夫が家事も育児も何もしていないのに、ある日突然「離婚したい」と言われてしまった。そんな理不尽な状況に、混乱と怒りを抱えている方は少なくありません。
家事も育児もほとんど一人で担ってきたのに、なぜ相手から離婚を切り出されるのか。頑張ってきた分だけ、その理不尽さは深く心に刺さります。
私は夫婦関係修復コーチとして20年以上、1万組を超えるご夫婦の関係改善に携わってきました。その中で、家事育児の負担格差が引き金となって離婚危機に発展したケースを数多く見てきました。
大切なことをお伝えします。相手が変わらなくても、あなた一人から関係修復を始めることは可能です。この記事では、なぜ離婚したいと言われたのか、そしてこれからどう行動すればよいのかを、順番にお伝えしていきます。
1.なぜ「家事育児をしない」のに離婚したいと言われるのか
まずは、多くの方が最初に知りたいと感じる部分からお伝えしていきます。家事育児をしない相手から離婚を切り出される背景には、いくつかの共通した理由があります。
1-1.家事育児の負担格差が生む夫婦間の溝
家事育児をしない相手から離婚を切り出される背景には、日々の負担格差が生む心理的な溝があります。総務省の令和3年社会生活基本調査によると、6歳未満の子どもを持つ夫婦の家事関連時間は、夫が1時間54分、妻が7時間28分となっており、その差は5時間34分にのぼります。
この数字が示すとおり、多くの家庭で家事育児の負担は妻側に大きく偏っています。負担を担う側は日々の疲労とともに、相手への不満を静かに積み重ねていきます。
一方で、負担をかけている側にも言い分があることが多いです。仕事の忙しさや、家庭内での役割への思い込みから、自分が離婚を切り出される立場になるとは想像していないケースも珍しくありません。
このすれ違いが積み重なった結果として、ある日突然「離婚したい」という言葉が飛び出すのです。
1-2.相手が「離婚したい」と口にする本当の心理
負担の差だけが理由とは限りません。家事育児をしていない側から離婚を切り出されると、多くの方が「自分ばかり頑張ってきたのに」と感じます。ここで知っておいていただきたいのは、離婚したいという言葉の裏には、家事育児以外の理由が隠れていることが多いという点です。
私のカウンセリングでも、次のようなケースがありました。共働きで小さなお子さんが2人いるご夫婦で、妻が家事育児のほとんどを担っていました。夫からある日突然「離婚したい」と言われましたが、話を聞いていくと、本当の理由は家事育児の負担そのものではなく、日々の生活の中で夫婦としての会話がほとんど無くなっていたことへの寂しさでした。
このように、家事育児をしないという事実は表面的な理由であり、その奥には夫婦としてのつながりが感じられなくなったという、もっと本質的な悩みが隠れていることが多いのです。
1-3.家事育児をしないことだけで即離婚になるわけではない
家事育児をしないという事実だけでは、法律上の離婚原因には直ちに当てはまりません。裁判で離婚が認められるかどうかは、民法第770条に定められた離婚原因に該当するかどうかで判断されるためです。
同条では、不貞行為、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、強度の精神病、婚姻を継続し難い重大な事由の5つが離婚原因として定められています。家事育児をしないという事実は、この中に直接含まれていません。
つまり、相手が離婚したいと言ったからといって、今すぐ離婚が成立するわけではないということです。
あわせて、もし離婚に発展した場合に気になる親権・財産分与・慰謝料についても、判断基準を整理しておきます。
| ▼離婚に発展した場合の主な判断基準 | |
| 項目 | 主な判断基準 |
|---|---|
| 親権 | これまでどちらが主に育児を担ってきたかなど、複数の事情を総合的に判断 |
| 財産分与 | 離婚原因を作った側かどうかにかかわらず、婚姻中に築いた財産を原則公平に分ける |
| 慰謝料 | 家事育児をしないという理由だけでは認められにくく、不貞行為など明確な原因が必要 |
