配偶者の実家に行くたびに、なんとなく視線が冷たいと感じたことはありませんか。挨拶をしても素っ気ない返事しかもらえない、そんな空気を感じ取ってしまうと、心がすり減っていきます。
やがて、配偶者の態度まで実家寄りに見えてくると、このまま離婚になってしまうのではという不安が頭から離れなくなります。私はこれまで20年以上にわたり、夫婦関係の修復に携わり、1万組を超えるご夫婦と向き合ってきました。その経験から、はっきりお伝えできることがあります。
配偶者の親に嫌われているという事実だけで、夫婦の未来が決まるわけではありません。パートナーの協力が今すぐ得られなくても、あなた一人の行動から状況を変えていくことは十分に可能です。
- 配偶者の親に嫌われることと、離婚するかどうかは別問題であること
- 嫌われてしまった原因を整理し、冷静に振り返る視点
- 夫婦関係をこれ以上悪化させないために避けるべきNG行動
それでは、まず一番気になっているであろう疑問からお伝えしていきます。
1.配偶者の親に嫌われても、それだけで離婚になるわけではない
1-1.「配偶者の親に嫌われた」と気づいた時の、苦しい胸の内
先にお伝えすると、配偶者の親に嫌われていることと、夫婦が離婚するかどうかは別の問題です。義実家に行くと空気が重い、連絡をしても素っ気ない。そんな小さなサインの積み重ねから、嫌われているかもしれないと気づく瞬間があります。
気づいてしまうと、次第に義実家との連絡自体が怖くなり、配偶者との会話にもぎこちなさが生まれてしまいます。
また、嫌われた原因が本人にあるとは限りません。配偶者を介して伝わった話が誤解を含んでいたり、伝え方一つで印象が変わっていたりすることも多くあります。次でその理由をお伝えします。
1-2.親に嫌われていることと、夫婦が離婚するかどうかは別の問題
判断の基準はシンプルです。配偶者と今後についての会話が続いているかどうか、それが離婚に向かっているかどうかを見極める一番の目安になります。
厚生労働省の統計を見ても、令和7年の離婚件数は17万9,068組で、離婚率は1.54となっており、前年よりもわずかに減少しています。
つまり、義実家との関係に悩んでいる夫婦は数多く存在していても、その大半は離婚という結末を選んでいないということです。義実家との不仲は、夫婦関係にとって一つの試練ではありますが、夫婦としての土台そのものが壊れているかどうかとは別軸で考える必要があります。
1-3.離婚は夫婦二人の話し合いで決まるもので、親だけでは決められない
夫婦の未来が離婚と直結しない理由は、統計だけではありません。手続きの仕組み自体にも、その根拠があります。
そもそも離婚という手続きは、夫婦以外の誰かが勝手に決められるものではありません。法務省の案内でも、協議離婚をする場合には、夫婦本人の意思に加えて成年の証人2名の署名が必要とされており、離婚届は夫婦自身が届け出る手続きであると明記されています。
つまり、たとえ配偶者の親がどれだけ離婚を望んでいたとしても、決めるのは夫婦二人だけなのです。
このことを知っておくだけでも、義実家からのプレッシャーに対して、少し冷静に向き合えるようになります。
2.なぜ配偶者の親に嫌われてしまったのか、原因を整理する
2-1.態度や言葉遣いなど、日常的な振る舞いが原因になっているケース
離婚と直結しないことが分かったところで、次はなぜ嫌われてしまったのか、その原因を一つずつ整理していきましょう。あらかじめお伝えしておきたいのは、義実家の多くも、悪意ではなく子どもや家庭を心配する気持ちから、態度が厳しくなっているという点です。
そのうえでよくある原因が、挨拶の声の大きさや、食事の際の振る舞いなど、ごく日常的な立ち居振る舞いが、義実家の価値観と噛み合わないケースです。
例えば、義実家を訪れた際に、緊張のあまり表情が硬くなったり、返事が短くなったりすることがあります。本人にそのつもりがなくても、義両親からは愛想がない、礼儀がないと受け取られてしまうことがあるのです。
このように、悪気のない振る舞いが誤解を生んでいるケースは意外と多く見られます。まずは自分の普段の態度を振り返ってみることが、原因を知る第一歩になります。
2-2.金銭感覚や生活習慣の違いが原因になっているケース
態度や言葉遣い以外にも、原因はあります。次に多いのが、お金の使い方や家事の分担といった生活習慣の違いです。育ってきた家庭によって、この感覚は大きく異なります。
