ある日突然、パートナーから「他に好きな人がいる」と打ち明けられた。頭が真っ白になり、眠れないままスマホで調べて、この記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。
信じていた相手からの言葉は、心に深く刺さります。怒りや悲しみ、不安、そして自分のせいかもしれないという気持ちが一度に押し寄せ、何から考えればいいのか分からなくなるのは、ごく自然なことです。
厚生労働省の人口動態統計によると、2025年に離婚した夫婦は17万9,068組でした。離婚は決して遠い話ではありません。
けれど私は、20年以上にわたり1万組を超える夫婦の関係修復をサポートしてきた中で、好きな人がいると言われた状態から、もう一度夫婦として向き合えるようになった方を何人も見てきました。離婚はすぐには決まりませんし、相手の協力がなくても、あなた一人から関係を立て直す道はあります。
この記事では、まず法律上の事実と、言われた直後にやるべきことを整理します。そのうえで、相手の本当の気持ちを読み解き、一人から始められる修復の進め方までお伝えしていきます。
- 好きな人がいると言われても離婚がすぐに成立しない理由
- 言われた直後にやるべきことと、絶対に避けたい行動
- 好きな人の存在が不倫にあたるかどうかの境界線と、生活を守る知識
- 相手が好きな人の存在を打ち明けた本当の理由
- パートナーの協力がなくても一人から始められる修復のステップ
1.「他に好きな人がいる」と言われても離婚はすぐには成立しない■■■
相手に好きな人がいても、あなたが同意しない限り、すぐに離婚が決まることはありません。話し合いでも、家庭裁判所の調停でも、あなたの同意がなければ離婚は成立せず、裁判でも好きな人ができたという理由だけでは離婚は認められにくいのです。ここからは、その理由と注意点を順番に見ていきます。
1-1.あなたが同意しなければ協議離婚は成立しない■■
日本の離婚の多くは、夫婦が話し合って合意し、離婚届を出す協議離婚という方法です。この協議離婚は、夫と妻の両方が離婚に同意して初めて成立します。
つまり、相手がどれほど強く離婚を望んでいても、あなたが同意しない限り、話し合いだけで離婚が決まることはありません。相手に好きな人がいても、それは変わりません。
法務省の案内でも、協議離婚の届出は離婚をしようとする夫婦が行うものとされ、成年の証人2人の署名も必要です。相手一人の気持ちだけで、すぐに書類がそろうわけではないのです。
ただし、同意しないことと、相手を突き放すことは違います。「絶対に離婚しない」と頑なに言い続けるほど、相手は話が通じないと感じ、気持ちが離れていきます。すぐには同意しないという線を守りながら、相手の話には耳を傾ける姿勢が大切です。
1-2.離婚届にサインしなければ勝手に出されることはない■■
とはいえ、知らないうちに離婚届を出されてしまわないか心配な方もいるはずです。
離婚届は、夫婦それぞれが自分で署名するのが原則です。あなたの署名を相手が勝手に書いて出すことは、法律で禁じられた行為で、罪に問われることもあります。
それでも不安な場合は、離婚届の不受理申出を出しておく方法があります。これを出しておくと、あなた自身が窓口に来て届け出たと確認できない離婚届は受理されません。
手続きは、あなた本人が市区町村役場の窓口に行い、運転免許証などの本人確認書類を見せて申出書を出すだけです。本籍地でなくても全国の市区町村役場で受け付けてもらえ、手数料もかかりません。あなたが取り下げるまで効果は続きます。
あわせて、離婚届にその場でサインしないことも大切です。相手から強く迫られたときは、「大事なことだから、少し考えさせて」と伝えるだけで構いません。
不受理申出は、相手を疑うためのものではなく、あなたが落ち着いて考える時間を守るためのものです。出したことを相手にわざわざ伝える必要もありません。
1-3.好きな人ができたという理由だけでは裁判で離婚は認められにくい■■
話し合いで離婚できないと分かると、相手は調停や裁判を考えることもあります。ここで知っておきたいのが、裁判で離婚が認められるには、法律で決められた理由が必要だということです。
民法では、不貞行為(配偶者以外の人との肉体関係)や悪意の遺棄、婚姻を続けがたい重大な事由などが、離婚の理由として決められています。相手に好きな人ができたという事情そのものは、相手が離婚を求める理由としては認められにくいのです。
さらに、相手が好きな人と肉体関係を持っていた場合、相手は夫婦関係を壊す原因を作った有責配偶者とみなされます。有責配偶者からの離婚の求めは、原則として裁判で認められにくいとされています。
なお、裁判の前には、まず家庭裁判所での調停を通す決まりがあります。調停も話し合いの場なので、あなたが同意しなければ、調停で離婚が決まることはありません。
もし相手から離婚調停を申し立てられたら、無視せずに出席し、離婚したくない気持ちを落ち着いて伝えてください。欠席が続くと、話し合う意思がないと受け取られたり、調停が不成立になって裁判へ進みやすくなったりします。
つまり、相手の好きという気持ちだけで離婚が決まることはないのです。離婚の方法ごとに整理すると、次のようになります。
| ▼好きな人がいると言われたときの離婚方法の比較表 | |||
| 協議離婚 | 調停離婚 | 裁判離婚 | |
|---|---|---|---|
| どこで決めるか | 夫婦の話し合いで決め、離婚届を出す | 家庭裁判所で調停委員を交えて話し合う | 家庭裁判所が判決で決める |
| あなたの同意なしに成立するか | 成立しない | 成立しない | 法律上の離婚理由があれば成立することがある |
