離婚調停を申し立てられ、頭の中が真っ白になっているのではないでしょうか。裁判所からの通知を目にした瞬間、もう終わりなのかと不安が押し寄せてくることと思います。ですが、まず知っておいていただきたいのは、調停を申し立てられたからといって、離婚が決まったわけではないということです。私はこれまで20年以上、1万組を超える夫婦の関係修復に携わってきました。その経験から言えるのは、調停はゴールではなく、まだ夫婦関係を立て直せる可能性が残されている段階だということです。
この記事を読むことで、次のことが分かります。
- 離婚調停を申し立てられても離婚が決まるわけではない理由
- 調停で今すぐやるべき対応とやってはいけない言動
- 調停期間中に一人からできる夫婦関係修復のアクション
- 調停が不成立や裁判に進んだ場合に知っておくべきこと
順番に、詳しくお伝えしていきます。
1.離婚調停を申し立てられても離婚が決まったわけではない
まず最初にお伝えしたいのは、離婚調停の申し立てを受けたからといって、それだけで離婚が確定するわけではないという事実です。この事実を正しく理解することが、冷静に対応するための第一歩になります。
1-1.調停は話し合いの手続きであり結論はまだ決まっていない
離婚調停とは、調停委員会が間に入り、夫婦双方の話を聞きながら合意による解決を目指す話し合いの手続きです。裁判所が一方的に離婚を決める場ではありません。
最高裁判所が公表している司法統計でも、家庭裁判所に申し立てられる夫婦関係調整調停は毎年一定数にのぼることが分かっており、離婚調停は決して珍しい手続きではありません。申し立てられたという事実だけで、自分たちの夫婦関係が特別に深刻だと思い詰める必要はないのです。落ち着いて次の一歩を考えていきましょう。
1-2.調停が不成立でもすぐに離婚が成立するわけではない
調停は、双方が合意しなければ成立しません。つまり、相手が離婚を望んでいるからといって、それだけで自動的に離婚になるわけではないということです。
最高裁判所が示している家事調停の制度説明でも、この点が明記されています。調停が不成立になった場合は、次の段階として離婚裁判に進むかどうかが問題になりますが、そこにもまだ夫婦関係を見直す時間は残されています。焦って結論を急ぐ必要はありません。
1-3.離婚が認められるには法律上の離婚事由が必要になる
仮に調停が不成立となり裁判に進んだとしても、相手が離婚を望んでいるというだけで、裁判所が離婚を認めるわけではありません。
民法第770条では、裁判で離婚が認められるのは、不貞行為や悪意の遺棄、長期間の生死不明など、限られた事由に該当する場合のみと定められています。
この点を知っているかどうかで、心の余裕は大きく変わってきます。相手の一方的な意志だけで、あなたの意思に反して離婚が決まる仕組みにはなっていないのです。
2.離婚調停を申し立てられたら今すぐやるべきこと
離婚調停の仕組みが分かったところで、次に大切なのは、実際に今どう動くかです。初動の対応を誤ると、その後の話し合いが不利になってしまうこともあるため、順を追って確認していきましょう。
離婚調停を申し立てられた直後にやるべきことは、次の4つです。
- 呼出状の内容を確認すること
- 照会書に慎重に回答すること
- 調停を欠席せず出席すること
- 感情的にならず状況を記録しておくこと
それぞれについて、詳しく見ていきます。
呼出状の内容を確認すること
呼出状は放置せず、まず内容を確認することが最初の対応です。家庭裁判所から届く呼出状には、調停の日時や場所、持参するものなどが記載されています。
ショックのあまり開封すらできず放置してしまう方もいますが、これは避けるべき対応です。呼出状を放置すると、期日に何も準備できないまま調停当日を迎えることになり、不利な状況を招きかねません。まずは深呼吸をしてから、落ち着いて内容に目を通すことから始めましょう。
照会書に慎重に回答すること
照会書には、離婚したくない理由と今後どうしていきたいかを、整理して書くことが大切です。呼出状と一緒に、事前に自分の考えを記入する照会書が同封されていることがあります。
この照会書は、調停委員があなたの状況を把握するための重要な資料になります。感情的な言葉だけを書き連ねるのではなく、離婚したくない理由と、今後どうしていきたいかを整理して伝えることが大切です。書き方に迷う場合は、弁護士など専門家に相談しながら準備するのも一つの方法です。
