パートナーから離婚を切り出され、しかも自分の言動をモラハラだと指摘されると、頭の中が真っ白になってしまう方は少なくありません。
突然のことに動揺し、何をどうすればいいのか分からず、不安な夜を過ごしている方もいらっしゃると思います。
私はこれまで20年以上、1万組を超えるご夫婦の関係修復に携わってきました。その中で分かったことは、モラハラと言われたからといって、必ずしも離婚に至るわけではないということです。
大切なのは、正しい知識を持ち、今できることから一つずつ取り組んでいくことです。この記事では、モラハラと言われて離婚したくないと悩む方に向けて、次の内容をお伝えしておきます。
[l-h/この記事で分かること/l-h] [l-b/1.モラハラと言われても離婚が避けられる可能性があるという事実
2.自分の言動を客観的に振り返るためのセルフチェック
3.パートナーの協力がなくても今日から始められる具体的な行動
4.相手の心を取り戻すための関わり方と信頼の積み重ね方
5.関係修復にかかる現実的な期間と専門家への相談タイミング
/l-b]
これらを順番にお伝えしていきます。
■■■1.モラハラと言われても離婚は避けられるのか?知っておきたい今の状況
■■1-1.モラハラと言われただけで即座に離婚が成立するわけではない理由
モラハラと言われても、あなたが同意しない限り、それだけで離婚が成立することはありません。
日本の離婚には、夫婦の合意による協議離婚と、家庭裁判所の手続きを経る裁判離婚があります。協議離婚は、双方が話し合って合意しない限り成立しません。
一方、裁判離婚が認められるには、民法で定められた法定離婚事由に該当する必要があります。モラハラという言葉自体は法律用語ではなく、精神的な暴力や支配的な言動を指す通称として使われています。
@/相手からそう指摘されたとしても、それだけで裁判所が離婚を認めるとは限りません/@。この事実を知っているだけでも、少し肩の力が抜けるのではないでしょうか。
焦って感情的な対応をしてしまう前に、まずは落ち着いて現状を整理することが大切です。
■■1-2.離婚が認められる法的な条件と最新の統計データ
裁判離婚が認められるのは、次の5つの事由のいずれかに該当する場合に限られます。
不貞行為、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、回復の見込みのない強度の精神病、そしてその他婚姻を継続し難い重大な事由の5つです。
モラハラが問題になる場合は、多くがこの最後の項目に含まれますが、裁判所は言動の程度や継続性、婚姻関係が実質的に破綻しているかどうかを総合的に判断します。
厚生労働省の人口動態統計特殊報告でも、離婚に至るまでには一定の同居期間や別居期間を経ているケースが多いことが示されており、指摘を受けてすぐに離婚に至るわけではない実情がうかがえます。
@y/一度の指摘や一時的な感情のもつれだけで、婚姻関係が破綻したと判断されることは通常ありません/y@。この点を正しく理解しておくことが、冷静な対応への第一歩になります。
■■1-3.慰謝料や親権への影響はどう考えればいいのか
次に気になるのが、慰謝料や親権への影響ではないでしょうか。慰謝料が認められるのは、モラハラの内容が悪質かつ継続的で、相手に強い精神的苦痛を与えたと客観的に認められる場合です。
内閣府男女共同参画局の男女共同参画白書によると、2024年に終局した保護命令事件は1,516件、実際に発令されたのは1,168件で、全国に配偶者暴力相談支援センターは317か所設置されています。
@r/法的な保護命令が発令されるのは身体的な危険が及ぶような深刻なケースに限られ、モラハラと言われただけで直ちに重大な法的措置に発展するわけではありません/r@。
親権についても、モラハラの有無だけでなく、子どもの生活環境や養育実績など、総合的な事情が考慮されます。まずは事実関係を正確に把握し、必要であれば専門家に相談しながら、落ち着いて対応していくことが望まれます。
■■■2.そもそも自分は本当にモラハラなのか?セルフチェックと原因の理解
ここまでは、法律的な視点から見た現実についてお伝えしてきました。ただ、法律の知識だけでは、目の前の関係を本当に良くすることはできません。
次に大切なのは、指摘された言動を冷静に振り返り、自分自身を理解することです。ここからは、モラハラと言われた背景にある行動や心理について、一緒に見ていきます。
■■2-1.モラハラに該当する言動とそうでない言動の違い
