ある日突然、パートナーから「一緒にいるのが苦痛」と告げられ、頭が真っ白になってしまったのではないでしょうか。
何が悪かったのか分からず、これから夫婦がどうなってしまうのか、不安で夜も眠れない。そんな状態の方も多いはずです。
実は、この言葉を投げかけられたからといって、すぐに離婚が決まるわけではありません。多くの夫婦が、この危機を乗り越えて関係を立て直しています。
私はこれまで20年以上、1万組を超えるご夫婦の関係修復に携わってきました。その経験から言えるのは、たとえパートナーの協力が得られなくても、あなた一人からでも関係修復を始められるということです。
この記事では、以下の内容をお伝えしていきます。
- 言われた直後に知っておくべき法的な知識と、やってはいけない行動
- パートナーが「苦痛」と感じてしまった本当の理由
- 一人からでも始められる具体的な修復ステップ
- 修復にかかる現実的な期間と、頼れる相談先
今のつらい状況を変えるために、ぜひ最後まで読んでください。
1.「一緒にいるのが苦痛」と言われても、今すぐ離婚になるわけではありません
まず知っておいていただきたいのは、その言葉だけで夫婦関係が終わるわけではないという事実です。法的な視点と、心の落ち着け方の両方から順番に見ていきましょう。
1-1.法律上、その言葉だけで離婚が成立するわけではない
一緒にいるのが苦痛と言われても、その言葉だけで法的に離婚が成立するわけではありません。
日本の法律では、夫婦のどちらか一方が離婚を望んでいるだけでは、離婚は成立しないと定められています。民法第770条では、裁判で離婚が認められる理由として4つの類型と、その他婚姻を継続し難い重大な事由が規定されています。
つまり、一緒にいるのが苦痛という言葉自体は、この重大な事由に直ちに当てはまるものではないのです。
法務省の家族法制部会資料でも、婚姻を継続し難い重大な事由にあたるかどうかは、個別の事情を総合的に判断するとされています。感情的な一言だけで結論づけられるものではありません。
また、最高裁判所の判例では、婚姻関係が実質的に破綻しているかどうかが重視されるとの考え方が示されています。言葉の強さよりも、実態がどうかが問われるということです。
令和5年の人口動態統計によると、日本の離婚件数は183,808組にのぼります。夫婦関係の悩みは、決して珍しいものではありません。あなたと同じように悩み、そこから関係を立て直した夫婦もたくさんいるのです。
1-2.「一緒にいるのが苦痛」と言われた直後にやってはいけないNG行動
ショックを受けた直後は、行動を急ぎすぎないことが何より大切です。よくあるNG行動を知っておきましょう。
- パートナーを問い詰めること
- 感情的に泣いて引き止めること
- 逆ギレして相手を責めること
それぞれについて、順番に見ていきましょう。
パートナーを問い詰めること
なぜそんなことを言うのか、いつからそう思っていたのかと詰め寄ると、相手はさらに心を閉ざしてしまいます。
感情的に泣いて引き止めること
その場では気持ちが伝わったように見えても、相手にとっては負担になり、距離を置きたい気持ちを強めてしまうことがあります。
逆ギレして相手を責めること
あなたにも原因があると反論したくなる気持ちは自然ですが、この段階でぶつけてしまうと、話し合いの土台そのものが壊れてしまいます。
これらはどれも、傷ついた気持ちから出てしまう自然な反応です。ただ、今すぐの行動を変えるだけで、その後の展開は大きく変わります。
1-3.まず自分の心を落ち着けるためにすべきこと
パートナーに何かをする前に、まずはあなた自身の心を落ち着けることを優先してください。
一人になれる時間を作り、深呼吸をしたり、少し外を歩いたりするだけでも、混乱した気持ちは少しずつ落ち着いてきます。信頼できる友人に話を聞いてもらうのも良い方法です。
パートナーの言葉の裏には、また別の気持ちが隠れていることも少なくありません。心が落ち着いてはじめて、冷静にこれからの行動を考えられるようになります。焦らず、まずはご自身を整えることから始めてください。
2.なぜパートナーは「一緒にいるのが苦痛」と感じてしまったのか
心が少し落ち着いてきたら、次はなぜパートナーがそう感じるに至ったのかを理解していきましょう。相手の気持ちを知ることが、修復への大きな一歩になります。
2-1.突然ではなく、積み重なった結果であることがほとんど
一緒にいるのが苦痛という言葉は、その場の思いつきで出てくるものではありません。多くの場合、長い時間をかけて積み重なった小さな不満やすれ違いの結果です。