義実家の基準からすると、浪費や怠慢に見えてしまう行動が、本人にとってはごく普通のことだったというケースは少なくありません。例えば、記念日に外食を楽しむ習慣が、義実家からは無駄遣いのように映ってしまうこともあります。
こうした価値観のずれは、どちらか一方が完全に間違っているわけではなく、単純に育った環境の違いによるものです。原因を知ることで、必要以上に自分を責めずに済みます。
2-3.子育てや将来設計に関する価値観の違いが原因になっているケース
生活習慣の違いに加えて、子どもの教育方針や、将来の住まい、貯蓄の考え方など、家庭の将来像に関わる部分でも摩擦が生まれやすくなります。
特に孫が生まれた後は、教育方針への口出しが増え、自分の子育てを否定されていると感じてしまう場面も少なくありません。
将来設計に関する価値観の違いは根深く見えますが、これも育った環境や時代背景の違いによるものがほとんどです。対立ではなく違いとして捉え直すことが、心の負担を軽くしてくれます。
2-4.配偶者が親に相談したことが、誤解を広げてしまっているケース
ここまでの原因は本人側の振る舞いによるものでしたが、配偶者側の行動がきっかけになっているケースもあります。夫婦喧嘩の内容や不満を、配偶者が悪気なく実家に相談してしまい、それが義両親の中で一方的な印象として定着してしまうことがあるのです。
配偶者としては単に愚痴を聞いてほしかっただけでも、義両親には悪い人だという情報だけが伝わってしまうケースは珍しくありません。
このように、原因の多くは深刻な人格の問題ではなく、ちょっとした振る舞いや伝わり方のズレによるものです。
2-5.配偶者が親の意見を優先し、味方をしてしまっているケース
配偶者を介して誤解が広がるケースの延長として、配偶者自身が完全に義実家の味方になってしまっている状況もあります。板挟みで疲れた配偶者が、話し合いを避けるために親の意見に流されてしまうことがあるのです。
この場合、まず配偶者を責めるのではなく、配偶者もまた板挟みで疲れている当事者だと理解することが出発点になります。
配偶者を敵に回すのではなく、味方として巻き込み直すという視点に切り替えることで、状況は少しずつ変わっていきます。
2-6.当てはまる原因をチェックリストで振り返る
ここまでお伝えした原因のうち、ご自身の状況に当てはまるものがないか、一度振り返ってみましょう。
| 義実家に嫌われる原因チェックリスト |
|---|
| □ 挨拶や言葉遣いなど、日常的な態度に硬さがある □ 金銭感覚や生活習慣に違いを指摘されたことがある □ 子育てや将来設計の考え方で対立したことがある □ 配偶者が愚痴や不満を実家に相談している □ 配偶者が話し合いを避け、親の意見に流されがちである |
これらは、いずれも日々の振る舞いや伝わり方のズレによって起きるものです。原因が見えてきたところで、次はやってしまいがちなNG行動について、しっかりお伝えしていきます。
3.親との関係が夫婦仲に影響している時、絶対にしてはいけないNG行動
この状況で避けるべきNG行動は、大きく分けて次の4つです。
- 配偶者に「親と縁を切って」と迫ってしまう
- 親の悪口を配偶者に言い続けてしまう
- 夫婦間の問題をすべて親族に共有してしまう
- 相手の親を必死に説得しようとしてしまう
それぞれ、なぜ避けるべきなのかを順番に解説していきます。
配偶者に「親と縁を切って」と迫ってしまう
配偶者にとって親は、生まれた時からのかけがえのない存在です。次のような言い方は、配偶者を大きく苦しめてしまいます。
もう親とは関わらないでほしい
親を取るか私を取るかはっきりして
このような二択を迫られると、配偶者は板挟みになり、心を閉ざしてしまいます。縁を切らせるのは逆効果になることを知っておいてください。
親の悪口を配偶者に言い続けてしまう
繰り返されると、配偶者は自分の親を否定されているように感じてしまいます。例えば、顔を合わせるたびに義実家の悪口を口にしてしまうと、配偶者は徐々に会話そのものを避けるようになります。
不満を抱くこと自体は自然なことですが、それを配偶者にぶつけ続けることと、関係を修復することは別の話です。不満は、専門家など第三者に整理してもらう方が、夫婦関係への負担を減らせます。
夫婦間の問題をすべて親族に共有してしまう
