夫と話し合っているうちに、いつの間にか夫の親まで話に加わり、離婚に賛成していると知った時の衝撃は、計り知れないものがあります。夫婦二人の問題だと思っていたのに、味方だと思っていた人まで離婚側についてしまったように感じ、孤立感や焦りを抱えている方も多いのではないでしょうか。
私はこれまで20年以上、1万組を超える夫婦の相談を受けてきましたが、義両親が離婚に賛成しているという状況で相談に来られる方は、決して少なくありません。そして、そのほとんどの方が「もう後戻りできないのではないか」と不安に感じています。
ですが、先にお伝えしておきたいのは、義両親が賛成しているからといって、それだけで離婚が決まってしまうわけではないということです。この記事では、まず知っておくべき正しい知識をお伝えした上で、離婚したくないと願う方が今から何をすべきかを、一人からでも始められる形でお伝えしていきます。
1.夫の親が離婚に賛成しても、それだけで離婚が決まるわけではない
夫の親が離婚に賛成していると聞くと、まるで離婚が確定してしまったかのように感じてしまうかもしれません。ですが、そこには誤解があります。まずはこの誤解を解くところから始めていきます。
1-1.離婚が成立するのは夫婦本人の意思と手続きによるものである
離婚が成立するかどうかを決めるのは、あくまで夫婦本人です。義両親がどれだけ強く賛成していたとしても、それだけで離婚が成立することはありません。
日本で離婚をする場合、多くは夫婦の話し合いによる協議離婚という形が取られます。協議離婚が成立するためには、夫婦双方が離婚に合意し、離婚届を提出する必要があります。
つまり、義両親が賛成していても、夫婦のどちらかが離婚に同意しなければ、離婚は成立しないのです。まずはこの事実を、しっかりと心に留めておいてください。
1-2.義両親の賛成・反対は離婚届の要件に含まれていない
離婚届の提出に、義両親の署名や同意は法律上必要ありません。法務省の情報によると、協議離婚の場合、離婚届には成年の証人2名の署名が必要とされています。
この証人は夫婦の親族でも友人でも構いませんが、義両親が証人になることが義務付けられているわけではありません。義両親がどれだけ離婚に賛成する発言をしていても、それ自体が離婚届の正式な手続きに直接影響することはないのです。
この点を知っておくだけでも、少し肩の力が抜けるのではないでしょうか。
1-3.感情的に「もう終わりだ」と決めつける前に知っておきたいこと
義両親の発言は、あくまで義両親自身の受け止め方や考え方に基づくものであり、夫婦関係の最終的な結論そのものではありません。この事実を知らないまま結論を急いでしまうと、本来であれば修復できたはずの関係まで諦めてしまうことにつながりかねません。
義両親から離婚に賛成する言葉をかけられると、頭が真っ白になり、もう何をしても無駄なのではないかと感じてしまうこともあると思います。ですが、ここで一度立ち止まって考えていただきたいのです。
2.夫の親が離婚に賛成している理由を知る
夫の親が離婚に賛成する理由には、いくつかのパターンがあります。まずは代表的な理由を整理してみます。
- 息子(夫)から一方的な話を聞いて判断している
- 夫婦の様子を実際に見て判断している
- 夫婦喧嘩や別居への介入がきっかけになっている
- モラハラやDVなど深刻な問題を認識している
- 義両親自身が離婚を望んでいる
- 孫への影響を心配している
それぞれ詳しく見ていきます。
息子(夫)から一方的な話を聞いて判断している
義両親は、多くの場合、夫からの話を通じて夫婦の状況を知ります。そのため、夫が自分に都合の良い形で状況を伝えていると、義両親は妻側にだけ問題があるかのように誤解してしまうことがあります。
例えば、夫婦喧嘩の原因が夫にもあったとしても、夫が「妻が急に怒り出した」とだけ伝えていれば、義両親は妻の言動だけを問題視してしまいます。このような一方的な情報に基づく誤解は、実際の相談の中でも珍しくありません。
このケースでは、義両親自身が悪意を持っているというより、単に正確な情報を得られていないことが原因になっている場合が多くあります。
夫婦の様子を実際に見て判断している
一方で、義両親が実際に夫婦の様子を見て、自分なりに判断しているケースもあります。同居している場合や、頻繁に顔を合わせている場合は特にこの傾向が強くなります。
日頃の会話の様子や、夫婦間の態度、表情の変化などを見て、義両親なりに深刻さを感じ取っていることもあります。この場合は、一方的な情報というよりも、義両親自身の観察に基づいた判断であるため、対応の仕方も変わってきます。
夫婦喧嘩や別居への介入がきっかけになっている
また、夫婦喧嘩が激しくなったり、別居に至ったりしたことをきっかけに、義両親が介入してくるケースもあります。特に別居は、義両親にとって「もう修復は難しい」と感じさせる大きな出来事になりやすいものです。
別居中に連絡が取れない状態が続くと、義両親は状況をより深刻に受け止め、離婚もやむを得ないと考えるようになることがあります。
モラハラやDVなど深刻な問題を認識している
義両親が離婚に賛成する背景に、モラハラや暴力といった深刻な問題が関係している場合もあります。内閣府の調査では、配偶者から何らかの被害を受けた経験があると回答した人は、女性で27.5パーセント、男性で22.0パーセントにのぼるとされています。
