パートナーが弁護士を立てたと知った瞬間、頭の中が真っ白になり、離婚がもう決まってしまったかのような恐怖を感じた方は少なくありません。
しかし、弁護士が入ったからといって、離婚が確定したわけではありません。まだ十分に関係を修復できる余地は残っています。
厚生労働省の統計によると、令和7年の全国の離婚件数は179,068組で、前年よりも6,836組少なくなっています。離婚に向けた話し合いが始まったとしても、最後まで離婚に至らない夫婦は一定数存在するのです。
この記事では、次のようなことが分かります。
- 弁護士を立てられても離婚が確定しない理由
- 弁護士介入後に実際起こる手続きの流れ
- 離婚回避のために今すぐ避けるべき行動
- 自分も弁護士に相談すべきかの判断基準
- パートナーの協力なしで始められる関係修復の方法
大切なのは、パートナーの協力を待つ必要はないということです。あなた一人からでも、関係修復に向けて動き出すことができます。
1-1.相手が弁護士を立てた本当の意味
相手が弁護士を立てた理由は、必ずしも絶対に別れたいという強い意志だけではありません。
感情的な話し合いを避け、冷静に条件を整理したいと考えている場合や、直接顔を合わせるのがつらいために、第三者を介したいという場合もあります。
つまり弁護士の存在は、離婚の意思の強さを示すものというより、話し合いの進め方を変えるための手段だと捉える方が実情に近いです。
本気で離婚を求めているサインとしては、すでに別居を始めている、具体的な離婚条件の提示がある、話し合いそのものを完全に拒否している、といった状況が重なっている場合です。逆に、これらが揃っていなければ、まだ話し合いで修復できる余地は十分残っています。
1-2.弁護士を立てられても離婚が成立するわけではない理由
弁護士を立てられても、それだけで離婚が成立するわけではありません。
裁判所ウェブサイトの家事事件に関するページによると、話し合いの中で離婚するかやり直すかを決めていくことができるとされています。実際、離婚を求める形で申し立てられた場合でも、話し合いの結果、円満にやり直す方向へ進むことがあると裁判所自身が説明しています。
つまり、弁護士が窓口になったとしても、それは話し合いの入り口に立っただけであり、結論はまだ何も決まっていないのです。
1-3.感情的にならずまず理解しておくべきこと
弁護士からの書面を受け取った直後は、怒りや悲しみ、焦りが一気に押し寄せ、感情のままに動いてしまいがちです。
ですが、この段階で衝動的に行動すると、後々の話し合いに悪い影響を残しかねません。
まずは深呼吸をして、今の状況は交渉の入り口に立っただけだと理解することが、これから先の対応を左右する第一歩になります。
2.弁護士が介入した後に起こる流れ
ここまで、弁護士を立てられても離婚が確定したわけではないという点を確認してきました。ここでは、実際にどのような手続きで話が進んでいくのかを順番に見ていきます。
2-1.協議・調停・裁判の違いと進み方
離婚に関する話し合いは、協議、調停、裁判という3つの段階に分かれます。それぞれの違いを整理すると、次のようになります。
| ▼協議・調停・裁判の違い | |||
| 比較項目 | 協議 | 調停 | 裁判 |
|---|---|---|---|
| 話し合いの相手 | 夫婦二人 | 調停委員を交えた夫婦 | 裁判所 |
| 決め方 | 夫婦の合意 | 夫婦の合意 | 裁判所の判断 |
| 次に進む条件 | まとまらなければ調停へ | まとまらなければ裁判へ | 判決で確定 |
裁判所ウェブサイトの夫婦の離婚等に関するページによると、離婚だけでなく、財産分与や慰謝料、親権、年金分割なども調停の中で話し合うことができるとされています。
ここで大切なのは、調停は裁判のように勝ち負けを決める場ではないという点です。裁判所ウェブサイトの調停手続きに関するページでも、調停は当事者同士の話し合いによって解決を目指す手続きだと説明されています。