モラハラとひとことで言っても、その中身は人によって受け取り方が異なります。まずは、どのような言動が該当し、どのような言動は該当しないのかを整理しておきます。
| モラハラに該当しやすい言動 | モラハラには該当しにくい言動 |
|---|---|
| 相手の人格を否定する言葉を使う | 意見の違いを率直に伝える |
| 長時間の無視や無関心な態度をとる | 気持ちが落ち着くまで少し距離を置く |
| 行動や交友関係を細かく管理しようとする | 家庭内のルールについて話し合う |
@/大切なのは、伝え方と頻度、そして相手がどう感じているかという視点/@です。たとえ悪気がなくても、繰り返し強い言葉を使ったり、相手の気持ちを置き去りにした一方的な態度が続いたりすると、相手にとっては大きな負担になります。
まずは、指摘された具体的な場面を思い出し、自分の言動がどのような影響を与えていたのかを客観的に振り返ることが出発点になります。
■■2-2.自分でできるモラハラ度セルフチェック
それでは、自分自身の言動を客観的に確認するために、簡単なセルフチェックをご用意しました。3つ以上当てはまる場合は、次の章で紹介する行動から意識して見直していただきたいと思います。
| モラハラ度セルフチェック |
|---|
| □ 相手の意見を頭ごなしに否定することが多い □ 「お前が悪い」など相手を責める言葉をよく使う □ 相手の交友関係や外出を細かく管理しようとする □ 不機嫌になって長時間無視をすることがある □ 相手の話を最後まで聞かずに遮ってしまう □ 家計や行動を厳しく制限している |
当てはまる項目が多いほど、相手が精神的な負担を感じていた可能性が高いと考えられます。ただし、これはあくまで振り返りのための目安であり、当てはまったからといって自分を過度に責める必要はありません。
大切なのは、気づいた今から少しずつ言動を変えていくことです。実際に、最初は自分は悪くないと感じていた方が、こうしたチェックを通して自分の態度を振り返り、変化のきっかけをつかんだケースを数多く見てきました。
■■2-3.なぜ自分がそのような言動をしてしまったのか、背景にある心理
ここまで振り返ってみて、なぜ自分がそのような言動をしてしまったのか、疑問に感じた方もいらっしゃると思います。
内閣府男女共同参画局の調査によると、令和6年度に全国の配偶者暴力相談支援センターに寄せられた相談は127,796件にのぼり、決して珍しい問題ではないことが分かります。
多くの場合、モラハラ的な言動の背景には、仕事や育児のストレス、自分に自信が持てない不安、相手への期待が大きすぎることなどが隠れています。
自分が育った家庭環境の中で、そうしたコミュニケーションの取り方が当たり前になっていたというケースも少なくありません。
大切なのは、原因を知った上で、同じパターンを繰り返さないための行動に移すことです。原因が分かれば、次に何をすればいいのかも見えてきます。
■■■3.パートナーの協力がなくても今日から始められる一人での行動
ここからは、パートナーの協力がなくても、あなた一人から始められる具体的な行動についてお伝えしていきます。
■■3-1.今すぐやめるべき言動とその理由
関係修復に向けて動き出す前に、まずはやめるべき行動を確認しておくことが大切です。良かれと思ってしていることが、かえって相手との距離を広げてしまう場合があるからです。
特に注意していただきたいのが、次の3つです。
[l-h/今すぐやめるべき3つの言動/l-h] [l-b/・毎日何度も謝罪のメッセージを送ること
・なぜ分かってくれないのかと問い詰めること
・相手の行動を監視するような連絡をすること
/l-b]
それぞれ順番に見ていきます。
■毎日何度も謝罪のメッセージを送ること
謝罪自体は大切ですが、何度も繰り返すと相手にとっては重荷になってしまいます。相手は返信のプレッシャーを感じ、かえって距離を置きたくなることがあります。
■なぜ分かってくれないのかと問い詰めること
問い詰める行為は、相手からするとまさにモラハラと感じた言動そのものである場合が多いです。@r/自分を正当化しようとする姿勢は、修復から一番遠ざかる行動です/r@。
■相手の行動を監視するような連絡をすること
今どこにいるのか、誰といるのかを頻繁に確認する行為は、信頼関係をさらに損ないます。相手が安心して距離を取れる状態を作ることが、実は近道になります。
やめるべき行動と、代わりにとるべき行動を一覧で整理しておきます。
| やめるべき行動 | 代わりにとるべき行動 |
