まれてきます。そのときの言葉選びの原則は、答えを求めずに気持ちを伝え、責めずに最後まで聞くことです。
同じ気持ちでも、伝え方ひとつで相手の受け取り方は大きく変わります。ここでは、関係修復を進めるために使いたい言葉と、避けたい言葉を場面ごとにお伝えします。
5-1.「離婚したくない」気持ちを重くならずに伝える言葉
離婚したくないという気持ちは、相手に答えを求めずに、一度だけ静かに伝えるのが効果的です。伝え方によっては、相手に重さや責められている感覚を与えてしまうからです。
避けたいのは、「絶対に離婚なんてしないから」と突っぱねる言葉や、「子どもがかわいそうだと思わないの?」と相手の罪悪感をあおる言葉です。こうした言葉は、相手を追い詰め、話し合いそのものを遠ざけてしまいます。
例えば、次のような言葉です。
「私は、これからもあなたと一緒にいたいと思ってる。すぐに答えはいらないから、それだけは知っておいてほしい」
この伝え方なら、相手に何かを強制することなく、あなたの気持ちだけが伝わります。
別居中で会えない場合や、顔を合わせても話してもらえない場合は、同じ内容を短いLINEや手紙で伝えても構いません。その際は数行程度にまとめ、返事を求める言葉は入れないことがポイントです。
そして、気持ちを伝えるのは一度でよいと考えてください。何度も繰り返すと、最初は届いていた言葉も、相手には重さとしてしか感じられなくなってしまいます。その後のLINEも、子どもの様子や相手を気づかう一言など、軽いやりとりにとどめてください。
一度しっかり伝えたら、あとは言葉ではなく、責めない・追わない日々の態度で示していく。そのほうが、相手の心には深く届いていきます。
関連記事:夫婦の会話を取り戻すための話し方と聞き方(URLを挿入)
5-2.相手の本音を引き出す聞き方
気持ちを伝えることと同じくらい大切なのが、相手の本音を聞くことです。好きな人ができたと言った相手の心の奥には、これまで言えなかった不満や寂しさが隠れていることが多いからです。
本音を聞くときに避けたいのが、「なんで好きな人なんか作ったの?」という聞き方です。理由を問いただす言葉は、相手にとっては責められているのと同じで、言い訳や沈黙しか返ってきません。
代わりに使いたいのが、相手の気持ちに寄り添う聞き方です。例えば、次のようなやりとりです。
「私との生活の中で、どんなときにしんどいって感じてた?」
「……家に帰っても、いつも何か言われてる気がして休まらなかった」
「そっか。休まらないって感じてたんだね。話してくれてありがとう」
ポイントは、相手の言葉をさえぎらず、最後まで聞くことです。そして、相手が言った言葉をそのまま繰り返して受け止めると、相手はちゃんと分かってもらえたと感じやすくなります。
注意したいのは、相手の話に納得できない部分があっても、その場で「でも」と言い返さないことです。言い返したくなる気持ちはぐっとこらえて、まずは受け止めることに集中してください。
相手が本音を話してくれたとき、それは関係修復の大きな一歩です。聞いた内容は、4章の振り返りにも生かすことができます。
5-3.子どもを不安にさせない接し方
子どもがいる夫婦の場合、もう一つ気をつけてほしいのが子どもへの接し方です。夫婦の間に流れるぴりぴりした空気は、言葉にしなくても子どもに伝わっています。
まず避けたいのは、相手の好きな人のことや、離婚の話を子どもに話すことです。子どもにとって、それはあまりにも重すぎる話です。また、相手の悪口を言ったり、子どもに相手の様子を探らせたりするのもやめてください。
特に、子どもを自分の味方につけようとしないことが大切です。どちらかの味方をしなければならない状態は、子どもの心を深く傷つけてしまいます。
子どもが不安そうにしているときは、短くても安心できる言葉をかけてあげてください。
「最近パパとママ、ちょっと大事なお話をしてるけど、あなたのせいじゃないよ。二人とも、あなたのことが大好きだからね」