弁護士が入ったからといって、いきなり裁判になるわけではありません。表の通り、協議から調停、裁判へと段階を踏んで進んでいきます。
2-2.家庭裁判所は離婚を決める場所だけではない
家庭裁判所と聞くと、離婚を決めるための場所だと思われがちですが、実はそれだけではありません。
裁判所ウェブサイトの夫婦関係調整調停(円満)に関するページによると、夫婦関係が悪化した原因や、関係を改善するためにお互いが何をすべきかを話し合い、解決案や助言を受けられる制度が用意されているとされています。離婚した方がよいか迷っている場合にも利用できます。
もし相手が離婚を求めて調停を申し立てていたとしても、その中で円満に修復する方向へ話が進むケースもあります。離婚調停イコール離婚成立ではありません。
2-3.離婚届が出されるまでの具体的な手続き
弁護士を立てられたからといって、自動的に離婚届が受理されるわけではありません。
法務省ウェブサイトの離婚届に関するページによると、協議離婚の場合は夫婦双方が離婚届を提出することで手続きが成立し、判決や調停、審判、和解などによる裁判離婚の場合は、確定した日から10日以内に届出をおこなうとされています。
いずれの場合も、最終的な合意や法的な手続きの確定がなければ、離婚は成立しません。相手が弁護士を立てただけの段階では、まだ何も決まっていないと考えて差し支えありません。
3.離婚したくない人が今すぐやってはいけないこと
離婚したくない人が最も避けるべきなのは、相手を感情的に追い詰めたり、話し合いの機会そのものを失わせたりする行動です。
ここまで、弁護士が介入した後の流れを確認してきました。ここからは、その中で特に注意しておきたい5つのNG行動を整理します。
- 感情的な連絡や接触を繰り返すこと
- 相手の弁護士からの連絡を無視すること
- その場で離婚条件に同意してしまうこと
- SNSに相手や家庭の状況を投稿すること
- 子どもや親族を巻き込んで説得しようとすること
それぞれについて、詳しく見ていきます。
感情的な連絡や接触を繰り返すこと
弁護士から連絡が来ると、納得できずに相手へ直接LINEや電話を送ってしまいたくなる方は少なくありません。
しかし、感情的な連絡を繰り返すことは、相手の気持ちをさらに固めてしまう危険があります。
相手本人への直接連絡は控え、伝えたいことがあれば弁護士を通じて整理してから届ける方が、結果的に話し合いがスムーズに進みます。
相手の弁護士からの連絡を無視すること
相手の弁護士からの連絡を無視すると、話し合う意思がないと受け取られ、調停や訴訟へと話が進むスピードが早まってしまうことがあります。
連絡の無視は状況を悪化させます。納得できない内容でも、まずは受け取ったことを伝え、必要であれば自分の代理人を立てて対応するのが安全です。
その場で離婚条件に同意してしまうこと
弁護士からの書面には、離婚条件がすでに具体的に書かれていることがあります。内容を見て動揺し、その場で署名や同意をしてしまうと、後から撤回するのは非常に難しくなります。
離婚したくないという気持ちがあるなら、その場で即答せず、一度持ち帰って検討することが何より重要です。
SNSに相手や家庭の状況を投稿すること
離婚問題を抱えている間、SNSに感情的な投稿をしてしまう方がいます。
たとえ相手を名指ししていなくても、共通の知人を通じて内容が伝わり、相手や相手の弁護士の心証を悪くする可能性があります。
投稿した内容は、後から証拠として扱われる場合もあります。離婚したくないと考えているなら、SNSでの発信は控えるのが賢明です。
子どもや親族を巻き込んで説得しようとすること
子どものために思いとどまってほしいという気持ちから、子どもや親族を通じて相手を説得しようとする方もいます。
しかし、子どもを間に立たせることは、子ども自身に大きな負担を与えてしまいます。親族を介した説得も、相手にプレッシャーだと受け取られ、かえって心の距離を広げてしまいかねません。
離婚したくないという気持ちは、まず自分自身の行動と言葉で伝えることが基本です。