| 好きな人ができたという理由で認められるか | あなたが同意しなければ、理由に関係なく成立しない | あなたが同意しなければ、理由に関係なく成立しない | 認められにくい (別居が長引いた場合などは注意) |
| あなたが気をつけること | ・離婚届にサインしない ・不安なら不受理申出をする |
・欠席せずに出席する ・離婚したくない気持ちを伝える |
・別居を長引かせない ・関係を立て直す行動を取る |
1-4.ただし別居が長引くと離婚が認められる可能性もある■■
ただし、どんな場合でも離婚にならないと言い切れるわけではありません。特に気をつけたいのが、別居が長く続くケースです。別居が長引いて夫婦としての実態がないと判断されると、婚姻を続けがたい重大な事由があるとして、裁判で離婚が認められることがあります。
何年で認められるという決まった期間はありません。別居の長さに加えて、それまで一緒に暮らしてきた期間、未成年の子どもがいるかどうか、別居中も夫婦の交流が続いているかといった事情をあわせて判断されます。
相手が好きな人と肉体関係を持っていない場合、相手は有責配偶者にはあたりません。そのため、別居が長引くほど、相手からの離婚の求めが認められやすくなる点は覚えておく必要があります。
また、有責配偶者であっても、別居が長く、未成年の子どもがおらず、離婚によって相手がとても苦しい状況に置かれない場合には、離婚が認められた裁判例もあります。
だからこそ、離婚を拒んだまま時間が過ぎるのを待つだけでは危険です。法律はあなたに考える時間を与えてくれますが、その間に関係を立て直す行動を取らなければ、気持ちの距離は広がるばかりです。
2.言われた直後に知っておきたいやるべきこととやってはいけないこと■■■
言われた直後に最も大切なのは、結論を急がず、相手を責めずに話を聞き、あなた自身の生活を守ることです。法律上すぐに離婚にならないと分かった今、この数日から数週間をどう過ごすかが、その後の関係を大きく左右します。
2-1.今日から始めたい5つの行動■■
気持ちが揺れている時期だからこそ、先にやることを決めておくと心を守りやすくなります。私がおすすめする行動は次の5つです。
- その場で結論を出さず時間をもらう
- 責めずに相手の話を最後まで聞く
- 離婚したくない気持ちは一度だけ短く伝える
- 食事と睡眠を守り自分の生活を整える
- 信頼できる相談相手を一人だけ決める
それぞれ詳しく見ていきます。
1.その場で結論を出さず時間をもらう
打ち明けられた瞬間は、誰でも冷静ではいられません。その状態で離婚に応じるか拒むかを決めると、後から悔やむ結果になりやすいのです。
「急なことで頭が追いつかないから、少し時間をちょうだい」と伝えるだけで十分です。返事を先に延ばすことは逃げではなく、落ち着いて向き合うための準備です。
2.責めずに相手の話を最後まで聞く
相手がなぜその言葉を口にしたのかを知ることは、修復の大事な手がかりになります。話をさえぎって責めると、相手は本音を話さなくなってしまいます。
すべてに納得する必要はありません。「そう感じてたんだね」と受け止めるだけでいいのです。話を聞くことと、離婚を受け入れることは別のものだと考えてください。
3.離婚したくない気持ちは一度だけ短く伝える
自分の気持ちを伝えることは大切ですが、何度も繰り返すと、相手には重い圧力として伝わってしまいます。
例えば、少し落ち着いたタイミングで「正直すごくショックだった。でも、私は離婚したくないと思ってる」と一度だけ伝えます。あとは言葉ではなく、日々の態度で示していくほうが、相手の心に届きます。
4.食事と睡眠を守り自分の生活を整える
強いショックを受けると、食べられない、眠れないという状態が続きやすくなります。心と体が弱ると考え方も悲観的になり、衝動的な行動につながります。
温かい飲み物を飲む、横になって目を閉じるなど、できることから体をいたわってください。眠れない日が何日も続くときは、医療機関に相談することも大切です。
5.信頼できる相談相手を一人だけ決める
一人で抱え込むと、考えがどんどん悪い方向へ進んでしまいます。気持ちを吐き出せる相手がいるだけで、心はかなり軽くなります。
相談相手は、口が堅く、相手の悪口に乗りすぎない人を一人だけ選ぶのがおすすめです。多くの人に話すと夫婦の問題が周りに広がり、修復の妨げになることがあります。
2-2.関係を一気に壊してしまう5つのNG行動■■
やるべきことと同じくらい大切なのが、やってはいけないことを知っておくことです。ショックの大きさから多くの方がつい取ってしまう行動の中には、関係を一気に壊してしまうものがあります。
- 相手を責め立てて問い詰める
- 泣いてすがり何度も引き止める
- 好きな人に直接連絡したり会いに行ったりする
- 子どもや親を巻き込んで味方につける
- SNSや相手の職場に事情を広める
なぜ避けるべきなのか、順番に解説します。
1.相手を責め立てて問い詰める
裏切られたと感じれば、責めたくなるのは当然です。けれど責められた相手は、自分を守るために心を閉ざし、好きな人のほうへ気持ちが向きやすくなります。
怒りは、紙に書き出したり相談相手に話したりして、相手にぶつける前に外へ出すことを意識してください。
2.泣いてすがり何度も引き止める
必死にすがる姿は、相手に罪悪感を与えます。罪悪感は一時的に相手を引き止めても、やがて重荷となり、離れたい気持ちを強めてしまいます。
相手が戻りたいと思うのは、かわいそうだからではありません。一緒にいると安心できると感じたときです。
3.好きな人に直接連絡したり会いに行ったりする
相手の好きな人に気持ちをぶつけたくなる方は少なくありません。しかし、これをすると相手はその人を守ろうとして、二人の結びつきがかえって強まることがあります。