そして、ごはんや寝る時間など、いつもどおりの生活をできるだけ続けることも、子どもの安心につながります。あなたが落ち着いて毎日を過ごす姿そのものが、子どもにとって一番の支えになるのです。
6.話し合いが進まないときに頼れる場所
ここまでお伝えしてきたことを続けても、相手がまったく話し合いに応じてくれなかったり、離婚を強く迫ってきたりすることもあります。そんなときは、夫婦だけで何とかしようと抱え込まなくて大丈夫です。
頼る先は、状況によって使い分けるのが基本です。修復のための話し合いの場がほしいなら円満調停、相手から離婚調停を起こされたら必ず出席して自分の気持ちを伝える、法律の問題は弁護士に、気持ちを取り戻したいなら夫婦関係の専門家に相談する、という形です。
ここでは、それぞれの場の使い方に加えて、いざというときに慌てないために知っておきたいルールもあわせてお伝えします。
6-1.家庭裁判所の「円満調停」で修復を話し合う
離婚したくない方にぜひ知っておいてほしいのが、家庭裁判所の夫婦関係調整調停(円満)、いわゆる円満調停です。家庭裁判所というと離婚のための場所という印象があるかもしれませんが、夫婦関係を元に戻すための話し合いの場もあるのです。
裁判所の案内によると、円満調停では、夫婦関係がうまくいかなくなった原因や、関係をよくするためにお互いがどんな努力をすればよいかを話し合います。離婚するかどうか迷っている場合にも利用でき、申立ての手数料は収入印紙1,200円分です。
実際、最高裁判所の令和6年の司法統計では、家庭裁判所で扱われた婚姻関係の事件は58,429件にのぼり、円満調整を求める申立ても1,841件ありました。夫婦の問題を公的な場で話し合うことは、決して特別なことではありません。
円満調停のよいところは、調停委員という第三者が間に入ることです。2人きりだと感情的になってしまう話でも、第三者がいることで、お互いに落ち着いて気持ちを伝えやすくなります。
ただし、相手が出席しなければ話し合いは進まず、そのまま終わってしまうこともあります。また、いきなり申し立てると、相手が無理やり話し合いの場に引き出されたと感じることもあります。
そのため円満調停は、4章のステップを続けても家庭の中での話し合いがどうしても難しいときの選択肢として考えておくのがおすすめです。
6-2.離婚調停を申し立てられたときの向き合い方
反対に、相手から離婚調停を申し立てられることもあります。離婚調停を起こされても、あなたが同意しなければ離婚は成立しません。大切なのは、無視せずに必ず出席することです。
裁判所の案内にもあるとおり、離婚調停は、夫婦の話し合いがまとまらない場合や話し合いができない場合に利用する、あくまで話し合いの場です。家庭裁判所から書類が届くと、もう終わりだと感じてしまうかもしれませんが、まだ何も決まってはいません。
出席が大切なのは、欠席を続けると、あなたの考えが伝わらないまま調停が終わり、相手が裁判へ進むきっかけを与えてしまうことにもなるからです。
調停の場では、離婚は望んでいないこと、夫婦関係を見直したいと考えていることを、落ち着いて伝えてください。相手を責める言葉ではなく、2章や5章でお伝えしたように、自分の気持ちとして話すことがポイントです。
また、離婚調停では、親権や養育費、財産分与、年金分割、慰謝料なども話し合われます。その場の流れで条件に同意してしまわないよう、不安なときは事前に弁護士に相談しておくと安心です。
なお、相手が家を出て生活費を渡してくれなくなった場合は、婚姻費用、つまり夫婦の生活費の分担を求める調停を申し立てることもできます。生活の安心を守ることも、落ち着いて関係修復に取り組むための大切な土台です。
6-3.子どもがいる夫婦が知っておきたい最新の離婚ルール
離婚調停では親権や養育費も話し合われるとお伝えしましたが、子どもがいる夫婦の場合、ここが一番気になるところだと思います。離婚したくないと思っていても、もし離婚になったら子どもはどうなるのかという不安は、なかなか消えないものです。