ここまで5つのNG行動を見てきました。最後に、当てはまっていないかをチェックシートで確認します。
| 離婚を遠ざける行動チェックシート |
| □ 感情的な連絡や接触を繰り返している □ 相手の弁護士からの連絡を無視している □ その場で離婚条件に同意しそうになっている □ SNSに相手や家庭の状況を投稿している □ 子どもや親族を巻き込んで説得しようとしている |
4.自分も弁護士に相談すべきかの判断基準
ここまで、離婚を回避するために避けるべき行動を確認してきました。ここでは、自分自身も弁護士に相談すべきかどうかの判断基準を整理します。
4-1.弁護士に相談するメリットとタイミング
相手に弁護士がついている場合は、自分も早めに離婚問題に詳しい弁護士へ相談しておくと安心です。法律の知識や交渉の経験に差があると、話し合いの場で不利な条件をそのまま受け入れてしまう恐れがあるからです。
相談だけで足りる場合と、依頼を検討した方がよい場合は次のように分かれます。相手からの連絡内容を自分だけで判断するのが不安な場合や、書面の意味が理解できない場合は、相談だけでも十分です。一方、調停や裁判に進む可能性が高い場合や、財産分与・親権など複雑な条件が絡む場合は、早い段階での依頼を検討した方が安心です。
相談のタイミングは、相手側から書面が届いた直後がもっとも適しています。早い段階で状況を整理しておくことで、その後の話し合いにも落ち着いて臨めます。
4-2.費用が心配な場合の相談先
弁護士に相談したくても、費用が心配で一歩を踏み出せない方も少なくありません。
そのような場合は、日本司法支援センター、通称法テラスの利用を検討してみてください。法テラスでは、経済的に困っている方を対象に、無料法律相談や弁護士費用の立替制度を案内しています。
ただし、費用の立替制度には収入や資産などの基準があり、審査が必要です。まずは無料相談を利用して、自分の状況で何が使えるのかを確認するとよいでしょう。
費用を理由に相談をあきらめてしまうと、判断材料がないまま話し合いが進んでしまいます。まずは一度、話を聞いてもらうところから始めてみてください。
4-3.弁護士に任せきりにしない姿勢の大切さ
弁護士に相談したとしても、すべてを任せきりにしてしまうのはおすすめできません。
弁護士はあくまで法律的な手続きを整理し、交渉を代行する専門家です。夫婦関係そのものを修復する役割ではないという点は、覚えておいていただきたいと思います。
法律面は弁護士に、関係修復は自分自身でという役割分担を意識することが、離婚回避と関係修復を両立させるための現実的な進め方です。
5.弁護士対応と並行して一人から始める夫婦関係修復
ここまで、弁護士との向き合い方を確認してきました。ここでは、弁護士対応と並行して、今日から始められる夫婦関係修復の視点をお伝えします。
5-1.パートナーの協力がなくても始められる理由
夫婦関係の修復というと、二人で話し合いながら進めるものだと考えがちです。
しかし、相手が弁護士を立てるほど心が離れてしまっている段階では、二人で協力して話し合うこと自体が難しいのが実情です。
私はこれまで20年以上、1万組を超える夫婦の関係修復に携わってきましたが、関係が変わり始めるきっかけは、いつもどちらか一方の変化からでした。
相手の変化を待つのではなく、自分自身の受け止め方や関わり方を見直すことが、結果的に相手の気持ちを動かす一番の近道になります。
5-2.自分の言動や関わり方を見直す
一人から始める修復の第一歩は、これまでの自分の言動を振り返ることです。
たとえば、相手の不満を聞き流していなかったか、感情的な言葉で傷つけてしまっていなかったか、忙しさを理由に向き合う時間を後回しにしていなかったか、といった点です。
このとき大切なのは、自分を責めすぎることではありません。事実として何が起きていたのかを、冷静に整理することです。
たとえば、これまで忙しさを理由に、次のような言葉で相手の話を切り上げていなかったか振り返ってみてください。
後でいい?