言い方によっては脅しやつきまといと受け取られ、あなたが法的な責任を問われるおそれもあります。好きな人への直接の接触は避けてください。
4.子どもや親を巻き込んで味方につける
味方がほしい気持ちから、子どもや自分の親、義両親に相手のことを話してしまうことがあります。けれど周りから責められた相手は追い詰められ、家に居場所がないと感じてしまいます。
子どもにとっては、どちらの親も大切な存在です。親の悪口を聞かされることは、子どもの心に大きな負担を残します。
5.SNSや相手の職場に事情を広める
悔しさから、SNSに書き込んだり、相手の職場に知らせたりしたくなることもあるかもしれません。しかし一度広まった話は取り消せず、相手は強い恨みを持つようになります。
内容によっては名誉を傷つけたとして、あなたが訴えられる可能性もあります。夫婦の問題は夫婦の中で扱うことが、修復への近道です。
2-3.不倫が疑われるときの証拠は責めるためではなく自分を守るために残す■■
相手と好きな人との関係が、肉体関係にまで進んでいるのではと疑う方もいるはずです。その場合に知っておきたいのが、証拠との付き合い方です。
証拠は、相手を問い詰めるためのものではありません。もし将来、離婚の話し合いや調停になったとき、あなたと子どもの生活を守るための備えです。修復を目指すなら、なおさら静かに持っておくことが大切です。
具体的には、目に入ったメッセージや写真を自分のスマホで撮っておく、日付と出来事を手帳に記録しておくといった方法があります。中でも、二人でホテルに出入りする写真や、肉体関係をうかがわせるやりとりは、法律上の不倫を示す記録として扱われやすくなります。
一方で、相手のIDやパスワードを使って無断でアカウントにログインすることは、不正アクセス禁止法に触れるおそれがあります。相手の車に無断で位置情報の機器を取り付けることも、大きなトラブルの原因になります。
証拠を見つけても、すぐに突きつけるのは避けてください。突きつけた瞬間に話し合いは責め合いに変わり、修復の道が細くなってしまいます。どう使うかは、気持ちが落ち着いてから、必要なら弁護士と相談して決めれば十分です。
3.相手の「好きな人」は不倫になる?法律上の境界線と生活を守る知識■■■
相手が誰かを好きだという気持ちだけなら、法律上の不倫である不貞行為にはあたりません。肉体関係がある場合は慰謝料を請求できる可能性があり、相手が家を出ていっても生活費は請求できます。不倫にあたるかどうかで取れる対応が変わるため、ここで順番に整理しておきます。
3-1.気持ちだけなら不貞行為にはあたらない■■
離婚の理由になる不貞行為とは、一般的に、配偶者以外の人と自分の意思で肉体関係を持つことを指します。そのため、相手が誰かを好きだという気持ちだけでは、不貞行為にはあたりません。
二人で食事に行く、親しげなメッセージを送り合うといった行動も、それだけでは原則として不貞行為とはみなされません。ただし、夫婦の平穏を壊すほど深い関係だったとして、慰謝料が認められた裁判例もあります。
つまり、相手がまだ気持ちの段階にとどまっているなら、法律上は不倫として扱われにくいということです。相手と好きな人の関係の段階ごとに、法律上の扱いと今優先したいことを整理すると、次のようになります。
| ▼好きな人との関係の段階別判断表 | |||
| 関係の段階 | 不貞行為にあたるか | 慰謝料の可能性 | 今優先したいこと |
|---|---|---|---|
| 好きだという気持ちだけ | あたらない | 原則として請求できない | 責めずに、夫婦の関わり方を見直す |
| 二人での食事や親しげなメッセージ | 原則としてあたらない | 原則として請求できない (関係の深さによっては認められた例もある) |
見張らずに、気づいた事実だけ静かに記録しておく |
| 肉体関係がある | あたる | 相手と不倫相手に請求できる可能性がある (原則として知ったときから3年以内) |
証拠を静かに残し、請求するかは落ち着いてから決める |
3-2.肉体関係がある場合の慰謝料と請求するかどうかの考え方■■
相手と好きな人の間に肉体関係があった場合、あなたは相手と不倫相手の両方に、慰謝料を請求できる可能性があります。ただし、修復を望むなら、請求するかどうかは慎重に考える必要があります。
裁判所も、不貞などの行為が原因の離婚に対する慰謝料を話し合う手続きとして、家庭裁判所の慰謝料請求調停を案内しています。
慰謝料を請求できる期間には限りがあり、原則として、不倫の事実と不倫相手を知ったときから3年とされています。今すぐ決める必要はありませんが、期限があることは頭に入れておいてください。
慎重に考えたほうがいい理由は、請求が夫婦の距離を広げることがあるからです。相手に慰謝料を求めると、相手は責められたと感じ、心の距離が広がることがあります。不倫相手に請求すると、相手がその人をかばい、かえって二人が近づく場合もあります。
私は修復を目指す方に、まずは関係を立て直すことに力を注ぎ、慰謝料はいつでも選べる手段として手元に置いておくことをおすすめしています。請求が悪いのではなく、今のあなたが本当に望む未来に合っているかを基準に選んでほしいのです。
3-3.別居されても生活費(婚姻費用)は請求できる■■
慰謝料と並んで、もう一つ知っておきたいのが生活費のことです。特に相手が家を出ていった場合は、毎月の暮らしにすぐ影響が出ます。別居中でも、夫婦である以上、お互いの生活を支える義務は続きます。
この、収入の多いほうが少ないほうへ支払う生活費を、婚姻費用といいます。相手が別居していても、あなたの収入が相手より少なければ、子どもの生活費を含めて婚姻費用を求めることができます。
話し合いで払ってもらえない場合は、家庭裁判所に婚姻費用分担請求の調停を申し立てられます。支払いは請求したときからとされることが多いため、相手が払わないまま別居が続くなら、早めに動いたほうが損をしません。