関わる人が増えるほど、話がこじれた際に収拾がつきにくくなります。夫婦喧嘩の内容や、配偶者への不満を、自分の親や親族にも細かく共有してしまうケースがこれにあたります。
夫婦の問題は、できる限り夫婦二人の間で解決する意識を持つことが大切です。どうしても抱えきれない場合は、親族ではなく専門家に相談する方が、状況を複雑にせずに済みます。
相手の親を必死に説得しようとしてしまう
義両親からすれば、必死な説得はかえって自己弁護や言い訳のように映ってしまうことがあります。嫌われている状況を変えたい一心で、直接説得しようと働きかけてしまうケースがこれにあたります。
本当に力を注ぐべきは、義両親の心証を変えることではなく、配偶者との関係そのものを見つめ直すことです。
ここまでの4つのNG行動を、一覧で振り返っておきましょう。
| NG行動 | なぜ逆効果か | 代わりにすべきこと |
|---|---|---|
| 親と縁を切ってと迫る | 配偶者を板挟みにし、心を閉ざさせる | 配偶者の気持ちを確認する |
| 親の悪口を言い続ける | 自分の親を否定されたと感じさせる | 不満は第三者に整理してもらう |
| 問題をすべて親族に共有する | 関わる人が増え、話がこじれやすくなる | 夫婦二人で解決する意識を持つ |
| 相手の親を必死に説得する | 自己弁護に映り、心証が悪化しやすい | 配偶者との関係を見つめ直す |
4.配偶者の親に嫌われても、まずは自分一人からできることを始める
ここまで、義実家との関係でやってしまいがちなNG行動についてお伝えしてきました。ここからは、配偶者の協力をまだ得られていなくても、あなた一人から始められる具体的な行動についてお伝えしていきます。
取り組んでいただきたいのは、次の4つです。
- 自分の言動を振り返り、変えられる部分から見直す
- 配偶者が何に傷つき、何を感じているのかを確認する
- 親との接触頻度を見直し、夫婦の時間を優先する
- 焦らず、離婚を急いで決めない
それぞれ順番に解説していきます。
自分の言動を振り返り、変えられる部分から見直す
まず取り組んでいただきたいのは、自分自身の振る舞いを振り返ることです。義実家に対する態度や言葉遣いに、無意識のうちに改善できる部分がないかを確認してみましょう。
例えば、挨拶が短くなっていないか、義実家からの連絡への返信が遅れていないかなど、小さな行動から見直すだけでも十分です。
相手を変えようとするよりも、自分から変えられる部分に目を向ける方が、確実に前へ進めます。完璧である必要はなく、できる範囲で少しずつ整えていく姿勢が大切です。
配偶者が何に傷つき、何を感じているのかを確認する
次に取り組んでいただきたいのは、配偶者の気持ちに耳を傾けることです。義実家との板挟みで、配偶者自身も辛い思いを抱えている場合が少なくありません。
次のように穏やかに聞いてみることをおすすめします。
最近、板挟みで辛い思いさせてない?
何か気になってることあったら聞かせて
このように歩み寄る姿勢を見せることで、配偶者は自分の味方だと感じやすくなります。理解しようとする姿勢そのものが、関係修復の土台になります。
親との接触頻度を見直し、夫婦の時間を優先する
次に取り組んでいただきたいのは、夫婦の時間を意識的に確保することです。義実家との接触頻度が多すぎると、夫婦二人だけで向き合う時間が自然と減ってしまうからです。
例えば、実家への訪問回数を月に一度程度に調整したり、連絡の頻度を見直したりするだけでも変化が生まれます。
これは義実家を避けるためではなく、夫婦の絆を優先するための工夫です。境界線を持つことは、決して冷たい行為ではありません。
焦らず、離婚を急いで決めない
最後に大切なのは、離婚という結論を急がないことです。夫婦関係の修復には、一定の時間がかかるのが自然だからです。
ここまでの取り組みを続けていても、すぐに変化が見えないと不安になることがあります。私がこれまで見てきたご夫婦の多くも、関係が落ち着くまでには焦らず地道に取り組む期間が必要でした。
今すぐに結果が出なくても、それは失敗を意味しません。
4-5.一人からの行動で、1年ほどかけて関係が改善した例
ここで、実際にあったケースを一つご紹介します。40代の女性は、義両親から態度を強く指摘され、夫も実家の意見に同調しがちな状況に悩んでいました。