こうした基礎知識を知っておくだけでも、漠然とした不安は和らぎます。
1-4.「離婚したいと言われた」は決して珍しいことではない
法律面の不安が少し和らいだところで、次にお伝えしたいのは、離婚を切り出されること自体の現実についてです。厚生労働省の人口動態統計によると、令和5年の離婚件数は183,808組、人口千人あたりの離婚率は1.52となっています。
この数字からも分かるとおり、離婚を考える夫婦は決して少数派ではありません。あなたが今感じている混乱や不安は、多くの方が同じように経験してきたものです。
大切なのは、離婚したいと言われたことに絶望するのではなく、そこからどう行動するかです。次の章では、離婚を切り出された直後にやってはいけない行動についてお伝えしていきます。
2.離婚を切り出された直後にやってはいけない3つの行動
離婚したいと言われた直後は、感情が大きく揺れ動きます。しかし、この最初の対応を誤ると、修復できる可能性のあった関係まで壊してしまうことがあります。
離婚を切り出された直後に避けていただきたい行動は、次の3つです。
- 感情的に相手を責め立てる
- 今さら家事育児を完璧にこなそうと焦る
- 相手を問い詰めて追い詰める
それぞれについて詳しくお伝えしていきます。
2-1.感情的に相手を責め立てる
「あなたのせいでこうなった」というように、一方的に相手を責め立てる言動は最も避けていただきたい行動です。一時的に気持ちが晴れたとしても、関係修復の可能性を大きく下げてしまいます。
過去の出来事を蒸し返したり、相手の人格を否定するような言葉を使ったりすることも、同じように危険です。取り返しのつかない傷を相手の心に残してしまう可能性があります。
2-2.今さら家事育児を完璧にこなそうと焦る
離婚したいと言われたことで、急に家事育児を完璧にこなそうと頑張りすぎてしまう方がいます。しかし、これも実は注意が必要な行動です。
急激な変化は、相手にとって不自然に映り、かえって不信感を生むことがあります。大切なのは完璧さではなく、無理のない範囲で続けられる変化を積み重ねていくことです。
2-3.相手を問い詰めて追い詰める
「なぜ離婚したいのか」「本当の理由を言って」と、相手を問い詰めたくなる気持ちはよく分かります。しかし、追い詰められた相手は、本音を話すどころか、ますます心を閉ざしてしまいます。
夫婦の会話では、次のような聞き方が心の距離を縮めやすくなります。
なんで最近元気ないの、話してくれる?
このように、相手を責めるのではなく、相手の気持ちに寄り添う姿勢を見せることが、対話の入口を開く第一歩になります。
今の自分の言動が当てはまっていないか、簡単に振り返ってみましょう。1つでも当てはまる場合は、まずその行動を一旦止めることが、関係修復への近道になります。
□ 家事育児を完璧にこなそうと無理をしている
□ 「本当の理由を言って」と何度も問い詰めている
3.一人から始める夫婦関係修復の基本の考え方
ここまで、離婚を切り出された理由と、直後にやってはいけない行動についてお伝えしてきました。ここからは、実際にどう修復に向かえばよいのか、その基本的な考え方をお伝えしていきます。
3-1.相手の協力がなくても修復は始められる理由
夫婦関係の修復というと、二人で一緒に取り組むものだと考える方が多いですが、実際にはどちらか一方が先に変わることから始まるケースがほとんどです。
私がこれまでサポートしてきた1万組以上のご夫婦の中でも、最初にカウンセリングにいらっしゃるのは、多くの場合ご夫婦のどちらか一方だけです。パートナーには内緒で相談に来られる方も少なくありません。
相手が変わってくれるのを待つのではなく、自分の言動や受け止め方を少しずつ変えていくことで、関係全体が変化し始めます。これは特別な能力がなくても、誰にでもできることです。
3-2.家事育児の格差を修復のきっかけに変える視点
家事育児の負担格差は、夫婦関係を悪化させた原因の一つかもしれません。しかし、視点を変えれば、これは関係を見直す良いきっかけにもなり得ます。