このような深刻な問題を義両親が把握している場合、義両親は息子や娘を守るために離婚を勧めていることが多く、単なる感情論として片付けられるものではありません。もし心当たりがある場合は、まずご自身の安全を最優先に考えていただきたいと思います。一人で抱え込まず、配偶者暴力相談支援センターなど公的な窓口に相談することも検討してください。
義両親自身が離婚を望んでいる
そのほか、義両親自身が何らかの事情から離婚を望んでいるケースもあります。例えば、以前から相手のことをあまり快く思っていなかったり、家庭内での価値観の違いに不満を抱えていたりする場合です。
このようなケースでは、夫婦間の問題というよりも、義両親自身の感情が強く反映されていることがあります。
孫への影響を心配している
子どもがいる夫婦の場合、義両親は孫への影響を心配して、離婚に賛成することがあります。夫婦が険悪な状態を続けるよりも、早めに離婚した方が子どものためになるのではないかと考えるためです。
この場合、義両親は決して夫婦を突き放したいわけではなく、孫の幸せを願う気持ちから発言していることが多いといえます。
ここまで見た理由は、一つだけが当てはまるとは限らず、複数が重なっているケースも多くあります。まずはご自身の状況が、どの理由に近いのかを振り返ってみてください。
- 夫が義両親に一方的な話をしている可能性がある
- 同居や頻繁な訪問で夫婦の様子を見られている
- 夫婦喧嘩や別居が義両親の耳に入っている
- モラハラや暴力について義両親が知っている
- 義両親自身が以前から不満を持っていた
- 孫(子ども)への影響を義両親が心配している
以下の表に、当てはまるものをチェックしてみてください。複数当てはまる場合は、それぞれの理由に応じた対応を組み合わせて考える必要があります。
| 理由 | 当てはまる |
|---|---|
| 夫からの一方的な話 | ① |
| 夫婦の様子を実際に見ている | ② |
| 夫婦喧嘩・別居への介入 | ③ |
| モラハラ・DVの認識 | ④ |
| 義両親自身の不満 | ⑤ |
| 孫への影響の心配 | ⑥ |
それが分かるだけでも、この先どう動けばよいかが見えやすくなります。
3.義両親の賛成によって離婚協議はどう進むのか
夫の親が離婚に賛成する理由がどのようなものであっても、実際の離婚協議がどう進むのかを知っておくことは、今後の見通しを立てる上で大切です。
3-1.まず優先されるのは夫婦間の話し合いであるという基本
離婚に関する話し合いは、あくまで夫婦本人同士で行うことが基本です。義両親が間に入って発言することはあっても、話し合いの主役は夫婦本人であることに変わりはありません。
義両親の意見に影響されすぎて、自分の本当の気持ちを置き去りにしてしまわないよう注意が必要です。まずは、夫婦本人としてどうしたいのかを、改めて自分自身に問い直してみてください。
3-2.話し合いがまとまらない場合に利用できる家庭裁判所の手続き
夫婦間の話し合いだけでは意見がまとまらない場合には、家庭裁判所の夫婦関係調整調停という手続きを利用することができます。裁判所の案内によると、1回の調停期日はおおむね80分程度とされています。
この調停には、離婚を目的とした夫婦関係調整調停(離婚)だけでなく、関係修復を目的とした夫婦関係調整調停(円満)という手続きも用意されています。それぞれの違いを整理すると、以下のようになります。
| 夫婦関係調整調停(離婚) | 夫婦関係調整調停(円満) | |
|---|---|---|
| 主な目的 | 離婚条件の話し合い | 夫婦関係の修復 |
| 向いている人 | 離婚を前提に進めたい人 | 離婚したくない人 |
| 調停での役割 | 離婚に伴う条件を整理する | 気持ちのずれを整理する |
円満調停では、調停委員という第三者を交えて、夫婦それぞれの気持ちを整理しながら話し合いを進めることができます。夫婦だけで話すと感情的になりやすい場合でも、第三者を挟むことで冷静に気持ちを伝えやすくなるという利点があります。つまり、離婚したくないという思いがある場合にも、正式に利用できる制度があるということです。
3-3.子どもがいる場合に整理しておきたい親権・養育費・親子交流
子どもがいる夫婦の場合、離婚するかどうかだけでなく、親権や養育費、親子交流についても考えておく必要があります。親権とは離婚後に子どもの世話や財産管理を担う権利、養育費とは子どもの生活や教育のために支払われるお金、親子交流とは離婚後も子どもと会って関わりを持つことを指します。
2026年4月には改正民法が施行され、親子交流などに関するルールが見直されました。こうした制度を知っておくことは、離婚を前提とした準備のためだけではありません。
子どもの存在は、夫婦がもう一度向き合い直すきっかけにもなり得るものです。義両親の賛成や反対だけに気を取られず、子どものために夫婦としてどうありたいかを考えることも、大切な視点になります。
ここまでで、義両親の賛成という状況が、法律上どのような意味を持つのかは整理できたかと思います。ですが、状況を理解するだけでは、関係は変わりません。次の章からは、離婚したくないと考えている方が、今この瞬間から一人でも始められる具体的な行動についてお伝えしていきます。







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