|---|---|
| 毎日何度も謝罪のメッセージを送る | 1日1回程度に留め、返信を急かさない |
| なぜ分かってくれないのかと問い詰める | 相手の言い分をまず最後まで聞く |
| 相手の行動を監視するような連絡をする | 相手のペースと距離を尊重する |
■■3-2.一人でできる関係修復の第一歩
パートナーの協力が得られなくても、あなた一人から始められることは数多くあります。まず取り組んでいただきたいのが、自分の言動を記録する習慣です。
その日にあった出来事と、自分がどう反応したかを簡単にメモしておきます。振り返ることで、自分の癖や感情のパターンが見えてきます。
たとえば、これまでは相手の言葉に対してすぐ言い返していた場面で、次のように受け止め方を変えてみます。
「今日、疲れてるみたいで話しかけたら不機嫌な返事をされた」
以前ならすぐに言い返していたところを、いったん飲み込んで「そっか、疲れてるんだね」とだけ返す。
@/この小さな積み重ねが、相手の警戒心を少しずつ和らげていきます/@。一人で始めた変化は、必ず相手にも伝わっていきます。
■■3-3.気持ちを落ち着けるためのセルフケア
行動を変えようとしても、不安や焦りが強いと、つい元の言動に戻ってしまいます。だからこそ、自分の気持ちを落ち着けるセルフケアも欠かせません。
深呼吸をする、散歩に出る、信頼できる友人に話を聞いてもらうなど、方法は何でも構いません。大切なのは、感情的になった瞬間にその場で反応しないことです。
一呼吸置く習慣がつくだけで、相手に向ける言葉は驚くほど変わっていきます。焦る気持ちは分かりますが、急がば回れの精神で、まずは自分を整えることから始めていただきたいと思います。
■■■4.相手の心を取り戻すための関わり方
自分自身の行動を整えられるようになったら、次はパートナーとの関わり方について見ていきます。
■■4-1.相手の心理を理解する
相手がモラハラという強い言葉を使った背景には、単なる一時的な怒り以上の感情が隠れていることが多いです。長期間にわたって我慢を重ね、限界に達していたケースも少なくありません。
また、離婚をちらつかせることで、こちらの本気度を確かめようとしている場合もあります。@y/相手を責める気持ちが湧いたときこそ一度立ち止まり、相手が何を守ろうとしていたのかを想像する姿勢が、関係修復の土台になります/y@。
■■4-2.信頼を取り戻すコミュニケーションのコツ
信頼を取り戻すには、言葉だけでなく行動を伴わせることが欠かせません。約束したことを小さくても確実に守り続ける姿勢が、何よりの説得力になります。
会話の際は、相手を説得しようとするのではなく、まず相手の話を最後まで聞く姿勢を心がけます。
「今日、少し疲れてる感じだったけど大丈夫だった?」
このように、相手の状態を気遣う一言から始めるだけで、以前とは違う空気が生まれます。すぐに変化が見えなくても、根気強く続けることが大切です。
■■4-3.やってはいけない逆効果な行動
関わり方を変えようとする中でも、避けるべき行動があります。焦りから、かえって逆効果になってしまうケースをよく見てきました。
[l-h/関わり方を変える際に避けたい2つの行動/l-h] [l-b/・急に距離を縮めようとすること
・変化した自分を過度にアピールすること
/l-b]
それぞれ見ていきます。
■急に距離を縮めようとすること
相手が距離を置きたいと感じているタイミングで急接近すると、警戒心をさらに強めてしまいます。相手のペースを尊重する姿勢が求められます。
■変化した自分を過度にアピールすること
「もう変わったから」と繰り返し伝えることは、相手にとってはプレッシャーになりがちです。変化は言葉ではなく、日々の行動で自然に伝わっていくものです。
■■■5.関係修復にかかる期間と専門家に相談するタイミング
行動や関わり方が分かったところで、次に気になるのが、どのくらいの時間がかかるのかということだと思います。
■■5-1.関係修復には1年前後の時間がかかると心得ておく
夫婦関係の修復には、おおよそ1年から1年半ほどの時間がかかります。これは、私のこれまでの経験から見えてきた現実的な目安です。
早く結果を求める気持ちは自然なことですが、焦れば焦るほど、相手には伝わってしまいます。長い時間をかけて崩れた信頼は、同じくらいの時間をかけて積み上げ直す必要があります。
時期ごとに起こりやすい変化の目安を整理しておきます。
| 時期 | 起こりやすい変化の目安 |
|---|---|