私のカウンセリングでも、パートナーから突然そう言われたと感じている方の多くが、実は数か月から数年前から、相手が小さなサインを出していたことに気づいていなかったケースが目立ちます。
会話が減っていた、ため息が増えていた、以前より笑わなくなっていた。こうした変化の積み重ねが、苦痛という言葉になって表れているのです。この前提を理解しておくことが、今後の関わり方を考えるうえで欠かせません。
2-2.「苦痛」という言葉の裏にある本当の気持ち
苦痛という強い言葉は、必ずしも嫌いという気持ちだけを表しているわけではありません。多くの場合、あきらめの一歩手前で発せられる、助けを求めるサインです。
たとえば、ある妻は夫にこう言いました。
「もう一緒にいるの疲れた」
しかし本当に伝えたかったのは、もう一緒にいたくないということではなく、自分の気持ちに気づいてほしい、変わってほしいという願いでした。
言葉の強さと、気持ちの強さは、必ずしも一致しないのです。この前提を知っておくだけでも、パートナーの言葉の受け止め方は変わってきます。
2-3.よくある3つの原因パターン
これまでの経験から、一緒にいるのが苦痛という言葉が出やすい原因には、いくつかの共通したパターンがあります。
- コミュニケーション不足による心のすれ違い
- 相手を思いやる余裕がなくなったことによる疲労の蓄積
- 価値観や生活リズムのずれが解消されないまま放置されたこと
それぞれについて、順番に見ていきましょう。
コミュニケーション不足による心のすれ違い
日々の会話が業務連絡のようになり、気持ちを言葉にする機会が減っていくと、相手が何を考えているのか分からなくなります。分からないことへの不安が、一緒にいることへの疲れに変わっていきます。
相手を思いやる余裕がなくなったことによる疲労の蓄積
仕事や育児に追われる中で、相手のことまで気にかける余裕がなくなってしまうことがあります。悪気はなくても、思いやりの言葉や行動が減れば、相手は孤独を感じやすくなります。
価値観や生活リズムのずれが解消されないまま放置されたこと
家事や金銭感覚、休日の過ごし方など、小さな価値観の違いは、話し合わずに放置すると少しずつ大きなストレスに育ちます。我慢を重ねた結果が、苦痛という言葉になって表れることもあるのです。
ご自身の夫婦関係を振り返ってみたとき、思い当たるパターンはあったでしょうか。当てはまるものが分かれば、次に何を見直せばよいかが自然と見えてきます。
原因の多くは特別な事件ではなく、日々の積み重ねにあります。だからこそ、日々の関わり方を見直すことで、関係を立て直せる可能性は十分にあります。
3.今の夫婦関係、まだ修復できる状態かを見極める
原因が見えてきたところで、次は今の夫婦関係が修復できる状態にあるのかを、一緒に見極めていきましょう。
3-1.関係修復の可能性が高い夫婦に見られるサイン
苦痛だと言われても、まだ会話や迷いが残っている夫婦は、修復の可能性が十分にあります。
たとえば、口では厳しいことを言っていても、子どものことや生活のことについては、まだ普通に会話ができている場合です。完全に会話が途絶えていないのであれば、心のどこかにまだつながりが残っていると考えられます。
こうしたサインが見られる場合は、焦らず今の関わり方を少しずつ見直していくことで、関係を良い方向に変えていける可能性が高いです。
3-2.慎重な判断が必要なケース
暴言や暴力が続いている場合、心身に強い不調が出ている場合は、修復よりも自分の安全を優先すべきです。
パートナーからの暴言や暴力が日常的に続いている場合や、あなた自身の心身に強い不調が出ている場合は、無理に関係修復だけを優先すべきではありません。まずは自分の安全と健康を守ることを最優先にしてください。
また、パートナーの気持ちがすでに別の相手に向いている可能性がある場合も、これまでと同じ関わり方だけでは状況が変わりにくいことがあります。この場合は、次章以降でお伝えする一人からの関わり方に加えて、専門家に状況を整理してもらうことをおすすめします。
こうした状況では、一人で抱え込まず、早めに専門家や医療機関に相談することが何より大切です。自分を犠牲にしてまで関係を続ける必要はありません。
ここまでの内容を、あらためて表で整理しておきます。
| ▼今の夫婦関係、修復の可能性を見極める目安 | |
| 状態 | 今のうちに意識したいこと |
|---|---|
| 厳しいことを言われても、生活や子どもの話は普通にできる | まだつながりが残っているサイン。焦らず関わり方を見直す |
| 苦痛と言われても、別居や離婚は明確に切り出されていない | 気持ちに迷いがあるサイン。距離を詰めすぎない |
| 暴言や暴力が日常的に続いている | 修復より先に、自分の安全と健康を最優先にする |