金額は夫婦それぞれの収入や子どもの人数などをもとに決まり、裁判所が公表している算定表が目安になります。
生活の不安が小さくなれば、気持ちにも余裕が生まれます。お金の備えは、落ち着いて修復に向き合うための土台になるのです。
4.相手が「他に好きな人がいる」と打ち明けた本当の理由■■■
相手が好きな人の存在を打ち明けた背景には、多くの場合、夫婦の間で満たされなかった気持ちがあります。法律と生活の備えを整えた今、相手の心に目を向けることが、修復への出発点になります。
4-1.好きな人の存在は原因ではなく夫婦関係の不満の結果であることが多い■■
好きな人がいると言われると、その人さえ現れなければと思ってしまうものです。しかし、私が多くの夫婦を見てきた中で感じるのは、好きな人の存在は原因ではなく結果であることが多いということです。
相手の心が他の人へ向く前に、夫婦の間には小さな不満の積み重ねがあったというケースが、とても多いのです。その寂しさや疲れを埋めてくれる人が現れたとき、心が動いてしまうことがあります。
もちろん、だからといって相手の行動が正しいわけではありません。傷ついたあなたが悪いということでもありません。
ただ、原因が夫婦関係の中にあるなら、あなたの関わり方が変われば、相手の心の向きも変わる可能性があります。どこに不満がたまっていたのかを知るために、次の4つを振り返ってみてください。
- 会話が用件だけになっていなかったか
- 感謝や労いの言葉を伝えていたか
- 家事や育児の負担がどちらかに偏っていなかったか
- 相手の話を否定せずに聞けていたか
それぞれ、どんな点を振り返ればいいのかをお伝えします。
会話が用件だけになっていなかったか
最近の会話が、子どもの予定や支払いの話ばかりになっていなかったかを思い返してみてください。気持ちを分かち合う会話がなくなると、相手は家の中で孤独を感じやすくなります。
感謝や労いの言葉を伝えていたか
相手の仕事や家事を、やって当たり前だと受け取っていなかったでしょうか。認めてもらえない寂しさは、外で優しくしてくれる人に心が向く大きなきっかけになります。
家事や育児の負担がどちらかに偏っていなかったか
どちらか一方に負担が偏っていると、背負っている側は少しずつ疲れと不満をためていきます。自分では手伝っているつもりでも、相手がどう感じていたかを考えてみることが大切です。
相手の話を否定せずに聞けていたか
相手が話し始めたとき、すぐに意見やダメ出しをしていなかったかを振り返ってみてください。話しても分かってもらえないと感じると、相手は本音を話さなくなります。
当てはまるものが見つかっても、自分を責める必要はありません。そこが、これからあなたが変えていける部分であり、修復の出発点になります。
4-2.離婚の口実としての「好きな人」と本気の「好きな人」の見分け方■■
好きな人の存在が夫婦関係の不満の結果だと分かっても、相手の気持ちがどれくらい本気なのかは、やはり気になるところだと思います。
先にお伝えしておくと、見分ける目的は相手を裁くことではなく、どこから手をつければいいかを知ることです。口実だから軽く考えていい、本気だからもう無理だと決めつける必要はありません。本気に見える気持ちも、時間とともに変わっていくことは少なくないからです。
そのうえで、私の経験から、見分けるときの目安になるポイントは次の3つです。
- 好きな人についてどれだけ具体的に話すか
- 離婚をどれだけ急いでいるか
- 夫婦への不満を口にしているか
一つずつお伝えします。
1.好きな人についてどれだけ具体的に話すか
相手が好きな人の名前や関係の深さ、これからの予定まで具体的に話す場合は、気持ちがかなり固まっていることがあります。
反対に、誰なのかをはっきり言わない、関係を聞いてもあいまいな答えしか返ってこない場合は、好きな人の存在を、離婚を切り出すための理由として使っている可能性があります。
2.離婚をどれだけ急いでいるか
すぐにでも離婚届を書いてほしいと急かす場合は、好きな人との新しい生活を強く思い描いていることが考えられます。
一方で、離婚したいと言いながら具体的な話を進めようとしない場合は、迷いがあるのかもしれません。心のどこかで、自分の苦しさを分かってほしいという気持ちを抱えていることもあります。
3.夫婦への不満を口にしているか
「ずっと我慢してきた」「分かってもらえなかった」など、夫婦への不満を一緒に口にする場合は、好きな人よりも、夫婦関係そのものに問題を感じていることが多いです。
つらく聞こえるかもしれませんが、実は希望のある状態です。不満の中身が分かれば、あなたが変えられる部分が見えてくるからです。
4-3.夫が言い出した場合と妻が言い出した場合で違う心の動き■■
相手の心が離れていく流れには、夫と妻で違いが見られます。もちろん人それぞれですが、私がカウンセリングの中で感じてきた傾向をお伝えします。あなたに当てはまるほうを読んでみてください。
夫から言われた場合
夫から言われた場合は、家での居心地の悪さや、認めてもらえない寂しさが背景にあることがよくあります。家では責められてばかりなのに、外ではありがとうと言ってもらえる。そんな差が、心を外へ向かわせるきっかけになりがちです。
夫の好きな人への気持ちは、関係が始まったばかりの頃に強く燃え上がり、時間とともに落ち着いていくこともあります。家庭に安心が戻ったことで、夫が我に返るケースも少なくありません。
妻から言われた場合
妻から言われた場合は、長い時間をかけて気持ちが冷めてきたことが多い傾向があります。家事や子育てを一人で背負ってきた、話を聞いてもらえなかったといった思いが積み重なり、限界を超えたところで、心を寄せられる人が現れることがあります。