なぜなら、負担の格差に気づき、話し合おうとすること自体が、夫婦としてもう一度向き合う機会になるからです。問題を隠したまま関係が壊れていくよりも、表面化した今のほうが、実は修復に取り組みやすいタイミングだと言えます。
3-3.修復には1年〜1年半かかることを受け入れる
夫婦関係の修復は、目に見える変化が現れるまでに、おおよそ1年から1年半程度かかることが一般的です。私がこれまで見てきたケースでも、一朝一夕に進むことはほとんどありません。
例えば、あるご夫婦は次のような流れで、少しずつ関係を立て直していきました。
| ▼夫婦関係修復の一般的な時間の目安 | |
| 経過時期 | 見られる変化の目安 |
|---|---|
| 3か月経過時点 | 自分の気持ちを整理し、感情的な言動を控えることに集中する段階 |
| 半年経過時点 | 少しずつ夫婦の会話が増え始める段階 |
| 1年〜1年半経過時点 | 家事育児の分担について前向きに話し合えるようになる段階 |
早く結果を求めすぎると、焦りから相手を追い詰めてしまったり、途中で諦めてしまったりすることがあります。長い目で少しずつ関係を育てていく姿勢が、結果的に一番の近道になります。
4.今日からできる一人から始める修復ステップ
ここまで、離婚したいと言われた理由と、修復に向けた基本の考え方についてお伝えしてきました。ここからは、今日から実際に行動に移せる、一人から始める修復ステップについて具体的にお伝えしていきます。
修復のための行動は、決して難しいものばかりではありません。以下の4つのステップを、順番に進めていくことをお勧めします。
- 自分の気持ちと状況を整理する
- 相手を責めずに気持ちを伝える会話のコツ
- 家事育児の分担を対等な視点で見直す提案の仕方
- 一人で抱え込まず専門家に相談する選択肢
それぞれについて、詳しくお伝えしていきます。
4-1.自分の気持ちと状況を整理する
修復に向けた最初の一歩は、相手に働きかけることではありません。まずは自分自身の気持ちを整理することから始めます。
離婚したいと言われた直後は、怒りや悲しみ、混乱が入り混じり、冷静な判断がしづらくなっています。この状態のまま相手に接すると、感情的な言動につながりやすくなります。
紙に今の気持ちを書き出したり、これまでの夫婦関係を振り返ったりする時間を持つと、自分が本当はどうしたいのかが見えてきます。修復したいのか、それとも別の道を考えたいのか、まずは自分の本音と向き合うことが大切です。
4-2.相手を責めずに気持ちを伝える会話のコツ
自分の気持ちが整理できたら、次は相手との会話です。ここで意識していただきたいのは、相手を責める言葉ではなく、自分の気持ちを主語にして伝えるということです。
例えば、次のような伝え方が参考になります。
最近ちゃんと話せてなかった気がして、少し寂しかったんだよね
このように「あなたが〜しない」ではなく「私は〜と感じた」という形で伝えると、相手も身構えずに話を聞きやすくなります。責める言葉は反発を生みますが、気持ちを伝える言葉は対話の入口を開きます。
4-3.家事育児の分担を対等な視点で見直す提案の仕方
会話の糸口ができてきたら、家事育児の分担についても少しずつ触れていきます。ただし、いきなり不満をぶつけるのではなく、これからどうしていきたいかという前向きな提案の形にすることがポイントです。
例えば、次のような伝え方があります。
最近ちょっと大変だから、土日だけでも一緒にやってくれると助かるんだけどな
一度にすべての分担を変えようとせず、できることから少しずつ提案していくことで、相手も受け入れやすくなります。急激な変化を求めすぎないことが、長続きする分担の見直しにつながります。
4-4.一人で抱え込まず専門家に相談する選択肢
ここまでお伝えしてきた3つのステップは、一人でも取り組めるものです。しかし、感情が大きく揺れる中で、一人だけで抱え込み続けるのは簡単なことではありません。
そんなときは、専門家に相談するという選択肢も検討していただきたいと思います。私たちのカウンセリングでは、夫婦のどちらか一方だけが、パートナーに内緒で相談にいらっしゃるケースがほとんどです。