今それどころじゃないんだけど
こうした言葉の積み重ねが、相手に話を聞いてもらえないという気持ちを抱かせてしまいます。振り返りができると、これから何を変えればよいかが具体的に見えてきます。
5-3.相手の心が離れた背景を理解する
相手が弁護士を立てるという行動に至るまでには、長い時間をかけて積み重なった不満や、諦めに近い気持ちがあります。
多くの場合、一つの出来事がきっかけというよりも、日々のすれ違いが少しずつ積み重なった結果です。
たとえば、妻の立場であれば話を聞いてもらえないという孤独感、夫の立場であれば何をしても否定されるという無力感が、時間をかけて心を離れさせていきます。
私のカウンセリングでも、夫に何を言っても否定されると感じ続けた妻が、少しずつ気持ちを閉ざしていったケースを数多く見てきました。
相手の心が離れた背景を理解できると、感情的な対立ではなく、何を変えれば関係が回復するのかという視点で物事を考えられるようになります。
6.離婚を回避し関係を取り戻すまでの現実的な道のり
ここまで、自分自身が変わるための視点を確認してきました。最後に、修復までの現実的な時間の流れと、専門家に相談するという選択肢をお伝えします。
6-1.修復にかかる期間の目安
夫婦関係の修復には、最低でも1年程度はかかると考えておいてください。
弁護士が介入している状況では、法的な手続きと並行して信頼関係を立て直していく必要があるため、焦って短期間での解決を求めないことが大切です。私がこれまで見てきた事例でも、関係が落ち着きを取り戻すまでには、1年から1年半前後の期間をかけているケースが多くを占めます。
たとえば、40代前半で子どもが二人いるご夫婦の場合、妻に弁護士を立てられたことをきっかけに、夫が自分の関わり方を見直し始めました。その変化の推移を整理すると、次のようになります。
| ▼夫婦関係修復までの時系列例 | |
| 時期 | 状況の変化 |
|---|---|
| 最初の数ヶ月 | 弁護士とのやり取りに気を取られながらも、相手を否定しない対応を意識 |
| 半年を過ぎた頃 | 日常の会話が少しずつ増え始める |
| 1年を過ぎる頃 | 弁護士を通さない直接のやり取りが戻る |
短期間で結果を求めず、長い目で着実に積み重ねていく姿勢を持ってください。
6-2.修復が進んだ夫婦に共通する変化
修復が進んでいく夫婦には、いくつかの共通点があります。
まず、相手を変えようとするのではなく、自分自身の関わり方を変え続けていることです。次に、弁護士とのやり取りと、夫婦としての関わりを分けて考えられるようになっていることです。
たとえば、書面のやり取りでは冷静に対応しながら、日常のちょっとした連絡では以前より穏やかな言葉を選べるようになった、という変化が見られます。
このような小さな変化の積み重ねが、半年、1年という時間の中で、少しずつ相手の気持ちを動かしていきます。
6-3.一人で抱え込まずに専門家に相談する選択肢
ここまでお伝えしてきたことは、あなた一人でも実践できる内容です。ただし、一人で抱え込みすぎないことも同じくらい大切です。
弁護士とのやり取りに加えて、夫婦関係そのものの立て直しまで一人で背負うのは、精神的にも大きな負担になります。
夫婦関係を専門にあつかうカウンセリングでは、パートナーに知られることなく、あなた一人だけで相談することができます。二人で足並みを揃える必要はありません。
まずは自分の状況を整理し、これから何をすべきかを専門家と一緒に考えることが、遠回りに見えて、実は一番確実な道になります。
まとめ
最後に、この記事でお伝えしてきた内容を振り返ります。
弁護士を立てられたとしても、それだけで離婚が決まるわけではありません。まずは落ち着いて、今の状況を正しく理解することが出発点になります。
改めて、離婚したくないと考える今、意識していただきたいポイントをまとめます。
- 感情的な連絡や即答を避けること
- 必要に応じて弁護士に相談すること
- 自分自身の関わり方から変えていくこと
それぞれについて、簡単に振り返ります。
感情的な連絡や即答を避けること
弁護士からの連絡に動揺するのは当然のことです。ですが、感情的な行動は話し合いの余地を自ら狭めてしまいます。
必要に応じて弁護士に相談すること
法律面の不安を一人で抱え込む必要はありません。相談だけでも、気持ちが大きく落ち着きます。
自分自身の関わり方から変えていくこと
私がこれまで1万組以上の夫婦を見てきた中で、修復が実現した夫婦の多くは、どちらか一方が先に変わることから始まっています。
今日からできることとして、まずは相手を責める言葉を一つ減らすことから始めてみてください。小さな変化の積み重ねが、半年後、1年後の関係を大きく変えていきます。
離婚したくないという気持ちは、それ自体が関係を立て直すための大きな力になります。今日からできることを、一つずつ積み重ねていってください。その先に、もう一度笑い合える夫婦の姿があります。



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