妻の場合、気持ちが離れるまでに長い時間がかかった分、すぐには戻りません。言葉での謝罪よりも、日々の行動が変わったことを、時間をかけて感じてもらうことが欠かせません。
5.パートナーの協力がなくても一人から始められる修復の4ステップ■■■
相手の心が離れた背景が見えてきたら、いよいよ修復に向けて動き出します。ここでは、あなた一人から始められる修復の流れを、4つのステップに分けてお伝えします。
5-1.相手に好きな人がいても夫婦関係は修復できる■■
ステップに入る前に、まずお伝えしたいことがあります。それは、相手に好きな人がいても、夫婦関係は修復できるということです。
好きな人への気持ちは、出会ったばかりの頃ほど強く、時間とともに落ち着いていくものです。しかも、その気持ちの多くは、夫婦の間で満たされなかった寂しさや疲れから逃げる場所として生まれています。逃げる理由がなくなれば、心が家庭に戻ってくることは十分にあり得るのです。
一方で、あなたと相手の間には、一緒に過ごしてきた年月があります。家族として積み重ねた思い出や、子どもを育ててきた時間は、出会ったばかりの好きな人には決して持てないものです。
ただし、修復には時間がかかります。私の経験では、好きな人がいると言われた状態から関係を取り戻すまでに、多くの場合1年から1年半ほどかかります。焦って結果を求めるほど、相手は追い詰められたと感じてしまいます。
そして何より大切なのは、修復の鍵を握っているのは相手ではなく、あなたの関わり方だということです。相手が変わるのを待つのではなく、あなたが先に変わる。その積み重ねが、やがて相手の心を動かしていきます。
あなた一人から始める修復は、おおまかに次の4つのステップで進んでいきます。今どの段階にいるのかを確かめる目安として使ってください。
| ▼一人から始める修復の4ステップ時系列表 | |||
| ステップと期間 | 目標 | 主な行動 | 次へ進む目安のサイン |
|---|---|---|---|
| ステップ1 (〜3か月) |
自分の心を立て直す | ・怒りをぶつけない ・行動を見張らない ・あいさつと感謝を続ける |
落ち着いて過ごせる日が増える |
| ステップ2 (3〜6か月) |
安心して話せる日常の会話を取り戻す | ・軽い話題で声をかける ・相手の話を最後まで聞く |
相手から話しかけてくる回数が増える |
| ステップ3 (6か月〜1年) |
相手の不満に向き合い自分を変える | ・不満を思い返す ・言い訳せず受け止め行動で変える |
相手が本音を話してくれるようになる |
| ステップ4 (1年〜1年半) |
夫婦として未来を話し合う | ・感謝を伝える ・小さな予定を一緒に決める |
家族の予定を一緒に楽しめるようになる |
それぞれのステップで何をすればいいのか、順番に解説します。
5-2.ステップ1(〜3か月):自分の心を立て直し責めない関わり方に切り替える■■
最初の3か月で取り組むのは、相手を変えることではなく、あなた自身の心を立て直すことです。心が乱れたままでは、どんなに良い方法を知っていても、つい責める言葉が出てしまうからです。この時期に取り組みたいことは次の4つです。
- 怒りや不安をすぐ相手にぶつけない
- 相手の行動を見張るのをやめる
- 責める関わり方から認める関わり方へ切り替える
- 相手以外のことに心を向ける時間を持つ
順番に解説します。
1.怒りや不安をすぐ相手にぶつけない
この時期は、ふとした瞬間に怒りや不安がこみ上げてきます。そのまま相手にぶつけると、相手はやはり家にいるのはつらいと感じてしまいます。
気持ちが高ぶったら、一度その場を離れて深呼吸をする、思っていることを紙に書き出すなど、心を落ち着ける自分なりの方法を持っておきます。気持ちを外に出してから相手と向き合うだけで、言葉の選び方が大きく変わります。
2.相手の行動を見張るのをやめる
相手が好きな人と会っていないか気になり、スマホをのぞいたり、帰りが遅いと問い詰めたりしたくなるかもしれません。
けれど、見張られていると感じた相手は息苦しさを覚え、家から離れたい気持ちを強めてしまいます。確かめたい気持ちが出てきたら、今の自分にできることに意識を戻すことを心がけてください。
3.責める関わり方から認める関わり方へ切り替える
心が少し落ち着いてきたら、相手への関わり方を、責めることから認めることへ切り替えていきます。
例えば、返事がなくても「おはよう」「おかえり」と声をかける、何かしてくれたら「ありがとう」と伝える。小さなことですが、こうした言葉の積み重ねで、家の空気は少しずつ変わっていきます。
4.相手以外のことに心を向ける時間を持つ
相手のことばかり考えていると、相手の態度一つで気持ちが大きく揺れてしまいます。好きだったことを再開する、友人と会うなど、あなた自身の生活を大切にする時間を持ってください。
相手にしがみつかず、自分の足で立っている姿は、相手の目にも魅力的に映ります。
この時期は、相手の態度がすぐに変わらなくても構いません。あなたが落ち着いて過ごせる日が増えてきたら、それが次のステップへ進む合図です。
5-3.ステップ2(3〜6か月):安心して話せる日常の会話を取り戻す■■
心が落ち着いてきたら、次は相手と安心して話せる日常の会話を取り戻していきます。この時期の目的は、話し合いではなく、一緒にいても疲れない関係をつくることです。
ここで気をつけたいのは、夫婦関係や好きな人の話題を持ち出さないことです。重い話を急ぐと、相手はまた責められると身構えてしまいます。
話題は、天気や食事、テレビ、子どもの様子など、軽いもので十分です。例えば、次のような声かけから始めてみてください。
「今日すごく寒かったね。帰り大丈夫だった?」
「この前言ってたドラマ、続きどうなった?」