調停を欠席せず出席すること
調停は欠席せず、必ず出席することが重要です。欠席してしまうと、離婚したくないというあなたの意思を調停委員に直接伝える機会そのものを失ってしまうからです。
最高裁判所の案内によると、家事調停は原則非公開で行われ、調停委員2名以上と裁判官1名で構成される調停委員会が話し合いを進めます。あなたの言葉を届けられる場が用意されているのですから、その機会をきちんと生かしていきましょう。
感情的にならず状況を記録しておくこと
感情的にならず、これまでの経緯を時系列で記録しておくことが大切です。いつ、どのようなやり取りがあったかを整理しておくことで、調停委員に状況を正確に伝えやすくなります。
感情に任せて相手を責める内容だけを並べるのではなく、事実と自分の気持ちを分けて整理することを意識してください。
ここまでの4つの対応を、チェックシートで振り返ってみましょう。
| 離婚調停を申し立てられた直後の対応チェックシート |
|---|
| □ 呼出状の内容を確認した □ 照会書に離婚したくない理由と今後の意向を整理して書いた □ 調停の期日に欠席せず出席する準備をした □ これまでの経緯を時系列で記録した |
このチェックシートを活用しながら、初動対応を一つずつ確実に進めていきましょう。
3.離婚したくない場合に調停でとるべき対応
初動の対応が整ったら、次に重要になるのが、実際の調停の場でどう伝え、どう振る舞うかです。ここでの対応次第で、相手や調停委員に与える印象は大きく変わってきます。
3-1.調停委員にどう伝えれば気持ちが届くのか
離婚したくない場合、そもそも調停で離婚を拒否できるのかが気になる方も多いはずです。結論として、あなたが離婚に同意しない限り、調停で離婚が成立することはありません。調停は合意を目指す話し合いの場であり、拒否する権利はきちんと守られています。
そのうえで大切なのが、調停委員への伝え方です。調停委員は、夫婦どちらか一方の味方をする立場ではなく、双方の話を公平に聞く役割を担っています。そのため、離婚したくないという気持ちを伝える際は、感情をぶつけるのではなく、なぜ関係を続けたいのか、具体的な理由や今後の改善への意欲を筋道立てて話すことが効果的です。
例えば、これまでの自分の言動を振り返ったうえで、どう変わろうとしているのかを伝えられると、調停委員にも本気度が伝わりやすくなります。
3-2.調停の場でやってはいけないNGな言動
調停の場では、相手を責める発言や、感情的に声を荒げる態度は避けなければなりません。調停委員はあくまで中立な立場で話を聞いているため、一方的な非難ばかりを繰り返すと、かえって心証を悪くしてしまうことがあります。
また、相手の悪い部分だけを並べ立てることも逆効果です。自分の側にも改善できる点があるという姿勢を見せることが、結果的に話し合いを前向きな方向に進めることにつながります。
3-3.相手が本気で離婚を望んでいるかを見極めるポイント
調停に臨むうえで、相手が本当に離婚を強く望んでいるのか、それとも一時的な感情から申し立てているのかを見極めることも大切です。
見極める際は、次のような点に注目してみてください。
- 発言や条件面の主張に迷いがあるかどうか
- 理由や条件をはっきりと示してくるかどうか
- 別居中の連絡や態度に変化があるかどうか
- 弁護士を立てて手続きを進めているかどうか
それぞれについて見ていきます。
発言や条件面の主張に迷いがあるかどうか
調停の場での発言に迷いが見られたり、財産分与や親権などの条件面での主張が曖昧だったりする場合は、まだ気持ちが完全に固まっていない可能性があります。
理由や条件をはっきりと示してくるかどうか
反対に、離婚したい理由と条件をはっきり示してくる場合は、相手なりに真剣に考えている表れとも言えます。
別居中の連絡や態度に変化があるかどうか
別居していても最低限の連絡が続いていたり、子どものことでは協力的だったりする場合は、関係を完全には諦めていない可能性があります。逆に一切の連絡を絶っている場合は、決意が固いことも考えられます。
弁護士を立てて手続きを進めているかどうか