この点について知っておいてほしいのが、離婚後の子どもの養育に関するルールが見直されたことです。法務省によると、親権や養育費、親子交流、財産分与などに関する民法などの改正法が、2026年4月1日から施行されています。
この改正によって、離婚後も父母の両方が親権を持つ共同親権を選べるようになりました。また、養育費の取り決めをしていない場合でも、一定の養育費を請求できる仕組みが新しく設けられるなど、子どもの生活を守るためのルールが整えられています。
こうしたルールを知っておくのは、離婚の準備をするためではありません。もしもの場合のことが分かっていれば、子どもの将来への漠然とした不安に振り回されずに、目の前の関係修復に集中しやすくなるからです。
制度の細かい内容は家庭ごとの状況によって変わるため、くわしく知りたい場合は、法務省のホームページで確認したり、弁護士に相談したりしてください。
6-4.一人で抱え込まずに夫婦関係の専門家を頼る
ここまで公的な場をご紹介してきましたが、何より大切なのは、つらい気持ちを一人で抱え込まないことです。好きな人ができたと言われた悩みは、親しい友人や家族にも話しにくく、孤独になりやすいものです。
相手の心を取り戻して夫婦関係を立て直したいという悩みは、夫婦関係の専門家に相談するのがおすすめです。私が行っているカウンセリングも、夫婦2人で来ていただくものではなく、悩んでいる妻か夫のどちらか一方だけが、パートナーには内緒で相談に来られる形です。
一人で来ていただいて大丈夫なのは、相手が話し合いに応じてくれなくても、あなたから関係修復を始められるからです。
専門家を頼るメリットは、自分では気づきにくいすれ違いの原因や、自分の癖を客観的に見つけられることです。そして、1年ほどかかる関係修復の道のりを、迷わず歩き続けるための支えにもなります。
ただし、相手から暴力を受けている、人格を否定する言葉で追い詰められているといった場合は、関係修復よりもまずあなた自身と子どもの安全を守ることを優先してください。各地の配偶者暴力相談支援センターや、DV相談ナビ(#8008)などの公的な窓口に相談できます。
同じように、あなた自身の心や体が限界を迎えているときも、無理に修復を続ける必要はありません。まずは自分を立て直すことが、結果的に夫婦の未来を守ることにもつながります。
7.「好きな人ができた」から1年かけて夫婦関係を取り戻した実例
ここまで、関係修復のための考え方や行動をお伝えしてきました。とはいえ、本当に自分にもできるのだろうかと不安に感じている方もいると思います。
そこで最後に、パートナーから好きな人ができたと言われた状態から、1年ほどかけて夫婦関係を取り戻したお二人の実例をご紹介します。
7-1.夫から「好きな人ができた」と言われた妻の事例
40代前半のAさんは、結婚15年目で、小学生の子どもが2人いました。ある晩、夫から「職場に好きな人ができた。離婚してほしい」と告げられ、離婚届を渡されたそうです。
Aさんは最初、夫の両親に事情を話し、夫を説得してもらおうとしました。ところが夫は、親まで巻き込まれたことに強く反発し、家ではほとんど口をきかなくなってしまったといいます。
カウンセリングに来られてから、Aさんはまず離婚届の不受理申出をして気持ちを落ち着けました。そして、周りを巻き込んで夫を動かそうとするのをやめ、自分自身を振り返ることに時間を使いました。
その中でAさんは、長い間、夫の家事や子育てのやり方に細かくダメ出しを続けてきたことに気づきました。夫が以前、何をしても文句を言われるとこぼしていたのに、本気で受け止めていなかったのです。
それからAさんは、夫のやり方に口を出すのをやめ、手伝ってくれたときには素直に感謝を伝えるようにしました。3か月ほどたつと、夫が子どもの話をするようになり、半年後には家族で夕食をとる日が増えていきました。
そして1年ほどたったある日、夫から「あの人とはもう会ってない。本当にごめん」と打ち明けられました。1年2か月目には、2人で改めてやり直そうと話し合い、今では以前よりも何でも話せる夫婦になっているそうです。