相手が話してくれたときは、意見や助言をはさまず、最後まで聞くことを心がけます。うなずきながら聞いてもらえるだけで、相手は家にいてもいいのだと感じられるようになります。
また、相手の返事が短くても、がっかりした様子を見せないことも大切です。会話は少しずつ増えていくものです。相手から話しかけてくる回数が増えてきたら、関係が前に進んでいる証拠です。
5-4.ステップ3(6か月〜1年):相手が抱えていた不満に向き合い自分を変える■■
日常の会話が戻ってきたら、4章で振り返った不満に向き合う時期です。
まずは、これまでに相手が口にしていた不満を思い返してみてください。そのときは聞き流していた言葉や、言い返してしまった言葉の中に、大切な手がかりが隠れています。
相手がある程度落ち着いて話せる関係になっていれば、穏やかなタイミングで、次のように聞いてみるのも一つの方法です。
「今までのこと、私なりに考えてた。直してほしいところがあったら、教えてくれる?」
ここで大切なのは、言い訳や反論をせずに受け止めることです。そして、聞いた内容を言葉ではなく行動で変えていきます。相手が信じるのは、謝罪の言葉よりも、続けて変わり続ける姿です。
自分を変えるとは、自分を押し殺して我慢することではなく、相手との関わり方を学び直して成長することです。その変化は、夫婦関係だけでなく、あなたの人生そのものを楽にしてくれます。
5-5.ステップ4(1年〜1年半):夫婦としてこれからの未来を話し合う■■
相手が安心して本音を話してくれるようになったら、夫婦としてこれからの未来を話し合う段階です。
この段階に来ているかどうかは、相手の様子から感じ取れます。相手から話しかけてくることが増えた、家で過ごす時間が長くなった、子どもの行事に一緒に参加するようになった、困ったことを相談してくれるようになった。こうした変化は、相手の心が家庭に戻ってきているサインです。
この時期は、これまでの感謝と、あなたが気づいたことを素直に伝えてみてください。例えば、「この1年で、自分がどれだけあなたに甘えてたか分かった。これからは家族のことを一緒に大事にしていきたい」といった言葉です。
好きな人との関係について、はっきりさせたい気持ちもあると思います。信頼が戻ってきたこの段階であれば、その人との関係をきちんと終わらせてほしいと、落ち着いて伝えることも大切です。責めるのではなく、これから二人で前を向くための約束として話します。
未来の話は、大きな約束から始める必要はありません。週末に家族で出かける、記念日にささやかなお祝いをするなど、小さな予定を一緒に決めることから始めてみてください。
なお、修復の途中では、良くなったと思った関係が急に冷たく戻ったように感じることもあります。これは失敗ではなく、多くの夫婦が通る自然な揺れです。焦らずステップ1やステップ2の関わり方に戻って続けていけば、関係はゆっくりと確かなものになっていきます。
6.場面別:相手の心を追い詰めない会話例■■■
どの場面でも基本になるのは、相手の気持ちを否定せずに受け止めること、期限や脅しで追い詰めないこと、周りの人を巻き込まないことの3つです。ここでは、特に迷いやすい3つの場面の会話例をお伝えします。
6-1.相手が好きな人の話をしてきたときの返し方■■
修復に取り組む中で、相手が好きな人の話を持ち出してくることがあります。比べられたように感じて、心がざわつく場面です。
このとき避けたいのは、言い返したり、好きな人を悪く言ったりすることです。相手はその人をかばおうとして、かえって気持ちが向いてしまいます。
大切なのは、好きな人と張り合うのではなく、相手がその人に何を求めていたのかに耳を傾けることです。例えば、次のようなやりとりです。
「あの人は、ちゃんと話を聞いてくれるんだよ」
「そうなんだ。話を聞いてもらえるのが嬉しかったんだね。私、今まであなたの話をちゃんと聞けてなかったかもしれない」
このように返すと、相手は責められずに受け止めてもらえたと感じます。同時に、あなたが変わろうとしていることも伝わります。耐えられないと感じたときは、「ごめん、今はその話を聞くのが少しつらい」と正直に伝えて、話題を変えて構いません。
また、やがて相手から、好きな人とはもう終わったと打ち明けられる日が来るかもしれません。ここで過去を責めたり、根掘り葉掘り聞き出したりすると、戻りかけた心がまた離れてしまいます。「話してくれてありがとう。これから一緒に頑張っていこうね」と、打ち明けてくれたことへの感謝を伝えるだけで十分です。
6-2.離婚を急かされたときの気持ちの伝え方■■
相手から離婚届を書いてほしいと急かされる場面も、多くの方が経験します。ここで焦って感情的になると、相手はやはり話し合えないと感じてしまいます。
伝えるときのポイントは、離婚に応じない理由を責める形ではなく、あなたの気持ちと考えとして落ち着いて話すことです。
「離婚届、いつ書いてくれるの?」
「ごめん、今すぐには決められない。私なりにちゃんと考えたいし、自分で変えられるところは変えていきたいと思ってる」
このように伝えると、拒絶ではなく、真剣に向き合おうとしている姿勢が伝わります。
一方で、何か月後なら書くといった期限の約束はしないことが大切です。期限を決めると、その日に向けて相手の気持ちが固まりやすくなります。また、離婚するなら子どもには会わせないといった脅しのような言葉は、関係を壊すので絶対に言わないでください。
6-3.子どもや義両親に事情を聞かれたときの答え方■■
家の空気が変われば、子どもや義両親が何かを感じ取ることもあります。ここでは、相手ごとの答え方をお伝えします。
子どもに聞かれたとき
子どもには、年齢に合わせて、不安を大きくしない言葉を選びます。相手の好きな人の話や、相手を責める話は絶対にしません。