早い段階から弁護士を立て、書面のやり取りが中心になっている場合は、相手の本気度が高いサインの一つです。とはいえ、弁護士を立てること自体は、感情的な衝突を避けるための冷静な対応でもあるため、それだけで判断せず総合的に見ていくことが大切です。
4つの視点を、一度表で整理しておきましょう。
| ▼相手の本気度を見極める判断表 | ||
| 視点 | 本気度が高いサイン | まだ迷いがあるサイン |
|---|---|---|
| 発言・条件面 | 理由や条件が明確 | 主張に迷いがある |
| 別居中の連絡 | 連絡を一切絶っている | 最低限の連絡が続く |
| 子どもへの対応 | 協力姿勢が薄い | 子どものことには協力的 |
| 弁護士の関与 | 早期から弁護士が中心 | 本人同士のやり取りが中心 |
ここまで調停での具体的な対応を見てきましたが、実はこの調停期間こそ、夫婦関係を見直す大切な時間でもあります。
4.調停をきっかけに夫婦関係を修復するためにできること
調停で伝えるべきことが整理できたら、次に考えていただきたいのは、この期間そのものをどう活用するかです。調停はゴールではなく、夫婦関係を見つめ直す機会にもなり得ます。
4-1.調停期間中こそ一人からできる関係修復のアクション
夫婦関係の修復というと、二人で話し合いを重ねる姿を想像されるかもしれません。ですが、調停中はお互いに距離ができている状態のため、まずはあなた一人から始められることに目を向けることが現実的な一歩になります。
一人から始められる行動としては、次のようなものがあります。
- これまでの自分の言動を振り返ること
- 感情に任せた連絡を控えること
- 自分自身の生活を整えること
それぞれについて見ていきます。
これまでの自分の言動を振り返ること
相手を責める前に、自分自身にも改善できる点がなかったかを振り返ることが出発点になります。私のカウンセリングでも、まず自分の言動を見つめ直したことがきっかけで、関係が好転していく方を多く見てきました。
感情に任せた連絡を控えること
離婚したくないという気持ちが強いほど、相手に何度も連絡をしたくなるものです。しかし、感情的な連絡は相手の気持ちをさらに遠ざけてしまうことがあるため、一方的な連絡を控え、まずは自分を整えることを優先してください。
自分自身の生活を整えること
生活リズムを整え、心身のコンディションを安定させることも大切な準備です。落ち着いた状態でいることは、調停の場での対応にも良い影響を与えます。
一人からの行動で関係が変わった事例
40代の女性は、調停を申し立てられた当初、毎日のように相手へ連絡を送っていました。しかし、まずは自分の生活を整え、連絡を控えることから始めたところ、半年ほどで相手から少しずつ歩み寄る姿勢が見られるようになりました。最終的に調停は取り下げられ、夫婦関係を続ける形で落ち着いています。
4-2.相手との適切な距離感を保ちながら信頼を取り戻す
適切な距離感とは、近づきすぎず、かといって完全に関わりを断つのでもなく、相手が安心できる一定の距離を保つことです。調停期間中は相手との接触が限られることも多いですが、だからこそ距離感の取り方が重要になります。
必要な連絡は、感情的な言葉を交えず簡潔に行うことが基本です。焦って関係を詰めようとするほど、相手は警戒心を強めてしまう傾向があります。時間をかけて少しずつ信頼を積み重ねていく姿勢が、結果的に関係修復への近道になります。
4-3.子どもがいる場合に意識しておきたい対応
お子さんがいるご家庭では、調停期間中の親の様子が子どもに大きな影響を与えます。夫婦の対立をそのまま子どもに見せたり、相手の悪口を子どもの前で口にしたりすることは避けなければなりません。
子どもとの会話では、次のような言葉がけを心がけてください。
「大丈夫だよ、ちゃんと話し合ってるからね」
「パパもママも、あなたのことは大好きだよ」
このように、子どもの不安を和らげる言葉を選ぶことが大切です。
5.調停が不成立になった後に知っておくべきこと
調停期間中にできることを見てきましたが、ここからは、万が一調停が不成立になった場合に知っておくべきことをお伝えしていきます。
5-1.調停不成立から離婚裁判に進むケース