| 0〜3ヶ月 | 行動を変え始めても、相手の態度に大きな変化は見えにくい |
| 3〜6ヶ月 | 会話の回数がわずかに増え始める |
| 6〜12ヶ月 | 相手から自然に話しかけられることが増えてくる |
| 12〜18ヶ月 | 信頼関係が戻り、以前より穏やかな関係が築ける |
この時間軸をあらかじめ知っておくことで、途中で結果が出ないと感じても、必要以上に落ち込まずに続けていくことができます。
■■5-2.実際に関係を取り戻した夫婦の例
ここで、実際に一人から行動を変えて関係を取り戻した夫婦の例をご紹介します。
40代のご夫婦で、妻から突然モラハラだと言われ、離婚を切り出された男性がいらっしゃいました。最初は納得できず、反論を重ねていましたが、まずは自分の言動を記録することから始めました。
半年ほどかけて、相手を問い詰める癖を手放し、日々の小さな約束を守り続けたことで、少しずつ会話が増えていきました。
1年を過ぎた頃には、妻の方から自然に相談事を持ちかけてくれるようになり、以前よりも穏やかな関係を築けるようになったといいます。
同じように、夫からモラハラだと指摘された妻が、自分の言動を見直すことで関係を取り戻したケースも数多くあります。@/性別に関わらず、一人が変わる決意をすることが関係修復の出発点/@になります。
■■5-3.一人で抱え込まず専門家に相談する意味
ここまでお伝えしてきた行動は、一人でも十分に始められるものです。ただし、状況が深刻な場合や、自分だけでは冷静さを保てないと感じる場合には、専門家に相談する選択肢も持っておいていただきたいと思います。
配偶者暴力相談支援センターは、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律に基づき、相談対応や心理的支援、必要な機関への紹介を行う公的な窓口です。深刻なケースでは、こうした窓口も選択肢の一つになります。
また、夫婦関係の相談は、必ずしも二人そろって行く必要はありません。私たちのカウンセリングも、悩んでいるご本人お一人だけで、パートナーには内緒で訪れていただく形をとっています。
■■■6.よくある質問
ここでは、モラハラと言われて離婚したくない方から実際によく寄せられる3つの疑問にお答えしていきます。
[q/Q1:モラハラと一度言われたら、もう修復は無理なのでしょうか?/q] [a/A:一度そう言われたからといって、修復が不可能になるわけではありません。多くのケースでは、指摘を受けた側が自分の言動を見直し、行動を変えていくことで、関係が少しずつ改善していきます。大切なのは、指摘を否定も肯定もせず、まずは受け止める姿勢です。/a] [q/Q2:話し合いたいと伝えても拒否されたらどうすればいいですか?/q] [a/A:相手が拒否している間は、無理に話し合いを求めず、行動で示す時期だと捉えていただきたいと思います。日々の小さな変化を積み重ねることで、相手の方から自然に心を開いてくれる時期が訪れることが多いです。/a] [q/Q3:モラハラだと言われて自分でも分からなくなってしまったときはどうすればいいですか?/q] [a/A:一人で抱え込むと、かえって視野が狭くなってしまいます。信頼できる第三者や専門家に話を聞いてもらうことで、客観的な視点を得られ、次にすべきことが見えやすくなります。/a]■■■まとめ
ここまで、モラハラと言われて離婚したくないと悩む方に向けて、知っておくべき現実と、一人からでも始められる具体的な行動についてお伝えしてきました。最後に、重要なポイントを振り返ります。
[l-h/この記事で押さえておきたい5つのポイント/l-h] [l-b/1.モラハラと言われただけで自動的に離婚が決まるわけではないこと
2.まずは自分の言動を客観的に振り返ること
3.相手を問い詰めず、行動で信頼を積み重ねること
4.修復には1年前後の時間がかかると心得ておくこと
5.一人で抱え込まず、必要であれば専門家に相談すること
/l-b]
夫婦関係は、どちらか一方が本気で変わる決意をしたときから、必ず動き始めます。相手の協力が得られない今の状況でも、あなたにできることは数多くあります。
@/今日からの小さな一歩が、1年後のお二人の関係を大きく変えていきます/@。焦らず、諦めず、まずはご自身にできることから始めていただきたいと思います。専門家の力を借りることも、決して弱さではありません。




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