子どもにとっては、どちらの親も大切な存在です。親の関係がどうなっても、自分が愛されていることは変わらないと伝えることが、子どもの心を守ります。例えば、次のように伝えます。
「パパとママ、今ちょっと話し合ってることがあるんだ。でも、二人ともあなたのことが大好きなのは変わらないよ」
義両親に聞かれたとき
義両親から聞かれた場合は、相手の悪口を言わず、夫婦で向き合っている途中だと伝えるのがおすすめです。義両親が相手を責めると、相手が追い詰められ、家に戻りにくくなってしまうからです。
「ご心配をおかけしてすみません。今、二人でいろいろ考えているところなので、少し見守っていただけるとありがたいです」
このように伝えれば、義両親を心配させすぎず、相手の立場も守ることができます。
7.好きな人がいると言われてから1年半で関係を取り戻した夫婦の事例■■■
ここまでお伝えしてきた流れを、実際にどのように進めていくのか、イメージしやすいように2つの事例をご紹介します。どちらも、悩んでいた一方が先に変わることで、関係を取り戻していった夫婦です。
7-1.夫から「他に好きな人がいる」と告げられた妻の事例■■
夫から好きな人の存在を告げられたAさんは、夫を責めるのをやめ、自分の口ぐせを直すことで、1年半かけて夫婦関係を取り戻しました。
40代前半のAさんは、小学生の子ども2人を育てながらパートで働いていました。ある夜、同い年の夫から「他に好きな人がいる。離婚してほしい」と告げられました。相手は夫の職場の同僚でした。
最初の数日、Aさんは夫を責め続け、夫のスマホを確かめようとして、夫は家でほとんど口をきかなくなりました。相談に来られたとき、Aさんは自分が悪いとはまったく思えないと話していました。
それでもAさんは、まず責めるのをやめることから始めました。返事がなくても、あいさつと感謝の言葉を続けました。3か月ほどたつと、夫が夕食の席で仕事の話を少しずつするようになりました。
半年ほどたったころ、夫が「家にいても、いつもダメ出しされてる気がしてた」と本音をこぼしました。Aさんは言い返したい気持ちをこらえて受け止め、夫のやり方を否定する口ぐせを直すことに取り組みました。
1年ほどたつと、夫から「もうあの人とは連絡を取ってない」と打ち明けられました。そして1年半がたつころ、家族4人で旅行に出かけ、夫から「もう一回、ちゃんとやり直したい」と言ってもらえたそうです。
Aさんの転機は、夫がこぼした本音に言い返さず、そこから直すべき口ぐせを見つけたことでした。
7-2.妻から「他に好きな人ができた」と告げられた夫の事例■■
妻から好きな人の存在を告げられたBさんは、家事や子育てへの関わり方と話の聞き方を変え続けることで、1年半かけて夫婦関係を取り戻しました。
30代後半のBさんは、会社員として忙しく働き、幼稚園に通う子どもが1人いました。ある日、妻から「他に好きな人ができた。この先も一緒にいられる気がしない」と告げられました。
Bさんはそれまで仕事を優先し、家事や子育てのほとんどを妻に任せていました。妻の話を聞いても、つい解決策ばかり口にしていたことに、相談の中で気づいていきました。
Bさんは、まず妻を問い詰めず、離婚の返事も急がないことにしました。そして、朝食づくりと子どもの送りを自分の担当にし、妻が話し始めたときは手を止めて最後まで聞くようにしました。
最初の半年、妻の態度はほとんど変わりませんでした。それでもBさんは続けました。半年を過ぎたころ、妻が「最近、少し楽になった」と口にするようになり、少しずつ会話が戻ってきました。
1年ほどたったころ、妻は好きな人への気持ちが冷めてきたことを話してくれました。1年半がたつころには、妻から週末の家族の予定を提案してくれるようになり、夫婦で将来の話ができるまでに関係が戻りました。
Bさんの事例が教えてくれるのは、相手の態度が半年変わらなくても、続けた行動は確かに届いているということです。
8.一人で抱えきれないときに頼れる場所と備え■■■
一人で抱えきれないときは、目的に合わせて頼る場所を選ぶことが大切です。話し合いの場がほしいときは家庭裁判所の円満調停、法的な対応が必要なときは弁護士、相手の心を取り戻す関わり方を学びたいときは夫婦関係修復のカウンセリングが力になります。あわせて、万が一に備えて知っておきたいことも整理します。
8-1.家庭裁判所の円満調停で関係修復を話し合う方法■■
離婚したくない方に知っておいてほしいのが、家庭裁判所の夫婦関係調整調停(円満)です。夫婦関係が円満でなくなったときに、もとの円満な関係を取り戻すための話し合いの場として、裁判所が設けている手続きです。
この調停では、夫婦関係が悪くなった原因や、改善するための方法について話し合います。裁判所の家事事件Q&Aでも、相手の異性関係などをやめてもらい、もとの円満な夫婦関係に戻りたい場合に利用できると説明されていて、離婚するかどうか決めきれない段階でも申し立てができます。
申し立ては、原則として相手が住んでいる地域の家庭裁判所に行います。申立書と夫婦の戸籍謄本などを用意し、費用は収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手です。
調停の当日は、調停委員が夫婦それぞれから交代で話を聞くのが一般的です。相手と顔を合わせずに話せることが多いため、二人きりでは感情的になってしまう夫婦でも、落ち着いて気持ちを伝えやすくなります。
ただし、調停はあくまで話し合いの場なので、相手に参加や合意を強制することはできません。また、相手によっては、裁判所の手続きを取られたことで責められたと感じる場合もあります。
私は、二人だけではまったく話し合いにならないときや、相手が離婚調停を考え始めたときに、選択肢の一つとして考えることをおすすめしています。調停委員という第三者がいることで、相手が冷静に本音を話してくれることもあるからです。