| 心身に強い不調が出ている | 無理をせず、早めに専門家や医療機関に相談する |
| パートナーの気持ちがすでに別の相手に向いている可能性がある | 一人での関わり方に加えて、専門家に状況を整理してもらう |
そうでない場合の多くは、これからお伝えする一人からできる修復のステップを、少しずつ実践していくことで、状況を変えていける余地が残されています。
4.一人からでも始められる夫婦関係修復の具体的ステップ
ここからは、パートナーの協力がなくても、あなた一人から始められる具体的なステップをお伝えしていきます。
- 感情的な反応を手放し、まず自分を整える
- 距離感を見直し、無理に近づこうとしない
- 小さな信頼を積み重ねる行動を続ける
- パートナーが安心できる関係の空気を作る
順番に、一つずつ詳しく見ていきましょう。
4-1.【Step1】感情的な反応を手放し、まず自分を整える
このステップでは、パートナーの言動に一喜一憂しない自分を作ります。
苦痛だと言われた後は、相手の些細な態度に振り回されやすくなります。素っ気ない返事をされただけで、もうだめだと落ち込んでしまう方も少なくありません。
そんなときは、相手の言動と自分の価値をいったん切り離して考えてみてください。相手の機嫌が悪いのは、あなたの存在そのものを否定しているわけではないことがほとんどです。
日記に気持ちを書き出したり、深呼吸を習慣にしたりするだけでも、感情の波は少しずつ穏やかになっていきます。自分の心が安定してくると、パートナーへの接し方も自然に落ち着いていきます。
4-2.【Step2】距離感を見直し、無理に近づこうとしない
このステップでは、パートナーとの距離感を見直し、無理に近づこうとしないことを意識します。何とか関係を取り戻そうと必要以上に話しかけると、相手にさらに息苦しさを感じさせてしまうことがあるからです。
たとえば、ある夫は妻から距離を置きたいと言われた後、毎日のように話しかけようとして、かえって妻を疲れさせてしまいました。距離を置くことを受け入れ、必要な会話だけに絞ったところ、少しずつ妻の態度が和らいでいきました。
追いかけるのではなく、相手が安心して距離を縮められるよう、あえて余白を作ることを意識してみてください。
4-3.【Step3】小さな信頼を積み重ねる行動を続ける
このステップでは、日々の小さな行動によって信頼を積み重ねていきます。
大きな出来事で一気に関係を変えようとするのではなく、家事や約束事など、当たり前のことを一つずつ確実にこなすことが大切です。小さな積み重ねが、少しずつ相手の安心感につながっていきます。
たとえば、こんな一言を意識してみてください。
「今日は先に洗い物やっとくね」
「送ってくれてありがとう」
見返りを求めず、こうした小さな行動と言葉を淡々と続けることが、信頼を取り戻す一番の近道です。
4-4.【Step4】パートナーが安心できる関係の空気を作る
このステップでは、パートナーが一緒にいて安心できる空気を、家庭の中に作っていきます。
これまでのステップで自分を整え、距離感を見直し、信頼を積み重ねてきたことで、家庭の雰囲気には少しずつ変化が生まれているはずです。この段階では、相手を責めない、否定しないという姿勢を徹底することが欠かせません。
たとえ相手の態度が思うように変わらなくても、感情的に問い詰めたり、過去のことを蒸し返したりしないよう意識してください。
安心できる空気は、一日で作れるものではありません。毎日の積み重ねが、少しずつパートナーの心をほぐしていきます。
4つのステップを、今の自分がどこまで実践できているか、以下のシートで振り返ってみてください。
| ▼一人から始める夫婦関係修復チェックシート | |
| ステップ | 今日からできる行動 |
|---|---|
| Step1 感情的な反応を手放し、まず自分を整える | □ 相手の言動と自分の価値を切り離して考える □ 気持ちを日記に書き出す、深呼吸をする |
| Step2 距離感を見直し、無理に近づこうとしない | □ 必要以上に話しかけない □ 相手が安心できる余白をつくる |
| Step3 小さな信頼を積み重ねる行動を続ける | □ 家事や約束事を一つずつ確実にこなす □ 見返りを求めず、感謝の言葉を伝える |
| Step4 パートナーが安心できる関係の空気を作る | □ 相手を責めない、否定しない □ 過去のことを蒸し返さない |
5.夫婦関係修復にかかる期間とリアルな道のり
ここまでのステップを実践していく中で、多くの方が気になるのが、どれくらいの期間で関係が変わっていくのかということだと思います。