Aさんの事例から分かるのは、周りの力で相手を動かそうとするより、自分の関わり方を変えて家を安心できる場所にしていくほうが、相手の心を取り戻す大きな力になるということです。
7-2.妻から「好きな人ができた」と言われた夫の事例
次は、反対に妻から好きな人ができたと言われた夫の事例です。30代後半のBさんは、結婚8年目で、保育園に通う子どもが1人いました。妻から突然「好きな人ができた。もう一緒にいられない」と言われ、妻は子どもを連れて実家に戻ってしまいました。
Bさんは最初、妻に何度も電話をかけ、「誰なんだ」「子どもを連れて出ていくなんておかしい」と責め続けました。妻からの返信はほとんどなくなり、別居の状態が続いたといいます。
カウンセリングで振り返る中で、Bさんは、仕事を理由に子育てを妻に任せきりにし、妻の話をまともに聞いてこなかったことに気づきました。妻は長い間、ひとりぼっちで子育てをしているような寂しさを抱えていたのです。
そこからBさんは、責める連絡をやめ、子どもの様子を気づかう短いメッセージだけを送るようにしました。子どもと会う日には、妻の話をさえぎらずに聞くことを心がけ、自分の生活も整えていきました。
半年ほどたつと、妻からの返信が少しずつ増え、3人で公園に出かける日も出てきました。そして1年後、妻は子どもと一緒に家に戻ってきてくれたのです。1年半がたつ頃には、妻から「あの頃は、とにかく今の生活から逃げたかった」と本音を聞けるまでになったそうです。
Bさんの事例は、別居という厳しい状況からでも、一人が変わり続けることで関係は取り戻せることを教えてくれます。
8.好きな人ができたと言われた方からよくある質問
最後に、好きな人ができたと言われて離婚したくないと悩む方から、特によくいただく質問にお答えします。
一方で、関係修復を目指す場合、請求のしかたやタイミングによっては、配偶者が好きな人をかばって心を閉ざしてしまうこともあります。反対に、請求が好きな人との関係を終わらせるきっかけになるケースもあります。
私としては、修復を一番の目的にするなら、感情にまかせてすぐに動くのではなく、弁護士と相談しながら、夫婦関係への影響も考えたうえで判断することをおすすめします。
大切なのは、相手を説得しようとするのではなく、責めない・追わない態度を続けて、家を安心できる場所に変えていくことです。時間がたち、好きな人との関係に現実が見えてきたとき、相手が戻ってこられる場所を整えておくことが、修復への近道になります。
別居中は、責める連絡をやめ、子どもの様子や相手を気づかう短いやりとりで、つながりを保つことが大切です。また、生活費が止まってしまった場合は、家庭裁判所で婚姻費用の分担を求めることもできるので、生活の安心も守りながら、焦らずに関わり続けてください。
おわりに
ここまで、好きな人ができたと言われたけれど離婚したくないという方に向けて、法律の基本から関係修復の具体的な方法までお伝えしてきました。
大切なのは、あなたが同意しない限り離婚は成立しないこと、そして関係修復はあなたから始められることの2つです。最後に、今日から意識してほしいことを確認しておきます。
- 離婚届にはサインせず、不安なら不受理申出をしておく
- すがる、責める、好きな人に連絡する、スマホを見るといった言動をやめる
- つらい気持ちはノートや信頼できる人の前で吐き出す
- すれ違いの原因を振り返り、自分が変えられることを見つける
- 責めない・追わない態度で、家を安心できる場所に変えていく
相手の反応が返ってこない時期も、修復の道のりでは前進の途中です。一人で続けるのがつらくなったときは、私のカウンセリングのように、パートナーに内緒で、あなた一人から相談できる場所も頼ってください。
今はまだ、暗いトンネルの中にいるように感じているかもしれません。けれども、あなたが先に一歩を踏み出したその瞬間から、夫婦の未来は少しずつ動き始めます。
あなたが再び、パートナーと心から笑い合える日が来ることを、私は心から願っています。



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