8-2.弁護士に相談したほうがいいタイミング■■
修復を目指していても、法律の専門家の力が必要になる場面があります。相手から離婚調停を申し立てられたときや、相手の弁護士から連絡が来たときは、早めに弁護士に相談してください。
また、別居中の相手が生活費を払ってくれないときや、慰謝料の請求を考えているとき、相手の不倫の証拠をどう扱えばいいか迷うときも、相談するタイミングです。
弁護士に相談することは、必ずしも争うことを意味しません。離婚したくないという気持ちを伝えれば、関係修復を前提にした進め方を一緒に考えてくれる弁護士もいます。初回の相談を無料で受けている事務所もあり、費用に不安がある場合は法テラスを利用する方法もあります。
8-3.一人で通える夫婦関係修復カウンセリング■■
相手の心を取り戻すための関わり方を、専門家と一緒に考えられるのが夫婦関係修復のカウンセリングです。
私たちのカウンセリングは、夫婦二人で来ていただくものではありません。悩んでいる妻か夫のどちらか一方が、パートナーには知らせずに通っていただく形です。相手の協力が得られない状況でも、あなた一人から修復を始められるように組み立てています。
カウンセリングでは、まず今の夫婦の状況と、相手の心が離れた背景を一緒に整理します。そのうえで、揺れる気持ちを落ち着ける方法や、相手にかける言葉、関わり方の変え方を、あなたの状況に合わせて具体的に考えていきます。
一人で取り組んでいると、今の関わり方が合っているのか分からなくなったり、相手のひと言で気持ちが大きく揺れたりします。そんなとき、第三者の目で状況を見直し、次に何をすればいいかを一緒に考える存在がいると、迷わずに進みやすくなります。
20年以上この仕事を続けてきて、私が確信していることがあります。それは、人は誰でも変われるということです。一人で抱えきれないと感じたら、どうか一人で頑張りすぎないでください。
8-4.どうしても離婚を避けられないときに確認しておくこと■■
修復を目指す一方で、万が一に備えておくことも大切です。備えることは諦めることではなく、どんな結果になっても、あなたと子どもの生活を守るための準備です。確認しておきたいのは次の4つです。
- 子どもの親権と親子交流
- 養育費
- 財産分与
- 住まいと当面の生活費
それぞれ簡単にお伝えします。
1.子どもの親権と親子交流
子どもがいる場合、離婚後にどちらが親権を持つか、離れて暮らす親とどのように会うかを決める必要があります。2026年4月からは、離婚後も父母が共同で親権を持つことを選べるようになりました。何より子どもの気持ちを中心に考えることが大切です。
2.養育費
養育費は、子どもが自立するまでの生活を支えるためのお金です。法務省のりこんポータルでは、養育費や婚姻費用、親子交流の取り決め方に加えて、取り決めが守られないときに支払いを確保する手続きや強制執行についても案内されています。
3.財産分与
結婚してから夫婦で築いた財産は、離婚の際に分け合うのが基本です。預貯金や家、保険、退職金などがあてはまります。今のうちに、家にある通帳や契約書の種類を把握しておくと安心です。
4.住まいと当面の生活費
離婚後にどこに住むか、当面の生活費をどうするかも考えておく必要があります。前もって見通しを持っておくだけで、相手の言葉に振り回されにくくなり、落ち着いて修復に向き合えるようになります。
9.他に好きな人がいると言われた人からよくある質問■■■
最後に、他に好きな人がいると言われた方から、特によくいただく質問にお答えします。
ここで問い詰めると、相手は隠れて連絡を取るようになり、心の距離がまた開いてしまいます。相手の行動ではなく、あなたが続けられる関わり方に意識を戻すことが大切です。
それでも気持ちが限界に近いときは、一人で耐え続けないでください。信頼できる相談相手やカウンセラーに気持ちを話し、心を立て直す時間を取ることも、修復を続けるための大切な一歩です。
返事を迫る連絡や長い文章は避け、子どものことや必要な用件を中心に、短く穏やかに連絡を続けてください。あわせて、生活費が払われていない場合は婚姻費用を求めることも検討してください。
この記事でお伝えしたステップ1とステップ2のように、言葉での話し合いではなく、日々の関わり方を変えることから始めてください。家の空気が穏やかになると、相手のほうから話してくれる日がやってきます。
まとめ■■■
他に好きな人がいると言われても、離婚したくないあなたにできることはたくさんあります。この記事のポイントを振り返ります。
- あなたが同意しなければ、協議離婚は成立しない
- 言われた直後は結論を急がず、責める、すがるといった行動を避ける
- 好きな人の存在は、夫婦関係の不満の結果であることが多い
- パートナーの協力がなくても、あなた一人から修復は始められる
- 修復には1年から1年半ほどかかるが、積み重ねは相手に伝わっていく
好きな人がいると打ち明けられた今、あなたは人生で最もつらい時間の中にいるかもしれません。けれど、今の苦しさは、夫婦がもう一度向き合うためのきっかけにもなり得ます。
まずは今夜、相手を責めずに、おやすみのひと言だけをかけてみてください。勝手に離婚届を出されるのが不安なら、近いうちに不受理申出の手続きを済ませておくと、落ち着いて修復に向き合えます。
相手が変わるのを待つ必要はありません。あなたが関わり方を少しずつ変えていけば、家の空気は変わり、相手の心も少しずつ動き始めます。1年後、1年半後に、もう一度家族で笑い合える日は、今日のあなたの小さな一歩から始まります。



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