5-1.修復には平均してどれくらいの時間がかかるのか
夫婦関係の修復には、おおむね1年から1年半ほどの時間がかかることが多いです。
これは、私のこれまでの経験から言える現実的な目安です。長年連れ添ってきた夫婦であればあるほど、積み重なったすれ違いも大きくなっているため、短期間で劇的に変わることを期待しすぎると、かえって焦りやストレスにつながってしまいます。
最初の数か月で何の変化も感じられないからといって、修復が失敗しているわけではありません。1年から1年半という期間をあらかじめ心づもりとして持っておくことで、途中で投げ出さずに続けていくことができます。
5-2.一年〜一年半の中で起こりやすい心の変化
この期間の中では、時期ごとに心の変化にある程度の傾向が見られます。
最初の数か月は、これまでの行動を変えても、相手からの反応が薄く感じられやすい時期です。ここで結果を急ぎすぎず、淡々と行動を続けられるかどうかが、大きな分かれ道になります。
半年前後を過ぎるころから、ふとした瞬間に相手の態度が和らいだり、会話が少し増えたりといった小さな変化が見え始めることが多くなります。
そして1年前後を過ぎたあたりで、以前のような自然な会話や、お互いを思いやる言動が戻ってくるケースが多く見られます。
時期ごとの傾向を、以下の表にまとめました。
| ▼夫婦関係修復のリアルな道のり | ||
| 時期 | 相手の変化の傾向 | 自分が意識すべきこと |
|---|---|---|
| 最初の数か月 | 反応が薄く感じられやすい | 結果を急がず、行動を淡々と続ける |
| 半年前後 | 態度が和らぐ、会話が少し増える | 小さな変化を見逃さず、丁寧に受け止める |
| 1年前後 | 自然な会話や思いやりが戻ってくる | これまでの関わり方を無理なく続ける |
こうした流れを知っておくことで、途中で不安になったときも、今はどの段階にいるのかを冷静に振り返ることができます。
6.一人で抱え込まず、誰かに相談してみる
ここまでお伝えしてきたステップは、一人でも実践できるものですが、すべてを一人だけで抱え込む必要はありません。
6-1.パートナーに知られずに相談できる場所がある
夫婦関係の悩みは、パートナーに知られずに専門家へ相談することができます。
私たちが提供しているカウンセリングは、夫婦二人でそろって訪れるものではなく、悩んでいるご本人お一人だけで利用いただけるものです。パートナーに内緒のまま、今の状況や気持ちを整理する場として活用できます。
このほかにも、お住まいの自治体が運営する家庭相談窓口や、法テラスなどの公的な相談機関でも、夫婦関係の悩みについて相談を受け付けています。じっくり気持ちを整理したい場合はカウンセリング、まずは無料で話を聞いてほしい場合は公的な窓口というように、目的に応じて使い分けるとよいでしょう。
6-2.相談することは弱さではなく、関係修復への一歩
相談することに抵抗を感じる方も多いかもしれませんが、それは決して弱さの表れではありません。
自分一人で抱えていると、どうしても視野が狭くなり、同じ考えの中をぐるぐると回ってしまいがちです。このままではいけないと気づき、行動を起こそうとすること自体が、すでに関係修復への大切な一歩です。
実際に、最初は一人で悩んでいたけれど、相談をきっかけに自分の関わり方を見直し、半年ほどでパートナーとの会話が戻ってきたという方もいらっしゃいます。もし今、一人で抱えきれないと感じているなら、無理をせず、専門家の力を借りることも選択肢に入れてみてください。
7.よくある質問
ここまでの内容を踏まえて、よく寄せられる質問にお答えします。
まとめ
パートナーから一緒にいるのが苦痛と言われても、それだけで夫婦関係が終わるわけではありません。まずは自分の心を落ち着け、相手の言葉の裏にある気持ちを理解することから始めてみてください。
- 感情的な反応を手放し、まず自分を整えること
- 距離感を見直し、無理に近づこうとしないこと
- 小さな信頼を積み重ねる行動を続けること
- パートナーが安心できる関係の空気を作ること
修復には1年から1年半ほどの時間がかかることが多いですが、焦らず一つずつ積み重ねていけば、関係を良い方向へ変えていくことは十分に可能です。
パートナーの協力が得られなくても、あなたが変わることから、夫婦関係は動き始めます。まずは今日、この記事の中で一番心に残ったステップを一つだけ選び、実際に行動に移してみてください。その小さな一歩が、これからの夫婦関係を大きく変えていきます。








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