調停が不成立になり、相手が離婚を強く望んでいる場合、次の段階として離婚裁判に進むケースがあります。ただし、日本では家事事件手続法により、離婚訴訟の前に必ず家庭裁判所の調停を経る調停前置主義が採用されているため、いきなり離婚裁判になることはなく、必ず話し合いの機会が用意されているのです。
厚生労働省の人口動態統計によると、2024年の離婚件数は183,814組にのぼり、離婚をめぐる問題は決して特別なものではありません。ですが、裁判に進んだとしても、それで全てが終わるわけではありません。
5-2.裁判になっても夫婦関係修復の道が閉ざされるわけではない
離婚裁判に進んだと聞くと、もう後戻りできないと感じてしまうかもしれません。しかし、裁判の途中であっても、夫婦の気持ちが変化すれば、訴えを取り下げて関係を続ける選択をすることも可能です。
実際に、調停や裁判の過程で相手の本音に触れたことがきっかけとなり、お互いに歩み寄れたケースもあります。手続きが進んでいることと、夫婦関係が完全に終わることは、必ずしもイコールではありません。
5-3.婚姻費用や子どもへの影響について
調停や裁判が長引く間も、生活費に関わる婚姻費用の取り決めや、子どもの親権・養育に関する話し合いは並行して進んでいきます。特に子どもがいる場合は、面会交流の頻度や生活環境の変化にも配慮が必要です。
こうした手続き面については、専門的な判断が必要になる場面も多いため、必要に応じて弁護士に相談しながら進めることをおすすめします。よくある疑問について、簡単にお答えします。
6.離婚調停を乗り越えて夫婦関係を修復した先にある未来
離婚調停という大きな危機を経験すると、その先の未来を想像することすら難しく感じるかもしれません。しかし、ここを乗り越えた先には、以前よりも深い信頼関係を築けた夫婦もたくさんいます。
6-1.修復には一定の時間がかかることを理解しておく
夫婦関係の修復は、一朝一夕で叶うものではありません。私のこれまでの経験では、おおむね1年から1年半ほどの時間をかけて、少しずつ関係が変化していくケースが現実的な目安です。焦って急激な変化を求めず、小さな信頼の積み重ねを続けていくことが、結果的に一番の近道になります。
修復までの流れを、時系列の表で確認しておきましょう。
| ▼夫婦関係が修復に向かう3つの段階 | |
| 時期の目安 | この時期に起こりやすいこと |
|---|---|
| 最初の数か月 | 自分の行動を変え、相手との距離を落ち着かせる時期 |
| 半年から1年ほど | 必要な連絡や子どもを通じたやり取りの中で、少しずつ会話が戻り始める時期 |
| 1年から1年半ほど | 日常的なやり取りに安心感が戻り、信頼が積み重なって関係が安定していく時期 |
時間がかかることを最初から理解しておくだけでも、途中で心が折れにくくなります。
6-2.一人で抱え込まず専門家のサポートを頼る選択肢
ここまでお伝えしてきた行動は、どれも一人から始められるものですが、専門家に相談することで、自分では気づけなかった視点やアプローチが見えてくることもあります。
私たちのカウンセリングでは、夫婦そろってではなく、悩んでいるご本人お一人だけで、パートナーに知られずに相談できる形をとっています。私は、自分を変える勇気を持てた人は、必ず夫婦関係を立て直せると確信しています。専門家の力を借りながら進むことが、結果的に近道になることを、これまで多くの方を見てきて実感しています。
6-3.調停を巡るよくある疑問
ここでは、離婚調停を申し立てられた方からよく寄せられる質問にお答えします。
まとめ
離婚調停を申し立てられても、あなたが同意しない限り離婚は成立せず、夫婦関係を立て直す時間はまだ残されています。まずは呼出状の確認や調停への出席など、今すぐできる対応を落ち着いて行うことが大切です。
この記事でお伝えしてきたポイントを、改めて確認しておきましょう。
- 調停は話し合いの手続きであり、離婚が確定した段階ではないこと
- 感情的にならず、一人からできる行動を積み重ねること
- 修復には1年から1年半ほどの時間がかかると理解しておくこと
離婚調停という状況は、決して人生の終わりではありません。あなた一人からの小さな行動が、夫婦関係を立て直すきっかけになることもあります。焦らず、一歩ずつ前に進んでいきましょう。



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