一人で悩みを抱え続けるよりも、専門的な視点から状況を整理してもらうことで、次に取るべき行動が見えやすくなります。修復への道のりを一人で歩む必要はありません。
5.離婚調停に発展した場合に知っておきたいこと
ここまでお伝えしてきた行動を重ねても、話し合いだけでは解決に至らず、離婚調停に発展するケースもあります。この章では、調停に関する現実と、その先にある可能性についてお伝えしていきます。
5-1.離婚調停の申立件数から見る現実
離婚調停に進んだからといって、必ずしも離婚が成立するわけではありません。話し合いの結果、夫婦関係を続ける決断に至るケースも実際にあります。
最高裁判所の司法統計によると、夫婦関係調整調停の新受件数は、年間で約5万件規模にのぼります。この数字からも分かるとおり、離婚調停は決して特別な出来事ではありません。
離婚に至るまでには、実際には複数の段階があります。
| ▼離婚に至るまでの主な段階 | |
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 話し合い(協議) | 夫婦間で直接話し合い、合意できれば離婚が成立する段階 |
| 調停 | 家庭裁判所で調停委員を交え、冷静な対話を進める段階 |
| 裁判 | 調停で合意に至らなかった場合に、裁判所が判断する段階 |
もし家庭裁判所から調停の呼び出し状が届いた場合は、慌てて一人で結論を出そうとせず、まずは日程と持ち物を確認し、当日までに自分の気持ちと状況を整理しておくことが大切です。
5-2.調停になっても修復を諦めなくていい理由
調停という言葉を聞くと、もう関係は終わりだと感じてしまう方も多いかもしれません。しかし、私のこれまでのカウンセリングでも、調停の過程で気持ちが整理され、そこから関係を立て直したご夫婦を見てきました。
調停は、感情的になりがちな話し合いに、冷静な第三者の視点を加えるための場でもあります。調停中であっても、自分の気持ちと向き合い、行動を変えていくことは十分に可能です。修復の道は、調停が始まった後でも閉ざされているわけではありません。
5-3.共働き時代における家庭内役割分担のこれから
最後に、少し先の未来についてもお伝えしておきます。内閣府の男女共同参画白書によると、共働き世帯数は約1,278万世帯にのぼり、男性雇用者と無業の妻という世帯は約449万世帯となっています。
また、内閣府の少子化社会対策白書では、男性の育児休業取得率が30.1パーセントまで上昇していることが示されています。社会全体として、家事育児を夫婦で担い合う流れは着実に進んでいます。
今の夫婦関係がどんな状況であっても、この社会の変化は、これから家庭内の役割分担を見直していくうえでの追い風になります。一人の行動の変化が、夫婦関係だけでなく、家庭全体の形を変えていくきっかけになります。
6.よくある質問
ここでは、この記事の内容に関連して、特に多くいただく質問にお答えします。
まとめ
家事育児をしない相手から離婚したいと言われても、一人からでも修復は始められます。修復には1年から1年半程度の時間がかかることが一般的ですが、相手を待つのではなく、あなた自身が一歩を踏み出すことから関係は変わり始めます。
家事育児の負担格差は、夫婦の間に大きな溝を生みますが、その事実だけで即座に離婚に至るわけではありません。大切なのは、離婚を切り出された直後に感情的な行動を避け、自分の気持ちを整理することから始めることです。
- 相手を責めず、自分の気持ちを主語にして伝える
- 家事育児の分担は前向きな提案として少しずつ見直す
- 一人で抱え込まず、必要であれば専門家に相談する
これまでの経験からも、はっきりとお伝えできることがあります。今この記事を読んでいるあなたには、夫婦関係をもう一度良い方向に導く力が、すでに備わっています。一人で抱えきれないと感じたときは、無理をせず、専門家に気持ちを話してみることも一つの選択肢です。
今日踏み出す小さな一歩が、これからの夫婦関係を変えていきます。





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