彼女はまず、自分の挨拶や連絡の仕方を見直すことから始めました。数か月後には夫との会話が増え、板挟みの辛さについても話せるようになったといいます。
そこから訪問頻度を調整し、夫婦の時間を優先するようになった結果、約1年ほどで義実家との関係も落ち着き、夫婦としての安心感を取り戻すことができました。このように、一人の行動からでも状況は変えていけます。
5.夫婦だけで話し合いが進まない時に頼れる相談先と、これからの回復への道のり
一人からの行動と合わせて知っておいていただきたいのが、夫婦だけで抱えきれない時に頼れる相談先です。義実家の影響で夫婦だけの話し合いが難しくなっている場合、家庭裁判所の夫婦関係調整調停(円満)という制度を利用する方法があります。
5-1.家庭裁判所の夫婦関係調整調停(円満)という選択肢
夫婦関係調整調停(円満)とは、離婚するかどうかがまだ決まっていない段階でも申し立てられる、家庭裁判所の話し合いの制度です。義実家の影響で夫婦だけの話し合いが難しい場合の選択肢になります。
裁判所の案内によると、この調停は夫婦関係が円満でなくなった際に、円満な関係を回復するための話し合いの場として利用できるとされています。
義実家の意見に配偶者が強く影響されて話し合いが進まない時も、離婚を前提とせずに利用できる選択肢の一つとして知っておくと安心です。
5-2.一人で抱え込まず、専門的な相談先を頼る
家庭裁判所の調停のほかにも、一人で悩みを抱え込まずに利用できる相談先があります。法務省が案内している公的な相談窓口はその一つです。
また、夫婦関係の専門的なカウンセリングの中には、配偶者に知られることなく、悩んでいる本人一人だけで相談できるものもあります。二人で足並みを揃えてから動く必要はありません。
一人で抱え込む必要はありません。自分だけの味方を見つけておくことも、夫婦関係を守るための大切な準備になります。
5-3.関係修復には1年〜1年半ほどの時間がかかることを知っておく
最後にお伝えしたいのは、関係修復にかかる現実的な時間についてです。私がこれまで見てきた事例では、義実家との問題がきっかけで悪化した夫婦関係が落ち着くまでに、おおよそ1年から1年半ほどの期間を要することが多くあります。
回復までの流れの目安を、以下にまとめます。
| ▼関係修復までの期間別の取り組み目安 | |
| 期間の目安 | 取り組む内容 |
|---|---|
| 最初の数か月 | 自分の態度を見直し、配偶者との会話を少しずつ増やす |
| 半年〜1年 | 信頼が積み重なり、夫婦としての安心感が戻り始める |
| 1年〜1年半 | 義実家との関係も落ち着き、関係が安定する |
この時間は、遠回りではなく確実な変化のために必要な期間です。焦らず一歩ずつ進めていくことが、結果的に一番の近道になります。
6.よくある質問
ここまでの内容に関連して、特にお問い合わせの多い質問にお答えします。
まとめ
ここまで、配偶者の親に嫌われてしまった状況でも、離婚を避けながら夫婦関係を守っていく方法についてお伝えしてきました。最後に、大切なポイントを振り返ります。
- 親に嫌われていることと、夫婦が離婚するかどうかは別の問題であること
- 親と縁を切らせようとする、悪口を言い続けるなどのNG行動を避けること
- 相手の変化を待たず、まず自分一人からできることを始めること
親に嫌われていることと、夫婦が離婚するかどうかは別の問題であること
離婚を決めるのは夫婦二人であり、義実家の意見だけで結論が出るものではありません。まずはこの事実を心に留めておいてください。
親と縁を切らせようとする、悪口を言い続けるなどのNG行動を避けること
こうした行動は、配偶者を追い詰め、かえって関係を悪化させてしまいます。感情的になりそうな時ほど、一呼吸置くことを意識しましょう。
相手の変化を待たず、まず自分一人からできることを始めること
パートナーの協力がまだ得られなくても、自分の行動から状況は変えていけます。まずは今日、自分の挨拶や言葉遣いを一つ見直すことから始めてみてください。
義実家との問題は、決して珍しいことではありません。焦らず、1年、1年半という時間をかけながら、夫婦としての絆を取り戻していくことは十分に可能です。今日からできる小さな一歩を、ぜひ踏み出してみてください。





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